短編2
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川の淵

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地元の友人から聞いた話。

彼の曾祖父(以下、Aさん)は古座川町の生まれで、左官の仕事をしていたそうだ。

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今から80年ほど前の話。

Aさんは、仕事に使う土を取るため、小川という集落から山の奥へと一人で入っていったそうだ。

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山道をしばらく歩いていると、下を流れる川の方から、「ドボン」と何かが水に飛び込む音が聞こえた。

何だろうと思い山の斜面に上がって川を見下ろす。

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そこは白い大きな岩が川の方へせり出し、深い淵を作っていたが、その岩の上に奇怪な生き物がいた。

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子どもくらいの大きさで、全身真っ黒な毛に覆われている。

顔も長い毛に隠れており、Aさんのいる所からは、目鼻もはっきり分からなかった。

岩の上のそれはあまり動かなかったが、何となく四つ足だと思ったそうだ。

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岩の向こうの茂みや、水の中にも仲間がいるようで、時折キイキイと甲高い声が聞こえたという。

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Aさんは、しばらく木陰から様子を窺っていたが、向こうもこちらを見ているような気がして、だんだん心細くなり、

今日はもう山を下りよう、と思ったらしい。

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元来た山道を下っていると、後ろから何者かがついてくる気配を感じた。

足を速めて先を急いだが、人里近くまでずっと追いかけられ、生きた心地がしなかったそうだ。

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話を聞いた集落の人からは、猿か何かの見間違いだろうと言われた。

しかしAさんは、

「猿なんか何回も見たことある。間違うはずない。あれは今まで見たことない獣やった」

亡くなるまでそう主張していたそうだ。

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