中編4
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学校の階段

まだ私が小学生の頃のそんなに怖くない実話

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当時は放課後の居残り組があった

それは何ら意味もない集いだった

週に二度集まって本を読んだり勉強したり

今でいう「家庭の事情で帰れません」みたいな

私の他にも2年生から6年生の10人程度がいた

当時の私は5年生だった

私には一人親友のSがいた

彼女はその年に仲良くなった一人の友達だった

まぁ中学は私が違うとこへ行ったので今はどこで過ごしているかは分からないが

その日は木曜日で、木曜日のみパソコン室の利用が可だった

私とSはパソコン室で名刺やら地図だの絵だのを作成していた

元々居残り組って言っても、やることは特にない

学校のなかにいればOK、ただそれだけ

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夕方の5時には下校しなければいけなかった

その日、私たちはクラスの子に名刺作成依頼を承り時間ギリギリまで仕事をしていた

今思えば無理難題すぎる依頼とか押しつけられていたような気もするが

先生「はい、もうすぐで5時だからみんな支度してね」

みんな「はーい」

S「K(私)、そっち終わった?」

私「あとシャットダウンしたら」

Sはランドセルに筆箱をしまい始めた

私もコピー機から出る名刺を取り、依頼人のクラスへSと共に向かった

クラスには既に闇が広がっていた

11月18日の5時は暗かった

だが、私はいつもならグダグダ帰る、が

その日は何故か早く帰りたいと私は思った

「寒さで気のせいか…」そう片付けた

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教室のすぐ近くの階段を降りる

まだパソコン室には数人残っているみたいだった

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以下私とSの会話

私「なんかさー、寒くね」

S「あー、今日はね」

私たちは階段へ足を踏み入れた

太鼓の音と、鈴のチリーン、という音そして

「た゛す゛け゛て゛……」

shake

全身からゾクゾクゾクっと悪寒が走った

濁点をつけまくった声が階段に響く

Sを見る、Sも聞こえたようだ

それは明らかに自分達の真上からだった

私たちは今4Fにいる

5Fは夏場プールでその他の使用はない

まして今は11月だ、それに5Fは鍵が掛かって…

「た゛す゛け゛て゛……」

shake

あかん、と私は叫びたかった

Sはひきつった顔で「やべぇ」って顔をした

思わず私も「こりゃあれですな」と手でポーズした

声はどうやら1分おきらしい

「…でさ、やっぱカラオケがいいと思うんだけど」

Sは突然話を始めた

それは恐怖から逃れる為だと私もわかった

「だ、だよね!じゃぁさ、なに歌おうかなー」

「た゛す゛け゛て゛……」

shake

「Kはほら、千の風になってとかどう?」

「千の風になって?あぁ、できるよ、できるさ」

私たちはその時何故か金縛りにもならなかったが

言い様のない恐怖で足はすくんでいた

そして今私たちはゆっくり下へ進んでいる

「わたしのぉ~おはかのぉ~ま~えでー♪」

本気で歌った、本気で私は歌っていた

「そこにぃ~私はぁ~いません~♪」

「た゛す゛け゛て゛…」

shake

「死んでなんかぁ~いませぇぇえん~~♪」

「(震えながらS)wwwwwwww」

声はどんどん遠退いていく

どうやら動けないと見た私はSにもうよくね?私ヤバイやつにこんな歌歌ってんだけどもうよくね?と目で訴えたがSはわからないから続けてよ、とまた恐怖の顔に戻った

逆に、上の声は一度も笑ってない

これは本物か?

「せんのかぁぁ~ぜぇえ~にぃぃ~♪」

「た…すけ……」

「朝にはぁ~とぉ~りになあって~あなたを~♪」

「……す、け」

あともう少し!

最後の段の頃にはもう声は聞こえなかった

Sも頑張れ、と目で送ってくる

「うきわたあってぇ~い~まぁ~すぅ~♪」

「………」

残り二段をSと蹴飛ばしてわぁーー!と一目散に玄関へダッシュした

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「はぁ、はぁ…K、よかったね、なんもなかったじゃん」

「冗談じゃねぇ、なんだよあれ…ユーレイか?」

「でもユーレイが午後の5時からたすけてコールする?」

二人でゼーハーゼーハーしていると、横から居残り組が来た

居残り組は私たちの異常な震えに驚いた

「あれ?Kまだいたの?」

「いたもなにも、あ!あの声聞いてないか?大丈夫だったか?」

「声って?」

「お前ら今a階段使用しただろ?聞こえなかったのか?」

「KとSだけだよ、a階段使ったの」

「じゃぁb階段では声が聞こえなかったのか?」

「ねぇ声ってなに?」

「本当にお前らa使ってないよな?」

「使うもなにも、私たちは先生とbできたんだよ?」

私はその言葉を聞くと、そうか、と言って

Sの手を引いて学校を出た

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帰り道、Sはもう震えていなかった

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「Kよかったね、ユーレイに会えて」

「冗談じゃない、私は妖怪に会いたいんだ」

「でも同じじゃん、それにKは歌まで歌ったんだよ」

「それのせいで憑かれたらどうすんだよ『自称妖怪博士、幽霊に憑かれる』とか」

Sは笑って、別れ道で手を降って家路へと足を向けた

Sは恐らく本当に恐かったんだろうけど

今思えば私が一番怖かった

後日、先生たちに真相を聞いたが、矢張り「知らない」しか返ってこず

結局あの怪は分からずじまいだった

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ここに書いたのは実話ですが、まだあの校舎は残っています

今は新しく隣に新校舎が建っています

それにその後輩にも会いましたがその子も知らないらしいです

いったい何を聞いたんでしょうか

念のため下の階ですが、体育館でのその時間帯も調べてみましたが、その日はバレーボールだったので何にもありませんでした

勿論、5Fは閉鎖されていました

みなさん、くれぐれもお気をつけください

歌もほどほどに、ではまた

Concrete
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