短編1
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微睡みの声

夜、眠る時稀に声が聴こえる。

楽しそうな声だったり、誰かと誰かが秘密を話すような声、遠かったり近かったりとそれは様々だった。

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ある日、布団に入っても寝付けず、目をつぶり続けているとボソボソと声が聴こえる。

それは遠くからの声のようで叫んでいた。

(何を言ってるのか、良く聴こえない。)

何か焦っているようなその声は少しずつ大きくなっていく。

「…ぉーぃ、ぉぉーい!」

(お、なんか呼んでる?)

今まででこちらへの声というのは少なからずあったが、こんなに焦り呼びかけるのは初めてだった。

「ぉおーい!!はやく起きろ、起きなきゃダメだ!!!」

目を開けた。嫌な予感が身体中を駆け回る。時計を見ると午前2時。

shake

クラリ。

微かに部屋が揺れ出す。

shake

クラ、クラリ

shake

グラリ!!

地震だ!!

揺れは次第に大きくなっていき、木造の家は軋み、壁掛け時計は落下、写真立てすら自立が難しいのかパタリと倒れてしまった。

その大きな揺れと家の中が掻き乱れる様とで不安と恐怖が押し寄せた。

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すぐさま机の下に隠れた為か、大した怪我も無かった。

いや、あの声が、私を助けてくれたんだろう。

あの時あの声が起こしてくれなかったら、乱れ、倒れる家具達に押しつぶされてしまっていただろう。

誰かもどこにいるかも分からない声の主に、ただただ感謝の念を抱くしかなかった。

Concrete
コメント怖い
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ネタバレ注意
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実は同じような経験が……。

昔夢の中で、落ちる、落ちる、起きて、落ちるから。

と、呼びかけられた事があります。

何が落ちるの?と思い、急いで飛び起きると、付けたままにしていたテレビ画面に、丁度ツインタワーに、ハイジャックされた飛行機が突っ込んで、大炎上しているシーンが、
そう、9.11というやつです。

やっぱり何かしら、皆さんそういう事があるんですね…。

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