短編2
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トビーの形見

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幼いころ、家の近くに小さな駄菓子屋がありました 

狭い店の奥には薄暗い土間があり、その向こうは居住スペースがあり、裏手にはこじんまりとした庭もありました

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直角に近い角度で腰の曲がった婆さんが一人暮らしながらやっており、しわくちゃの顔をさらにクシャクシャと笑顔を作り、学校帰りの子どもたちを迎えてくれてました

本当に仏様のように優しい婆さんでした

兄弟がおらず、両親と3人暮らしだった当時の僕にとって、この店のひとときは癒しのひとときであり、もう一つは家で飼っていた白猫のトビーと

遊んでいるときでした

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お婆さんの店には、お菓子やアイスクリームがたくさんあったのですが、その他、ハンバーガーがありました

これが生徒たちに大人気で、30円という破格の値段のわりに、肉がとても美味しかったのです 

なんでこんなに安い値段であんなに美味しいハンバーガーを

提供できたのか、当時は不思議に思っていたものでした

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ある日僕は、母にひどく叱られました

白猫のトビーの目の回りに黒マジックで丸を書き、

赤マジックでマニキュアのように爪に塗ったからでした

そのことがあった翌日からトビーがいなくなり、1週間経っても家に帰って来なくて、自分のせいではないかと、幼いながら僕は心が痛みました

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学校帰りにいつもの通り僕は駄菓子屋に寄って30円のハンバーガーをほおばりながら、いなくなったトビーのことを婆さんと話してました

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「そりゃあ、心配じゃろう、、」

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婆さんは皺だらけの目元に更に皺を寄せて、さも心配そうにつぶやきました

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「いつか、帰ってくる、と思うんだけどね」

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と言って僕は大きく口を開けて、バーガーをほおばります

すると口の中に何か硬いモノがあり、僕はそれを誤ってガリリと噛んでしまい、慌てて吐き出しました

手のひらに乗ったソレを見ると、それは何か赤い色をした

鷹の爪のようなモノです

僕は改めてソレを見て、前かがみになり激しく嘔吐しました

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 ソレは紛れもない、僕がイタズラしたトビーの

爪だったのです

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