中編3
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通学路

小さい頃は霊体験をしやすいと言われるのだが、それが霊体験だと思うことは少ないらしい。

だから当然のことのように思えて記憶から消えてしまう。

しかし、俺は昔体験した不可解な出来事がどうしても当然のこととは思えないのだ。

最初に言っておくが実体験なので作り話のようなしっかりしたオチはないが聞いてほしい。

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これは俺が小学生の時の話だ。

俺の学校では朝の通学の際と帰宅の際には通学路が決められているのでその道を歩いて帰らないと行けない。

これは学生の安全を確保する為である。

低学年の子達は帰宅路も集団下校をするのだが中学年になると1人でも帰れるようになる。

俺が小学3年の時のことだ。

俺には二つ歳が離れた兄がいて、その兄の友達が結構悪ガキだった。

俺は彼らと一緒に遊ぶことも多く、悪い影響を少なからずうけていて、学校のルールを破ったりすることも増えていった。

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ある日そんな彼らと一緒に帰る時、「近道があるから一緒にくるか?」と言われてついていくことにした。

勿論通学路以外の道を通って帰るのはルール違反だ。

まあ、その帰り道なのだが、なんといつも40分から50分くらいかかっていたのが30分くらいで帰れる近道だった。

しかしこの近道には問題があった。

この近道は長いs字型の坂道になっていて右側にガードレールで守られた歩道が坂道を登りきるまで続いていてその歩道の右側は崖になっている。

反対側に歩道はなく木々が生い茂っている。

さらにこの道を少し登っていくと直線の坂道が続き、歩道の右側には200mくらい続く砂利の駐車場があり駐車場の奥にはずらっと墓が並び墓地となっている。

さらに歩道の反対側にはお寺と小さい墓地がもう一つある。

お寺は霊魂を鎮める為なのだろうか?

嫌なのはこの墓地とお寺の直線ゾーンが長く続いていることだ。

俺は出来るだけ明るい時だけこの近道を使うようにしていたが、友達と夕方まで遊んだりした時はこの道を使うことが多かった。

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ある日友達と遊んで夕方の日が暮れた頃にこの道を通った時の話だ。

俺は一つ目のカーブを曲がりきり、直線の不気味な直線ゾーンを迎えた。

いつもこの直線ゾーンを通る時、後ろや前から車が来てくれることを願っていた。

車のライトが安心するからだ。

その日は運良く車が多く、もう一つのカーブの近くまで悠々来ることができた。

もう直線ゾーンを越えて安心した俺。

運がいいことに後ろから車が来てまた安心。

車のライトが俺の前方の視界をてらしてくれる。

反対の歩道を自転車が走っていて、坂道を下っていく。

白いワンピースを着たお婆さんだ。

俺はまた安心。(よかった〜。人がいて。

sound:22

んっ!?ちょっと待てよ。

反対側は歩道がなく、車がスレスレで走ってるはずだよな?人が通るには危なすぎるぞ❗️)

今度は前から車が着たのでその車のライトを利用してお婆さんを確認しようと振り返ったがそこには誰もいない。

sound:19

俺は怖くなりもう一つのカーブを曲がり、坂道を登り切り明るいところまで全力で走った。

(あれはなんだったのか?)

見間違いかもしれないと思った俺はあまり気にしないようにした。

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それ以降、その道を通ることも少なくした。

しかし、ある日の夕方母親のスーパーの買い物について行った時だ。

車でその道を通った時俺は何となく窓を眺めていた。

お寺側の墓地の近くを通り過ぎようとした瞬間、

sound:22

窓の前を白い物体が通り過ぎた。

俺は心臓が止まるかと思った。

それは自転車に乗ったお婆さんだった。

(あのお婆さんだ!こっち向いていた。)

俺はさらに恐ろしいことに気づいた。

あの時は夏だったから違和感なかったのだが、今は冬に近く肌寒い季節だというのに白いワンピースを着ていたのだ。

思いもしない出来事に俺は泣きじゃくり、母親に心配をかけたのを今でも忘れることはできない。

お婆さんの顔がこの世の顔とも思えないほど細長く、不敵な笑みを浮かべ、目が深い闇に続いているようであったことも。

sound:9

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