中編3
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夢の人形

夢って不思議ですよね。

考えたこともないことや、体験した覚えもないことが

寝てる間のほんの少しの時間に表れます。

それがいい夢か悪い夢かは人それぞれ違いますが。

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僕はあまり夢は見ないほうです(覚えてないだけかもしれませんが)

たまに見ても何の変哲もない夢。

「悪夢」と形容されるような夢は見たこともありませんでした。

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ただ、ほんの2週間ほど前のことでしょうか

怖いな、と感じた夢を見ました。

その日僕はなんとなく、夜中に怖い話を聞いていました。

1時間ほど聞いていると、なんだか妙に眠くなり

聞いていた怖い話をつけたまま、眠りに落ちました。

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ふと気が付くとそこは見慣れない部屋でした。

明晰夢というのでしょうか、その中で僕は

「ああ、これは夢なんだな」

という認識であり、身体も自由に動かせました。

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まったく見覚えのない部屋で、僕はまず目を慣らしました。

少しすると薄暗い部屋の中の全体がわかりました。

4畳ほどの部屋で、角に小さな机、本棚が置いてあり

反対側にベッドと何枚もの布が床に落ちれていました。

たったそれだけなのですが、その床にある布に違和感を覚えたんです。

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よく見るとその布は小刻みに震えているのが分かりました。

風が吹いているわけでもなく。

そも、風が吹いていたからといって布のようなペラペラの軽いものが小刻みに動くなんてことはありません。

それこそ、誰かが動かしたりしない限りは。

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そう思うと近づく気も起きず...

目が覚めるまでじっとしていよう。

という結論に落ち着きました。

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ある程度時間が経つと、ふと意識が持っていかれるような感覚があり

気づけば布団の中で目を覚ましました。

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ああ、なんか不気味な夢だったなぁ

と、思いつつも飲み物を飲もうと布団から出て...

そこまでして気づいたんです。

夢と同じ部屋にいることに。

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もちろん僕の部屋ではなく。

まるで夢の続きを見るように同じ部屋にいたんです。

そして同じように机と本棚と、、、

あの重なった布がありました。

一つ違うのは、その布がほんの少しめくれていたことです。

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えも言われぬ恐怖。

思わず目を逸らして反対側の机を見るようにした時

背筋に氷をあてられたような感覚がしたと思うと

後ろから赤ん坊の声が聞こえました。

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おぎゃあ。

おぎゃあ。

おぎゃあ。

おぎゃあ。

おぎゃあ。

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タオルかなにかで包まれたようなくぐもった声。

その声の出どころは

どう考えてもあの布の下でした。

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聞こえない振りをしようとしても

まるで早く布をめくれと言わんばかりに泣き声が響き

僕の精神をすり減らしていきます。

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もうどうにでもなれ!!

僕はそんな気持ちで布に歩み寄り

小刻みに震えている手を、それに近づけました。

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ぺら。

なにもしていないのに。

そこにあった布はめくれて、中身が見えました。

それと目があった。

あった。

あった。

おぎゃあ。

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おぎゃあぁ

ぎゃあぁ

ゃあぁあ

ぁはははきゃははははひひはははひひ。

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それは、手足がボロボロになり

気持ち悪いほどの笑みを浮かべたリカちゃん人形。

僕は急いで机の方へ投げつけました。

一刻も早くそれを処理しなければ、と

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その時の僕は何故かそんな気持ちでいっぱいでした。

なげられた人形は机の角にぶつかり

ボロボロの腕が片方、ボキッと折れました。

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その瞬間に僕の意識は薄れていき

ああ、やっと終わる。

そう思って目を閉じると暗闇の中で一言。

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「忘れないからな」

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