長編8
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開戦

遂にトメの仇である化け物と対峙した匠と葵。

一年前は二人がかりでさえも死を覚悟する程に力の差のあったその化け物に、一人で闘いを挑む事を決めた匠。

そんな匠に不安を覚えつつも、静かに見守る葵。

だが、そんな心配を他所に、闘いを始めた匠の力は紫水、葵の両名ですら想像も無し得なかった程に凄まじいものだった。

瞬く間に化け物を仕留めた匠。

これで…残る相手は後一体…。

separator

「いやぁ、匠さんも蛍さんも本当に素晴らしい闘いでした。」

闘いを終え、空を見つめる匠さんに紫水さんが声をかけ近付いて行く。

僕と葵さんも紫水さんの後に続き、匠さんへと歩いて行った。

「あぁ…。

バアサンも少しは誉めてくれるかな?(笑)」

匠さんは近付く僕達に視線を移し笑って見せる。

僕はそんな匠さんに微笑み返し、空を見上げた。

トメさん…。匠さんは強くなりましたよ…。

匠さんだけじゃない…。

紫水さんも葵さんも、まだその力を見せてはいないが、明らかに一年前とは雰囲気が違う。

この三人なら…。

そして僕は話しに聞いた正体不明の化け物を想像していた。

一年前…この三人ですら強制的に死を覚悟させられた相手…。

それがどれ程のモノなのか僕には想像も出来ない。

「とりあえず匠さんも闘いが終わったばっかりですから少し休みましょう。」

僕はこれから始まる闘いに備え、体を休める様、提案をした。

「あぁ…。

そうだな…と、言いたい所だが…。」

ザっ!!

?!

突然三人が僕を隠す様に、前に踊り出た。

三人は険しい表情で前を見つめたまま、何も言わない。

パキ…パキ…。

?!

林の中…。

小枝を踏みながら此方へ近付いて来る足音が聞こえる。

それは徐々に大きくなり、もう少しで姿が確認出来る距離まで迫っている。

「アレは私が殺る。」

?!

僕の前に立っている三人の更に前、其処にいつの間にか少女が姿を現しそう言った。

「申し訳ありませんが、アレは貴女には譲れません。」

紫水さんが少女に言う。

「傲るなよ?紫水。

アレに勝てるつもりか?」

少女は前を向いたまま紫水さんに問う。

「えぇ…。

その積もりです。

貴女に邪魔をされる訳には行きません。」

パリっ。

?!

空気が弾ける様な音が響く。

紫水さんを包む空気が明らかに変わっている。

「私と殺るか?紫水?」

少女の雰囲気も先程までと違う。

「いずれその時が来るのでしょう?

それが今と言うのなら…」

「それが傲りだと分からぬのか!!」

?!

珍しく少女が声を荒げた瞬間、足元の地面が激しく揺れ、僕はその場に尻餅をついてしまった。

紫水さん達三人は持ちこたえた様だったが、少女を見るその目は、まるで今から闘いを始める相手を見る様に鋭く冷たい物だった。

「ふん…。

勝手にするがいい…。」

少女は紫水さん達が退かない事を悟ったのか、そう言うと三人の脇を通り抜け、後方へと退いた。

「騒がしいねぇ?」

?!

退く少女の背中を振り返っていた僕達の前方から突然聞こえた声。

慌てて前を向く僕達の前に佇む、黒い着物を纏った一人の少女。

また少女?!

紫水さんと行動を共にしている少女と言い、今目の前に現れた少女と言い、僕には嫌な予感しかしない…。

紫水さん達の表情も、呆気にとられた様に見える。

三人も想像していたモノと違ったのだろう。

そんな僕達に構いもせず、少女は話を続ける。

「あれ?

あの気持ち悪いだけの使えない化け物は何処??

ほんと…役に立たないんだから…。

せっかく私のペットにしてあげたのに。」

少女は可愛い顔で、無邪気にとんでもない事を口にする。

「貴方達…あの時アイツらに殺られそうになってた人達でしょ?

此処に何の様??

まさか私を…って訳じゃないよね??(笑)」

少女は三人を前に余裕の表情を見せる。

だが…。

次の瞬間、その少女の余裕に陰りが見えた。

?!

「か…楓様…?!」

少女は後ろへ退き、じっと僕達を見ている少女を見つけそう言った。

楓様?

僕達の前に現れた黒い着物の少女は、紫水さんと行動を共にする赤い着物の少女を楓様と呼んだ。

この二人の少女は面識があるようだ。

「ふん…。

馴れ馴れしく私の名を呼ぶな。」

楓と呼ばれた赤い着物の少女が黒い着物の少女に向かって言う。

「見つかってしまいましたか…。」

黒い着物の少女は楓から視線を外しそう言った。

間違い無く、この二人の少女は面識がある。

互いの口調を聞いていると、楓の方が優位な位置にいるのか??

僕は二人の少女を交互に見る。

「私を連れ戻すおつもりですか?」

黒い着物の少女が言う。

楓は睨み付ける様な鋭い眼差しで黒い着物の少女を見ている。

「当然だ。

それとも何か?

お前、私に抗うつもりなのか?」

楓の口調が強みを帯びて来た。

「抗うなどと…。

ですが…貴女の元へ戻る積もりは御座いません。」

二人はどんどんと話を進めて行くが、僕には何の話をしているのかさっぱり分からない。

だが、紫水さん達はそんな二人のやり取りを、ただ黙って聞いている。

「お前が戻らぬと言うのなら、力ずくで連れ戻してもいいのだぞ?」

楓はしきりに黒い着物の少女に戻れと迫っている。

この二人の間に何があったのか、僕は気になって仕方がない。

「力ずく…??

は…はは…アハハハハハハ!!」

突然、黒い着物の少女が大きな声を上げて笑いだした。

「楓様?

私が貴女の元を去って何れ程の時間が経っているとお思いで?(笑)

その間に、私が貴女の力を上回っているとはお考えにならなかったのですか??

いつまでも主面されては困りますよ(笑)」

やはり、楓は黒い着物の少女の主だったのか…。

でもこの少女は、今は楓を下に見ている?

あの楓よりも強い…?!

もしそれが本当だとしたら、この闘い…大変な事になる!!

僕はこれから起こるであろう闘いに不安を感じていた。

「楓…と言う名前だったのですね?」

それまで沈黙を守って来た紫水さんが突然口を開いた。

「あの少女は貴女…いや、楓さんのお知り合いの様ですが、私達の闘うべき相手でもあります。

そこはご了承頂けますね?」

紫水さんは優しく楓に問う。

だが、静かなその口調とは裏腹に、邪魔をするなと言う強い重圧がひしひしと伝わってくる。

「くどい。

私は好きにしろと言った筈だぞ?

だが紫水。お前達は恐らく勘違いをしている。

アレを私の元従者などと考えているとお前達…死ぬぞ?」

?!

紫水さん達が死ぬ??

それにあの少女は楓さんを主だと言っていた。

なのに楓さんは従者だと思うなと言う…。

一体どういう事なのかさっぱり分からない…。

「従者じゃ無かったら何だってんだよ?」

ここに来て匠さんが口を開いた。

「気になるか?

まぁ知った所で何も変わらぬが、教えてやってもいい。

アレは私だ。」

?!

え?黒い着物の少女が楓さん?

じゃあ此処にいる楓さんは?

僕はもう完全に頭が混乱していた。

「いつまで話してんの??

私は早くあんた達を食べたいんだけど?」

?!

少女がそう言葉を発した瞬間、少女の体から黒い霧の様な物が立ち込め始めた。

これって…楓さんと同じ…。

やっぱりあの少女は楓さんなの…か?

「よぉ。」

?!

僕が少女に見とれていると、いつの間にか匠さんが少女の後ろへ回り込んでいた。

ゴッ!!

鈍い音が響き、宙へ舞い上がる少女の体。

ピシャッ!

少女の体が舞い上がった瞬間にその体を雷が襲う。

これは紫水さんの…。

雷によりその身を焦がした少女の体がプスプスと黒煙を上げながら地面へと落下する。

?!

落下して行く少女が落ちるであろうその地点に真っ暗な穴が広がっている。

闇が広がるその穴は底が見えず、落ちて来る少女を飲み込まんと口を開けて待っている。

これは葵さんの…。

そして…。

力なく落下して行く少女の体は、吸い込まれる様に闇へと姿を消した。

少女が落ちた後、何事も無かった様に元の地面へと返る深い闇。

一瞬の出来事…。

三人の華麗とも言える連携に、黒い着物の少女は正に文字通り、手も足も出ないまま闇に飲まれて行った。

「す…凄い!

凄い!凄い!

本当に凄いですよ三人共!!」

僕は興奮を抑えられず、三人の元へ駆け寄ろうとした。

「来るな!!!」

?!

そんな僕を険しい表情で匠さんが制した。

ゴゴゴゴゴ…。

?!

激しい地鳴りと共に振動を始める大地。

辺りに生い茂る立派な巨木から無数の鳥が飛び立っていく。

「どこ見てるの?」

?!

不意に聞こえたその声。

それは、先程闇に飲まれて行った黒い着物の少女。

その少女がいつの間にか匠さんの背後に立っていた。

?!

少女の存在に気付いた匠さんは、その場から一瞬の内に姿を消し、次の瞬間数十メ―トル先へと移動していた。

「散歩?(笑)」

?!

光が如き早さで移動した匠さんの背後にピッタリと張り付く少女。

「動かないでよ?」

?!

匠さんの危機に加勢する為、印を結ぼうと手を動かした紫水さんの背後から、黒い着物の少女がそれを阻止する。

え?少女は今、匠さんの背後にいた筈じゃ…?

「ハハハハハハハハ!」

?!

いつの間にか僕達の前に移動し、笑い声を上げている少女。

「何がそんなにおかしいのですか?」

?!

大声を上げて笑う少女の影が、地面から浮き上がりその体に巻き付いていく。

この声は…葵さん?!

「へぇ〜?

これって闇の術だよね?

あんた呪術師なんだ?(笑)」

少女は体の自由を奪われて尚、余裕の表情を見せている。

「楓様?

コイツら食べてもいいんですよね?」

?!

少女は楓さんに向かってそう言うと、一瞬の内に葵さんの元へ移動し、その体に喰らいついた。

飛び散る鮮血…。

葵さんは為す統べなく喰らいつかれた首元から血を噴き出している。

「あんたも(笑)」

?!

少女がそう口にした次の瞬間、紫水さんの首元に喰らいついた少女。

そして、同じ様に匠さんも…。

次々とその場に崩れ落ちていく三人。

「あ〜ぁ。つまんない!

あっ!

楓様〜!

あんたも喰らっていい?」

三人を手に掛けた少女は、楓さんまでもその的にしようと目をギラつかせている。

そんな少女を楓さんは黙って見つめている。

そして…。

「お前…その三人をあまり舐めない方がいいぞ?」

?!

楓さんがそう言い放った途端、辺りの空気が一気に張り詰めた。

こ、これは?!

Concrete
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月舟様。

ビジュアル化って(笑)

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セレ―ノ様。

やっぱりウサギですかね?(笑)

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むぅ様。

これ以上殺さない様に…。
出来るかなぁ…(^^;

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珍味様。

だ、誰ですか?!Σ(゜Д゜)

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