短編2
  • 表示切替
  • 使い方

旅館にて

13年程前の体験です…

既に無くなりましたが、ある旅館の警備員に抜擢されました。

20時から6時までの勤務2時間の仮眠時間有り、深夜手当付きで一日15000円の仕事でした。

帰宅する前に無料で温泉に入れるし、断る理由はありませんでした。

旅館警備に入って1週間位経過した辺りでしょうか…

いつもの様に仮眠前の警備を開始しました。

時間は大体0時前後…電灯と巡回時計、マスターキーを持ちフロントを出ました。

空き部屋の施錠状態を確認しながら巡回をしていると…

『ゴトッ…』

何かが落ちた様な音が聞こえ、私は音がした方へ向かいました…

客室の前まで来ると番号を確認、空室かどうかを調べた…

『5号室は…空き部屋か…何かあっても困るし確認しておくか。』

私はドアノブに手を掛けると…

『ガチャ…』

施錠されていない…

私は念の為警戒棒を持ちゆっくりとドアを開けた…

『失礼しますよ?』

私は電灯で部屋を照らした。

…何も無い…真ん中にテーブルがあるだけ…

電気を点け、何か異常が無いか部屋を見渡す…

『異常なしか…ま、それなりの年数が経過してるしな…』

私は電気を消し部屋を出ようとした…

nextpage

と、その時…

誰かが私の腕をすり抜け部屋の中へ入っていった。

『えっ?』

私は直ぐに後ろを振り返り室内を照らす…

が、何も見当たらない…

『いやいや…まさかな…』

部屋を施錠し、私は急ぎ足でその場を去った。

フロントに戻り、椅子に座る。

手が震えている…

『兎に角落ち着かないと…』

震える手で煙草に火を点け、目を閉じる…

『(アレは何だ?幽霊ってやつか?)…ふ~っ…疲れてるんだなきっと…』

私は制服を衣紋掛けに掛けると、仮眠室に向かった…

朝4時…フロント係の方が出勤してきた。

『おはようさ~ん。昨日は何も無かった?』

私は話そうか迷ったが、一応話すことにした…

nextpage

事の顛末を話すと、フロント係の顔がみるみる青ざめていく…

話を聞くと、数年前に中居の方が首を吊った…

テーブルに乗り、梁に帯を掛けて…

『…警備員さんは番号の羅列をどう思う?』

…ふと思い浮かべる…

1,2,3と続いてるのに何故6,7,8,9,10,11,5なんだ?と…

首吊りがあった部屋は4号室で、オーナーがほとぼりが冷めるまで部屋を使わせない様に

4号室の隣の部屋まで番号を外していたが、繁忙期に入った際に、番号をすり替えれば良い

と、本来1号室の向かいにあった4号室を5号室に変えてお客様に提供し、そのまま使われて

いる。との事だった。

既に壊されたがその後はどうなったのか…

この話をしたフロント係さんは轢き逃げされ死亡、私自身も事故に巻き込まれ、左足に麻痺が

残り、退社を余儀なくされたが…アレのせいとは考えたくないな…

Normal
コメント怖い
0
2
  • コメント
  • 作者の作品
  • タグ