中編4
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砂漠電話

ある日、夢の中で砂漠に出る。

砂漠の中をさまよっていると、座っている人がみえる。

その人を良く見ると自分そっくり・・・というか、自分そのものだ。

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さらに近づくと、そのもう一人の自分がムクっと顔を上げ

「変わってくれ」

という。

唖然としていると、もう一人の自分は立ち上がり、追いかけてくる。

砂漠の上を逃げ回っていると、突然電話ボックスが見える。

やっとの思いでそこに逃げ込むと自分は家に電話した。

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すると、母が出て、あなたは誰?と聞かれる。

そこで自分の名前を答えると目が覚める。

この話を聴いたあと、本当に夢に出る。

その時に、てに10円玉を貼っておかないといけない。

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しかも、本当に夢に出たとき、目がさめるとその10円がなくなっているという。

この話は、私が中学生の頃流行った話だったと記憶している。

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当時は刺激を求め、無茶をしていた。

体力も大人に近づき新しい発見と、思春期という心ときめく毎日。

新鮮な日々を過ごしていた。

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仲間内で、その夢を見ようという話になって、各々が様々な試みを行なった。

しかしそんな夢を見るものはいなく、ただの噂話だったと結論付けた。

退屈していた私達は、いつしか“不思議な夢を見る方法”という事に興味が移行して行った。

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そんなある日、仲間内で、変な夢を見る方法を見つけたとの報告例がでた。

私達は嬉々として、その友達にどんな夢を見たのかと、その夢を見る方法について尋ねた。

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「1週間くらい、見た夢の内容を出来るだけ細かく記録に残すんだ。

出来れば絵日記の様な形式が良い。

それが出来たら、次に夢を見た時に“これは夢だ!”と強く念じる。

すると夢の中で自分の思い通りの事が起きる。

へへっ、、楽しくてやめられないよー」

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友達は饒舌に自分の発明した理論を披露した。

聞いて見ると簡単な様にも思えたが、日記を付けるなんて億劫だと面倒くさがる奴もいた。

確かに結構な努力が必要だという印象が強かったが、そこは時間と暇を持て余していた年頃。

好奇心が勝り、友達から聞いた方法を早速実行に移していく事にした。

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1週間飽きもせず、夢の絵日記を描いた。

描き始めると、

(案外夢って見られるものだなー)

と自分でも感心するほど、毎日の様に夢を見た。

最初は、取り留めのない日常の夢の断片だったが、徐々に夢はストーリー性が感じられる内容となっていった。

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1週間経ち、私は学校で友達に

「準備が出来たから、今日あたりから奴が見た様な夢を見られるかなー」

と言うと、仲間内の数人がギョッとした表情を見せた。

私は不審に思い、

「?どうした?なんかまずい事でも言った?」

惚けながら尋ねる。

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「あーお前のあいつとクラス違ったな。

部活で一緒なだけだもんな。」

と神妙な面持ちで友達の1人が答える。

変な夢を自慢していた彼のことを言っていた。

「そうだけど、それがどうかしたの?

何があったんだよwww?」

笑いながらも、言葉に詰まる友人に対し少し苛立ちを覚えた。

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「あいつ、自殺未遂をしたらしい。

もう学校にも来てなくて、奴自身は既に転校になってる。

家族も直ぐに何処かに引っ越すらしい。

奴の近所で幼馴染の友達が教えてくれたんだ。」

彼は自宅近くの踏切に、白昼堂々飛び込もうとしたという。

人出も多い場所だったため、直ぐに周りの人に引き戻され取り押さえられたとのこと。

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その時彼はずっと、なんとも言えない歪んだ表情で笑っていたらしい。

彼の同じクラスの友達は、その事件が起きる数日前から異常を感じていた。

最後にあいつが言った一言が今でも忘れられないという。

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「前に流行った、砂漠の公衆電話の話あっただろ?

あの夢を見る事が出来る様になったんだ。

でも、おかしいんだよ。

その夢だけは、自分の思い通りにならないんだ。

自分と同じ男に追われ、とうとう捕まったよ。

その時は、一日チャンスをくれと言ったら目が覚めたんだ。

今日もその夢見たら、同じお願いで切り抜けようかな笑」

戯けて話す彼の顔色は、隈、青白い顔と酷いものだった。

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次の日、友達は彼に昨日の夢から無事帰還出来たのかと、冗談半分に聞いた。

「ん?夢?、、あー平気平気。

もう終わったから。」

無表情で答える“それ”に、今までの彼の面影は無かった。

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その次の日が踏切事件。

私達仲間内では、もう夢の話はタブーとなっていた。

私は、勿論夢を見る方法を意識しない様に必死だった。

彼は今どうしているのだろうか、、

開いてはいけない扉を開けてしまったのか、踏み入れてはいけない場所に行ってしまい、戻れなくなっているのかも知れない。

Concrete
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