中編4
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山じいとボロ

北千住の閉店後のラーメン屋、ボロの店

山じい、初見の客、ボロと麻雀を打っていた

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その日も山じいの勝ちが続いていた

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店内には俺たちの他、

ボロが自分の妹だという未成年の女が一人だけ

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山じいは若い頃、下手を打って左足の甲に

17本の釘を打たれたびっこひき

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汚い臭い、キモい、最悪な奴

遠の昔に世俗を離れたというけど

なあ無視され取り残されただけ

本当になあ、それだけだろう

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あまりの風貌をして

店の前に立たれると大変に困るから

ボロは山じいを店に入れた

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「ま、真っ赤、

真っ赤っ赤な帽子が北口に落ちてた」

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自分から山じいが話したのはその一言きり

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ただし必ず勝った

いくらやっても負け知らず

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なぜなら、牌を抜いてたから

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でもボロも俺も

そんなの嫌いじゃないからね

大人しく黙って見守った

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山じいが店を出て行こうとすると

ひっそり声でボロと話していた未成年が

山じいのリュックを持って

あたし、駅まで送っていくと一緒に店を出た

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結局、未成年は家まで山じいを送り

家の中まで入って存分に楽しませた後で

天国まで送ってやろうとしたとか

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おまえ余計なことしてねえだろうなあ

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そうは言うけど

ボロはなにも不貞が気に触ったわけじゃない

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ここで少々関係ない話

朝方家に戻って

俺は効きの強いネタを巻いて吸った

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それから俺は深い眠りの中の

入り口のやたら小さな映画館で山じいを見た

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山じいは俺の家のベランダにいて

歯も舌もないその中はただ真っ黒な口を

おーきく開けて俺のことを指差していた

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山じいは夜でもサングラスをかけていた

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こうしてバッドに入ることはよくあるが

大抵の場合俺は人間の目を覗き込み

眼球を観察することで夢か否か把握できた

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サングラスは邪魔だった

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しかし視線は確かに合った

俺がそれに気づいたあんじゃない

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俺は山じいの顔を見た

その瞬間山じいはこちらに視線をやると

今度はゆっくりと肘を曲げて

自分の顔を指差した

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その指を黒い口に入れ

さらに押し込むように手首まで入れ

ついに肘のあたりまでその闇に入れた

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悪夢はそのあたりで意識から去り

気が付くと俺は目を覚ましていて

テレビが朝のニュースを流していた

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ボロに髪の毛を鷲掴みにされ

涙をポロポロする未成年

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それで、どうだったのさ

俺は聞いた

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すごくいいところだったよ

本がたくさんあったし

テレビも大きかったし

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俺はあんまりどうでもいいことに

時間を使いたくなかったから

未成年の腹に一発入れてやろう

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そう思った時には

ボロの頭が未成年の鼻を潰す

鈍い音が店に低く響いていた

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鼻血をぼとぼと卓に落としながら

でも、あの人優しい人だよ

未成年は未成年らしい可愛い声を出した

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そんなの知ってるよ

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心の中で話したつもりが

つい心から口に

口から声になってしまった

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ボロは俺の方を見て

クスっと微笑むと

未成年の方を向き直して

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おまえ、もう帰り、と言った

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俺は店の冷蔵庫から

缶ビールを一本取り出し

未成年に、またねと言って

裏口から店を出た

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数日後、

ボロから連絡が入り店に行った

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鼻が曲がり

顔に大きな青たんを付けた未成年がいた

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それで

山じいはどうだったの

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可愛い鼻声で俺に喋ろうとする未成年を

払いのけるようにして

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本物だったよ、間違いなく

眼球の血管をビクつかせてボロが言った

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山じいが来た

初見の客が未成年に変わった

それ以外初日と変わらない状況で

この日も俺たちは麻雀に負けた

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未成年は山じいを家まで送った

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それからも

山じいは牌を抜いて俺たちに勝ち続け

未成年にそそのかされて

少しずつ勝って得る額も増えた

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俺たちはいい加減を見極めて

機が熟した頃、山じいに全てを賭けさせた

こちちは未成年を景品代に乗せた

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山じいは変わらず牌を抜いて

ボロも変わらず器用に牌を抜いた

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この店はアフターサービスもしっかりしてる

俺たちは山じいを家まで送り

そして彼の抱えた厄介な物を回収した

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未成年は山じいの死体に唾を吐くと

おじさんの残してくれた銃

17つもあるんでしょう

あたし一丁買いたいなと可愛らしい鼻声で言った

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どうするのと聞くと

未成年は内緒よと言った

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山じいを殺して

しばらく経ってボロが自殺した

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未成年はボロの死体の

第一発見者になれたことを

満足したように誇らしげに

俺に話して鼻水をすすっていた

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俺は全部知っていたが

ボロが死んだことは誤算というより

今回の件を処理の面倒な案件にした

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もちろん未成年は

ボロの妹なんかじゃないし

ボロも俺の友だちじゃあない

ボロに親はいなかったけど

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山じいはボロの本当の父親だった

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俺はその晩打ったやつで

ボロと山じいの墓前に

真っ赤な帽子を置く夢を見た

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未成年は手に入れた拳銃で

父親、母親の頭を撃ち抜いた

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拳銃から足がついて初見の客が捕まり

俺はそいつの家族に金を届けに

飛行機で北海道に飛んだ

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飛行機から降り

死んだ山じいの顔から外した

サングラスをかけようとしたが

ボロに悪いと思ったので

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空港のゴミ箱にそれを捨てた

Concrete
コメント怖い
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深山様
また宜しくお願いします

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深山様
お読み頂きありがとうございます

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