中編6
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狙ってきたアイツ

「緑野さん、部屋おんなじみたいです。他にAさんとBさんがいます」

彼は3ちゃん。

穏和な顔付きで黒い枠の眼鏡をかけた、オレからすると年上の後輩。

※本人には承諾済み

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「マジ?いやー、部屋でノンビリできるねーよかったわー」

お久しぶりです。人によってははじめましてかな?

緑の野菜です。なんとか生きてます。

「み、緑野さん?明後日の方向見ながらなに言ってるんですか?」

「ん?読者への挨拶だよ。挨拶は大事だろ?3ちゃんだって出勤したら挨拶するだろ?」

3ちゃんから渇いた笑いが洩れる、あまり深く追及しないほうがいいと判断したのかもしれない。

正解だ。

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時刻はお昼前。今日は普段の仕事が無く、別部署の手伝いに3ちゃんとオレは来ていた。空はだんだんと黒い雲に覆われて太陽はすでにあまり見えなくなっていた。

別部署の応援に来たオレ達だったがそこでもあまり仕事が無く順番に小休止を取っていた所、戻ってきた3ちゃんが開口一番冒頭のセリフを言ったのだ。

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「社員旅行明後日だったよね?アレ?集合時間何時だったっけ?何時にロビー集合?」

3ちゃんは優秀で頑張り屋さんだ。知ってることならなんでも答えてくれる。そしてそれ以上にイジると楽しい

「○○の温泉に午後3時集合です」

そう、勤め先の会社は明後日社員旅行。楽しみです。

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「同じ部屋になった3ちゃんに一つ約束して欲しいことがあるんだけどいいかい?」

真面目な顔で3ちゃんの顔を正面から見る。あ、雨降ってきた。

なんですか?と雰囲気を察し彼もまた真面目な顔に。

「寝てるときお願いだからオレの尻を狙わないでくれ」

「狙いませんよっっ!!僕ソッチじゃありません!!」

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ウブな3ちゃんの赤い顔を堪能したと同時に声に反応したのか雨は強くなった。

お陰で風邪引きましたよ。えぇ。次の日も仕事でしたが顔色悪いのを見て上司から「帰れ」の一言を頂き大人しく寝てました。

そんなこんなで旅行当日です。

ここからは読んでいるみなさんに一つお願いがあります。さっきの3ちゃんのネタじゃないのでご安全を。

ただ、オレ、緑野のセリフはCV.スリムクラブの顔が四角い方で脳内音声変換してください。

えぇ、喉、やられました。

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オレはいまなんでここにいるのでしょう?

答えは簡単、社員旅行。

ではなぜロビーにはオレ一人なのでしょう?

答えは、わかりません。

集合時間より早く着いたオレは会社の人が誰もいないロビーでポツネーンと待っているより時間まで周囲をドライブすることにしました。

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スマホで音楽を流し、悠々とドライブ

そして着いたのが錆びたスワンボートが二つ物悲しく波に揺れている湖

そしてオレの第一声

「うわ、いっぱいいる」

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ここでようやくオレの説明をさせていただきます。

年令は20代、眼鏡を掛けた男です。

特にこれといったものはありませんが、強いてあげるなら霊感持ちの霊媒体質です。

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見えはしませんでしたが、たくさんの人ならざるモノがいるのはわかりました。

「うーわーすーげー」

パシャパシャ

車を降りスマホで湖、ロッジを写真に収め知り合いに送りつけました。

きっと後で楽しい反応してくれんだろーなー

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余裕そうに見えます?

そんな事無いんですよ?

後ろに公衆トイレがあったのですが、そこから強い力を感じてました。だから後ろは絶体振り向きま……

「さすがにこのトイレの写真はマズイからやめるか」

して、スマホ越しに見ました。

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湖で存分に楽しんだあとホテルに戻りましたがまだ誰もいません。

3ちゃんに連絡しようかな、と思ったとき3ちゃんから連絡が着ました。

簡単に言うと、もうみんな来て酒盛りしてるからおいで

という内容。集合にはまだ少し早いのに……

部屋に行くと確かに全員揃っています。

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「緑野さん、どこいってたんですか?集合午後2時ですよ」

「オレこないだ3時って聞いたよ?なんで早くなってん??」

実は昨日、オレが帰ったあとに集合時間の変更があったらしくそれがオレに届かなかった悲劇がここで判明しました。

楽しい旅行に水を差すのも嫌なので流すことにし、部屋に着いたらまず行う事を……

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「緑野さん?なにやってるんですか?」

掛け軸をめくったりしているオレを見て3ちゃんは聞いてきた。

見ればわかるだろ?

「札とか貼ってないか調べてるんだよ。宿泊まったら必ずやるだろ?」

「やりませんよ」

やらないかなぁ?

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札探しも終わり(ありませんでした)、風呂と夕飯を済ませそろそろ寝ようかという時間になりました。

「さぁ、3ちゃん、はじめようか」

「え、なにをですか?」

若干後退りしながら聞いてくる3ちゃんに対してやる気に溢れるオレ

「そんなの決まってるだろ?裸と裸のぶつかり合いよ!」

「ちょっっ!ま、待って!あぁぁぁぁ……」

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「ふぅ、いい汗流せたな」

流れもしてない汗を拭く演技をしつつ半裸になってる3ちゃんを眺めご満悦なオレ

「もう、お嫁に行けない……」

「ははははは!」

「俺もう寝るから。相撲はもういいだろ。遠藤関もエドモンド本田もそろそろ寝ろよ」

Aさんはそういうと布団に潜る。さっきまで遠藤関とエドモンド本田の一方的な戦いから逃れるため避難していた。

遠藤関こと3ちゃんはイソイソとオレに脱がされた服を着直し、エドモンド本田ことオレは部屋の灯りを消した。

これからがオレの本当の戦いの始まりだとはまだ知らずに……

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さわ…………さわ……さわわ…………

「……………………」

さわわ……さわ…………さわわわ

時刻はわからなかった。ただ真っ暗だったので寝始めてからそんなに経ってはいなかったのだと思う。

オレは足に感じる違和感で目が覚めた。

なにかが足を触るというか絡むというか、とにかく起こされるには十分なものだった。

(…………横で寝てるのは3ちゃん…………まさか……)

さわ……さわわ……

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(え、なに?オレいま貞操のピンチ?イジったりはしたけどまさかガチで??)

さわ…………さわわ……

目を開け3ちゃんを見る。やけに寝苦しそうに唸っていた。その間も足には触られている感触がある。

「………………(マジかー……)」

目線の先には黒い霧のようなモヤモヤが人の形をしたナニかがオレの足を一生懸命に触っていた。

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しかも四人川の字で寝ており3ちゃんの足に体を乗せている状態でオレの足をイジっているのだ。

そりゃ、3ちゃん寝苦しいよね。

おそらくこの黒い奴は昼間の湖でトイレに居た奴だと思う。

湖側の奴らはこんな事できないので出来るとすれば奴だけだ。

正直足イジられてるだけだから放っておいてもいいんだけど、3ちゃんに影響出たらなぁ…………

さわ…………さわ……さわわ

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「あぁぁあ!うっさい!!」

思いっきり蹴ってやりました。

黒いモヤは体をくの字に曲げると消えていきました。

これで安眠できますおやすみなさい。 

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「緑野、起きろ」

まだ寝たい

昨日力使ったから眠い

「朝風呂行くぞ」

「行く」

むくりと起きながらAさんの言葉に反応すると急に動くとは思っていなかったのか驚いていた。

3ちゃんは既に起きて風呂へ行く準備をしていた。パッと見た感じ昨夜の影響はなさそうで安心した。

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帰り、お土産を買いながら昨夜の出来事を3ちゃんに説明することにした。

「3ちゃん、ダメだよ夜中オレに足絡ませて求めてきちゃ、オレそっちの人じゃないからね?」

「え、え!?」

まぁ、真相を伝える必要はないだろ。

それにしても3ちゃんはイジると反応が面白い

Concrete
コメント怖い
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