短編2
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先に帰ってくる音

皆さん、お久しぶりです。覚えていらっしゃいますでしょうか?

中崎べろるです。

先日、少しばかり季節外れの怖い体験をしたので、久しぶりに投稿したいと思い立った所存でございます。

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さて、彼岸も少し前の話。

私は動物関係の職務に就いているのですが、それは帰宅前の掃除中の話でした。

確かその日は、初めて訪ねてきた方の飼い犬の安楽死が、会った日かと覚えています。

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「かわいそうに。病院で腫瘤除去の手術をすれば助かるのに、安楽死だなんて」

「飼い主にも思うところはあるよ」

なんて同僚と話していた時。

ギィ。バタン。

そんな音がしました。

耳によくなじんでいる、スタッフ室の扉の音でした。誰か水でも飲みに行ったのかな、なんて思って、周りを伺っていると、ぽつりと同僚が言ったのです。

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「あれ?おかしいな、先生も、スタッフも全員いるのに」

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全身総毛立つかと思いました。

もともと動物の死と直面することが多い職場ですから、たまに何かしらの「へんなこと」が起こることがあったのですが、その日はなぜか、やけに怖いと思ったのです。

ああ、いやだな、いやだな、という感覚は残っていましたが、なんとか車を運転して帰宅。

すると、今度は母に「あれ?」と不思議そうな顔をされました。

もう、いやな予感しかしませんでした。

聞けば母はこう言うのです。

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「さっき帰ってこなかった?玄関開く音と、猫がじっと玄関を見ていたんだけど」

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足音だけ先に帰ってきたのね、なんて笑う母に、私は怖いね、などと適当に返事を返すしかありませんでした。

つまりそれって、家の中に入ってきたってことだよな、と。

友人からは幽霊屋敷と呼ばれている我が家ですが、このたびまた住人が増えました。などと冗談でも言いたくはないですね。

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今でもたまに、なぜか、「私より先に帰ってくる音」がするそうです。先日は母より早く帰ってきていたので、まだいるようですね。

皆様も、どうぞ変なものにはお気をつけくださいますよう。

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