中編2
  • 表示切替
  • 使い方

トビーの形見

wallpaper:4383

 幼いころ、家の近くに

小さな駄菓子屋がありました。 

狭い店の奥には薄暗い土間があり、

その向こうは居住スペースがあり、

裏手にはこじんまりとした庭もありました。

separator

wallpaper:29

直角に近い角度で腰の曲がった婆さんが

一人暮らしながらやっており、

しわくちゃの顔をさらに

クシャクシャと笑顔を作り、

学校帰りの子どもたちを迎えてくれてました。

本当に仏様のように優しい婆さんでした。 

兄弟がおらず、

両親と3人暮らしだった当時の僕にとって、

この店のひとときは癒しのひとときであり、

もう一つは、

家で飼っていた白猫のトビーと

遊んでいるときでした。

wallpaper:4384

 お婆さんの店には、お菓子やアイスクリームが

たくさんあったのですが、その他、

ハンバーガーがありました。

これが生徒たちに大人気で、

30円という破格の値段のわりに、

肉がとても美味しかったのです。 

なんでこんなに安い値段で

あんなに美味しいハンバーガーを

提供できたのか、

当時は不思議に思っていたものでした。

wallpaper:4383

 ある日僕は、母にひどく叱られました。

白猫のトビーの目の回りに

黒マジックで丸を書き、

赤マジックでマニキュアのように

爪に塗ったからでした。 

そのことがあった翌日からトビーが

いなくなり、

1週間経っても家に帰って来なくて、

自分のせいではないかと、

幼いながら僕は心が痛みました。

separator

 

 学校帰りにいつもの通り僕は

駄菓子屋に寄って30円のハンバーガーを

ほおばりながら、

いなくなったトビーのことを

婆さんと話してました。

nextpage

「そりゃあ、心配じゃろう、、」

婆さんは皺だらけの目元に更に皺を寄せて、

さも心配そうにつぶやきました。

「いつか、帰ってくる、と思うんだけどね」

と言って僕は大きく口を開けて、

バーガーをほおばります。

すると口の中に何か硬いモノがあり、

僕はそれを誤ってガリリと噛んでしまい、

慌てて吐き出しました。 

手のひらに乗ったソレを見ると、

それは何か赤い色をした

鷹の爪のようなモノです。

僕は改めてソレを見て、

前かがみになり激しく嘔吐しました。 

nextpage

 ソレは紛れもない、

僕がイタズラしたトビーの

爪だったのです。

Normal
コメント怖い
0
8
  • コメント
  • 作者の作品
  • タグ