中編4
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しつこい女return

引っ越して二年目のこと

生まれ育った家から離れるには少々辛かった

小中9年間のいじめで友達はほぼいなかったが

やはり自分の部屋は恋しかった

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引っ越した先は大都会で、人生が変わった

高校生になってから、初めて友達を作った

誰も自分の過去を知らない、不思議な感覚でパリピライフを過ごしていた

あまりにも変わりすぎて、あんなことも忘れていた

そう、あの日までは

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高校二年になったある日

ふと、前の家に服を忘れてきたことに気づいた

(前の家に戻ってみるか…)

私のあとは誰も入っていないから

きっとまだあるはず、と管理人に連絡を取り

懐かしい町並みを電車の窓から眺めて向かった

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「ただいま」

おかえりのない、誰もいない家に戻った

白いドアを開けると、黴臭い臭いがした

久しぶりに嗅いだ臭いだ

(確か、タンスに入れたはずだ)

タンスの二段目に、その服は入っていた

服は丁重にたたまれていた

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(あれ、、、なんか、眠い)

間抜けなことに、私は気がつくと天井を見ていた

目がぼやけてきて、脳が眠りに誘われた

昨日はしっかり寝たはずだが

(なんで、、、)

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shake

_____ガンッ!

(え、なんの音?)

金属製の音に体を起こそうとする

しかし、体が、動かなくなった

まさか……金縛りか?

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shake

「…やっとあえた……あえたあえたあえたあえたあえたあえたあえたあえたあえたあえたあえたあえたあえたあえたあえたあえたあえたあえたあえたあえたあえたあえたあえたあえたあえたあえたあえたあえたあえたあえたあえたあえたあえたあえた」

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全身に悪寒が走り、汗がわっと吹き出す

そんな馬鹿な、なんでまだこいつがいるんだ

二年もたっているじゃないか!

なんで…

二年前、薬漬けになった私にまな板胸を押し付けたあの女が、今私の両腕を強く掴んでいる

(夢じゃないのか?)

私はそのとき、もう頭痛は治まっていて薬は殆ど服用していなかった

しかし、女は今、目の前に間違いなくいる

(死ぬのか、これは死ぬのか?)

重みが以前よりはるかに重い

比べ物にならないくらい重い

とても30kgしかないような女がその2、3倍の岩のようにただ重い

(やめろ…いやだ、やめろ……)

必死に抵抗しようと体に力をいれる

しかし、例の如く口も目も動かない

shake

「…んふ、……ふふふっ」

笑い声なのか泣き声なのか分からないが女が耳元で声を出している

また例のごとく、何を言ってるのか分からない

(黄金期に幽霊に抱かれて死んでたまるか…)

私は次第にイライラしてきた

口を必死に動かそうとすると、手首を掴む細い手はちぎれそうになるほど女が締めつけてくる

10本の爪が食い込むような痛みに涙が出そうになる

一秒一秒、死が近づいてくるような感覚だ

叫びたいが、その声すら出ない

shake

「……あえたね、うん、あえたあえたあえた」

耳元で囁く声は私の死へのカウントダウンのようだ

(もう我慢できん!)

私は一度呼吸を止めて、全身の力を振り絞った

shake

「失せろ」

shake

「アァアアァア゛アアァァア゛アアァアアァアアァア゛アアァァアアアァア」

女の絶叫が響く中、私の意識は消えてしまった

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夢を見た

ぼやけた二人の男女がいた

二人がいる部屋は私の家ではなかった

女は白いワンピースを着ており、男と笑顔で話していた

「………」

男の一言で、女の顔は一瞬で変わった

戸惑いの表情が次第に崩れ、口元の細い筋肉がひきつりだした

「別れるって、どういうこと…」

「ごめん、一緒になれない…」

「嫌よ、別れるなんて…」

女が号泣しながら男にしがみつく

男は、ごめん、と何度も言っている

「許さない…私をこんな目に合わせて…」

女の顔が崩れ、憎しみの色に変わっていく

「…なんか、許さない……許さない」

鬼女のような眼差しで男を見つめると

男は何も言わず出ていった

残された女の手には、包丁が握られる

その銀色の包丁に歪んだ女の異様な顔が映る

包丁の中の女が呟く

「ゆるさない…ゆるさない…ゆるさない……」

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はっと、そこで目が覚めた

気がつくと、夕方になっており、西陽が差し込んでいた

なんだ…なんだったんだ、あの夢は

仮に全て夢でも、一刻も早くこの部屋を脱け出さなければ

「早く帰らないと…」

服をバッグにしまおうとタンスを引いた

「…うげっ」

畳んでいたはずのそれは、ぐちゃぐちゃになっていた

タンスの中に入っていたのに…何故?

「…もう二度と来ない」

そう言って、部屋の真っ白なドアを勢いよく閉めた

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これが人生で二番目に怖かった話

実は、あの『ゆるさない』は私ではなく他の人であったのだ

それを考えると少し安心した

本当に少しだけだが

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余談だが、前の家の後ろには有名な神社があり

そこは長寿、学業が専門だが

数十年前は夕方にも構わず神社の大木にカーン、カーンと打ち付ける白装束の女の噂があった

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この話は、これで終わりだが

それから私が´何か´を好きになると

人なら怪我をし、店なら閉店する

私はあの女に呪われたのだろうか

時々、電車で私の後ろが見える人には見えるのか

二度見されるのが、怖い

Concrete
コメント怖い
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