短編2
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隣人の騒ぎ声

これはある大学生が新生活のために都内の激安なアパートに暮らし始めた頃の話なんだけど、

そのアパートは見た目からして古く、壁なんかも薄くて騒音問題も日常茶飯事だったんだ。

とは言ってもやはり都内は都内。

住人は彼の他にも多数いたんだよね。

そこの部屋に住み始めていくらか経った頃、隣の住人の騒音に気づきはじめるんだ。

というのも、隣も学生なのだろうか?

友達(?)を複数人連れて連日連夜のようにガヤガヤと騒ぎ立てているようなんだ。

うっさいなぁ、一体なにをそんなに毎晩騒いでいるんだ。

そう思いつつある日、好奇心で壁に耳をあて、聞き耳を立ててみることにしたんだね。

けれど、聞こえてきたのは彼も予想だにしなかったものだったんだ。

「お経」

読んでたんだよね。

しかも複数人で延々と。

流石に怖くなって壁から退いてしまったんだけど、次の瞬間

「ピンポーン」

彼の部屋のベルだったんだ。

流石に躊躇ったでしょうねぇ。

恐らくドアの前にいるのはそのお経を読んでいた隣人なのだろうから。

けれど、その呼び鈴は1度鳴るだけでは済まず、何度も何度もピンポーン、ピンポーンと繰り返し、しまいには

「ドンドンドンドン」

戸を乱暴に叩き始めたんだ。

流石に我慢の限界。

彼は吹っ切れたようにドアを勢いよく開けたんだね。

案の定、そこには隣人が立っていたんだけど、意外や意外。

逆にこちらが凄い剣幕でドアを開けたもんだから、その隣人の方が驚いちゃってたんだ。

「なんでしょうか?」

彼は隣人に尋ねた。

「いや、アンタの部屋からずーっとお経みたいなのが聞こえるから、気味悪くて止めるように言おうとしたんだけど…。」

そう、何人も集まってお経を唱えてたのは隣人じゃなかったんだね。

全員ずっと自分の部屋の中で延々お経を唱えてたんだね。

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