中編3
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「生きろ」

ある所に意地悪な姑がいた。

家のことは何もせず、まるでアリとキリギリスのキリギリスのような婆さんで何もしないだけなら許されたのだが、嫁が来る何年も前から付き合っている男の家に無断外泊したり、舅の稼いだ金を湯水のように使い込み、更には嫁をいじめていた。

舅は、姑がヒステリー持ちなので無関心だった。

夫もそうだった。

姑は、嫁のする家事の批判や

嫁の悪口の吹聴など…

いじめといういじめをして嫁を苦しめ続けた。

ある日、嫁は体調を崩した。

仕事をしながら家事をすべてこなし、姑から悪口を言われる日々に身も心も疲れきった。

嫁が病院へ行くと「うつ病ですね」と言われた。

うつ病を悪化させたくなかったが、嫁には帰れる実家がなかった。

休む暇などなく、うつ病が悪化した為仕事をやめ昼間は横になっていた。

姑は男の家に行っていていなかったので、その時間だけは休息できたのだ。

うつ病の診断から半月経った頃だ。嫁は夢をみた。

死んだ両親が泣いていた。

嫁が目を覚ますと、涙がこぼれていた。

「お父さんお母さん…今からそっちへ行くね」思考停止状態の嫁がドアノブへとロープをかけた。

全体重をヒモにかけると、意識が遠のいていった。

薄れる意識のなかで「せいじ君(旦那の名前)ごめんね…」と呟いた。

その時、プツ!という音とともにロープが切れた。

目の前には亡くなった両親の姿があった。

「お父さん!お母さん!」

必死で叫んだが声が出なかった。

「お父さんもお母さんも、もうお前の苦しむ顔を見るのは辛い。だけど、まだこっちへは来るな!」

悲しそうで怒ってるような父の声だった。

「もう少し待ってなさい…」

優しい母の眼差しだった。

涙が止まらなくなった。

それから1週間ほど経った頃、嫁は両親の顔を思い出しながら少しだけ体調を戻していた。

姑はその1週間不倫相手との旅行で帰ってこなかったので、それも体調回復へ繋がったようだ。

体調がいいので夕飯は手の込んだ物を作ろうと、買い物へ行こうとした時だった。

1本の電話がきた。

「洋子さんのお宅でしょうか?」

「はい、そうですが…」

警察からだった。

要約すると洋子(姑)が亡くなったという連絡だった。

頭が真っ白になり、夢だと思ったが事実だった。

その後は、解剖の説明や簡単な事情聴取があって舅と何度か警察署へ行った。

夫は出張先から帰って葬儀にだけ参加すると言った。

あっという間の出来事だった…

落ち着いてしばらく経った頃に、嫁は夢をみた。

両親が笑顔で立っていた。

「笑った顔でいなさい。その方が素敵だから…」母がそうつぶやくと二人は姿を消した。

慌てて目を覚ますと、やっぱり二人の姿はなかった。

姑と不倫相手は、不倫相手の運転中の心不全により自動車が暴走したことにより単独事故を起こし、2人とも即死だったそうだ。

それから嫁はうつ病を1年かけて完治させ、元の元気な姿へと戻った。

あの後、両親の夢を見ることはなくなったが…

未来が分かっていた両親からの「生きろ」というメッセージだったのかな?と時々思い出すという。

おしまい

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