妙に頭にこびり付く昭和の事件

中編4
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妙に頭にこびり付く昭和の事件

昭和の頃に実際あった不気味な事件。

平成になり三十年過ぎた今も、妙に頭にこびり付いている。

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─結局、あれは何だったんだろう?

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 ご存じの方もおられるかもしれない。

それは昭和天皇が崩御され、公務員らは皆、喪に服すとかで、特別休暇になっていた頃の凍てつくような寒さの二月に起こった。

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 福島県のとある村にある小学校で、教員をしていた二十代の女性は、件の特別休暇の後、久しぶりに登校し授業を行い、夕方、学校をあとにした。

連日、寒い日が続いていたのだが、その日は特に寒く、午後からは、パラパラと粉雪が舞ってきていて、外を歩くと耳が痛くなるほどだった。

彼女は学校近くの職員専用の社宅に住んでおり、その日もいつも通り、そこに帰宅した。

社宅といっても連棟の平屋建ての一室で、六畳程度の広さの畳敷きの和室一間だ。

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 部屋に入ると彼女は、用を足そうと、入口横にある便所に入る。

今となったら過去の遺物だろうが、便所というと当時はまだ、くみ取り式が一般的だった。

便器の蓋を開け何気なく中を見たとき、彼女は「おや?」と思った。一㍍ほど下の汚物溜まりに、男ものの靴がある。しかもその下には、人の頭らしきものが見える!

驚いた彼女は部屋を出て裏のくみ取り口に廻ると、何故か蓋が開いていて、中を覗くと、人の二本の足が見えた。

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 すぐ学校に連絡すると、何人かの教員が駆けつけてくれた。その後、地元の警察官や消防隊員が来て、便層内に入り込んだ男を、引きずり出そうとするのだが、中はかなり狭くU字になっており、とてもじゃないが、出来ない。

結局、地元の土建屋の重機で周囲を掘り返し、一部を破壊して、ようやく外にした。

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 遺体は真冬というのに上半身裸で、着ていた上着を胸に抱えて膝を折り、顔をやや左に傾けた形で固まっていた。

その場でホースで洗われ、さらに消防の詰め所で洗われ、警察により、死体検案に出された。

死因は「凍え兼胸部循環障害」と判定された。

狭い場所で圧迫され凍死してしまったという見解である。目立った外傷はなく、死後硬直の具合から、二月二十六日頃が死亡推定日とされた。警察の調査で、遺体の身元は現場から車で10分ほどの村内に住むSさん(26)だった。

警察はSさんが覗き目的で便槽内に侵入し、狭さで出れなくなって凍死したものと判断した。

事故死として警察に処理されたこの事件だが、村内では疑問を呈する声が囁かれた。

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 死亡したSさんは村に両親と祖母の4人暮らし。

スポーツと音楽が好きな好青年。高校時代は仲間とバンドを組んでギターを弾き、自ら作詞もして、作詞ノートを何冊も残している。

仕事は隣町の原発保守を行う会社で営業主任を勤めていて、村では青年会のレクリエーション担当部長として中心的存在。

明るく人望もあり、結婚式では司会をよく頼まれ、

村の村長選挙では応援演説を頼まれるほどの存在だったからだ。

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 そんなSさんが覗きをするために便槽に忍び込むとは考えられない、彼を知る誰もがそう話していた。村長選挙にからむどす黒い政争に巻き込まれ、正義感の強いSさんが見せしめのために殺されて、あのようなところに、無理やり入れ込まれたのではないか。などという噂なども起こったようだ。

しかし警察の見解は初期の通り、覗き目的のためにSさんが自ら便層内に侵入し、出られなくなり、寒さのため、凍え死んだ、ということだった。

ただ、それでも、まだ謎が残っていた。

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それは「靴」である。

Sさんの靴は、片方は、彼の顔の上に乗せられており、もう片方は、現場から離れた草むらから見つかったらしいのだ。

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 それともう一つ。

Sさんと、被害者の女性教員は顔見知りであり、

件の大喪の礼により、彼が便層内に忍び込んだという日は女性教員は里帰りをして、いないということは、Sさんも知っていたはずだからだ。

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 まあ、どのような事情があったにせよ、26歳のSさんが、女性教員の使用する便所の便層内に侵入していたのは、紛れもない事実である。

しかし、二月という極寒の気候の時に、汚物に体を浸かった状態で、便層内に数日間いたSさんの気持ちというのは、どんなものだったのだろうか?

また、当初の警察の見解の通りだとして、

スポーツと音楽が好きでバンドもやっている、明るい性格で人望もあるSさんの心の闇というのを考えると、そら恐ろしいものを感じる。

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皆さんは、どのように考えますでしょうか?

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