長編21
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《再》ブリーダー

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『え~…と…

オスが十匹、メスが二匹ですね?色は?

あ~はいはい。

オス白が三匹のぉ…オス黒が一匹。

残りはミックスですね?

メスは、どちらもミックスで。

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了解でえ~す!

あ~はいはい。

輸送はいつも通り船舶になるんすけど、ちょっと数が多いんで、付き添いを2人行かせますから、別途人件費もかかりますが、宜しいっすか?

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はあ~い!

毎度ですう。

それじゃ、準備が出来次第、ご連絡しますね~』

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タケルは、隣国からの注文の電話を切った。

ブリーダーを始めて一年で、今は月収で数千万円を超える月もある程、大繁盛している。

ホームレスと大差ない生活をしていた頃とは雲泥の差だ。

タケルはほくそ笑み、発送の準備を始めた。

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隣国着の船で送るのだが、生き物である以上、餌を与えたり排泄の世話もある。

今回はオス、メス併せて十二匹になる。

万が一死着になれば信用にも関わり、第一、儲けが減る。

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大した元手もかかっていないのに、高額の個体になると、一体で百万を超えるものもあるのだ。

濡れ手に粟とは、まさにこの事だ。

しかも、需要は限りなくあるのだから。

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タケルは、カレンダーに書き込んである船の運航を調べてから、いつもの輸送担当のケンイチにLINEを送る。

今回の輸送の数と、日付と時間を知らせ、ケンイチの相棒のジュンにも連絡する様にと…。

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タケルは元来、努力と言うものをした事がなかった。

飽きっぽい性格故に、高校も途中で中退し、それからは決まった職にも就かず、片親だけで育ててくれた母を悩ますニートに成り下がっていた。

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そんなタケルに業を煮やした母は、タケルを家から追い出した。

父の遺した物を切り崩してタケルに手渡すと、母は二度と敷居を跨ぐな!と…タケルを放り出したのだ。

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タケルはその金で、市内のワンルームマンションの一部屋を借り、憧れていた一人暮らしを始めた。

母に小言を言われる事なく、寝たい時に寝て、食べたい時に食べ、好きなゲームを何時間やっていても文句も言われない生活は、自由で、とても楽しかった。

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だが、一か月も経たないうちに、お腹が空いても自分で用意しなくてはいけない事や、あっという間に溜まる洗濯物や流しに溜まった食器、すでにゴミ屋敷と化した部屋にも、うんざりしてしまった。

そして、今まで無限に使えると思っていたお金も、使えば使っただけ減ると言う事も、20歳を過ぎて、やっと気付いたのだ。

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アルバイトをしようと、コンビニに置いてある無料の求人誌を数冊もらって来たが、どこもタケルの理想の時給を得られる場所もなく、日払いで日給をもらえる、チラシをポストに入れるだけのポスティングのバイトを何回かやっただけだった。

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母から渡されたお金もそろそろ底を尽き始めた頃、母にSOSの電話をしたが、けんもほろろに無言で電話を切られてしまった。

そのうち、いよいよ支払いも滞り、電気も水道もガスさえも止められてしまった。

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唯一の命綱とも言える携帯電話も、料金滞納で使えなくなってしまい、もう…どうしようもなくなってしまった。

そんな時、以前ポストに入っていた闇金らしきチラシをゴミ溜めの部屋の中から見付け、僅かな小銭を握り締めると駅前の公衆電話に行き、チラシに記載された番号へかけてみた。

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そして、向こうに指定された時間に事務所を訪ねると、明らかに真っ当な金貸しではないと分かったが、タケルには他に頼る術がなかった。

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最初は僅か数万円を借りただけだったが、半月も経たないうちに、借りた金額の倍以上の返済を迫られる事となり、母の元へも取り立てに行った様だが、母は頑として支払う事はなかったそうだ…。

いつしかタケルは、闇金で働く様になっていた。

取立ては勿論、ヤバい仕事も選択の余地など許される事なくやらされた。

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そこは…闇金の他に、金さえ出せば、バレる事なく遺体を処理してくれる…

そんな仕事も請負っていたのだ。

家族が行方不明になったと捜索願を出しても見付からない。

そんな事案の時は、タケルの様な人間が人知れず《処理》をしている事も少なからずあるのだ。

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休みなんて決まっていない上に、呼び出されれば何時だろうと直ぐに駆け付けなくてはならない。

タケルと一緒に作業をしていたのが、今のブリーダーの仕事の輸送係りのケンイチだった。

聞くと、タケルと同じ様に借金をした事から暫くは無償で働かされ、今はタケル同様、どんな《処理》にも感情が動かされる事なく仕事をこなす事が出来る様になっていた。

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タケルと境遇が似ていたからか

それとも、どちらも真っ当な人生に興味がなかったからか…

タケルとケンイチは気が合い、仕事の時以外の時間も共に過ごす事が多かった。

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ある日、ケンイチの部屋で飲んでいると、いつもの《処理》の仕事で呼び出された。

飲酒運転だが、捕まらなければどーって事ないと、タケルは助手席にケンイチを乗せるとハンドルを握り、指定された現場へ急いだ。 

今回の依頼者は酒を飲んだ帰り、街灯もあまりない暗い道を横断していた女性を轢き殺してしまったと言う。

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運転手はガタガタ震え、上司から告げられた金額の入った封筒をタケルに手渡すと、深々と頭を下げた。

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タケルはその封筒をジャケットの内ポケットに入れると、ケンイチと共に、先ず、事故を起こした現場に行く。

明るくなる前に事故の証拠を消さなくてはならない為、常時車に入れてあるデッキブラシとポリタンクに入れた水で血の跡を洗い流し、車の部品や欠片を集めると持っていたビニール袋に拾い集める。

それらの作業が終わると今度は、毛布に包まれた遺体を埋めるべく、山へ車を走らせた。

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トラック等も裏道で使わない山の細い道路を進み、僅かばかりの待避所で車を停めると、ケンイチと二人、頭の方、足の方と持ち、毛布に包まれた遺体を杉の木の生えた、背の高い雑草が生い茂る辺りまで運び降ろすと、今度はスコップを二本車から持って来て穴を掘る。

女の身体が入る程の大きさの、深さ1メートルちょっとの穴を掘ると、中に遺体を放り入れた。

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『どんな顔してんのか、見てみようぜ』とケンイチは言うと、顔の部分の毛布を剥ぎ取った。

頭は陥没しているが、綺麗な女だった。

『もったいねぇ~!

こんな女なら、生きてるうちに出会いたかったよなぁ~』

ケンイチは調子に乗り、包んでいた毛布を全部剥ぎ取ると、今度は女の服を破り始めた。

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『ちょっ…ケンイチ!やめろよ!』

いくら綺麗な女だとしても、死んだ女に触れるなんて、タケルは真っ平御免だ。

『なんだよタケル。

お前、ビビってんのか?』

ケンイチは死んだ女の乳房を揉みしたきながら、声を上げて笑う。

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確かに綺麗な女だった。

モデルの様に手足が長く、スタイルも抜群で…

首元と耳たぶに着けている物も、おそらく本物のダイヤモンドなのだろう。

タケルやケンイチのいつも行くような安っぽい店ではなく、ボスや上司が行くような高級な酒場で働く女なのではないか?

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タケルも暫し見惚れていたが、日が昇る前には片付けなくてはならない。

『ケンイチ!いつまで乳揉んでんだよッ!!

とっとと片付けんぞ!!』

そう言うと、女の上に馬乗りになり、両手で女の身体を弄んでいるケンイチの背中に土をかけた。

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ケンイチは渋々穴から出ると、女に向かって土をかけていく。

少しこんもりとなるくらいに埋めると、タケルとケンイチは土を固めるように両足で遺体に被せた土を踏んだ。

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それからは…

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激動の一年だった。

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闇金の方の仕事がバレ、ボスも上司たちも警察に捕まった。

タケルとケンイチも連日の取調べは有ったが、元々は債務者で、返済の為に無理矢理働かされていたと言う事で起訴猶予となった。

闇金の仕事以外の《処理》の方は、誰もが口をつぐんでいたのでバレる事はなかった。

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証拠になる物もなければ、警察でさえ、そんな仕事まで請負っている事は知らずにいたのが幸いした。

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だが、タケルは又々仕事を失ってしまった。

ボスも上司たちも居なくなり、コネもツテもなく、自力で仕事を探さなくてはならないのだが、元々の性格もあり、世の中を舐め腐っているので仕事も決まらない。

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それでも最初はネカフェで眠る事が出来たのだが、その金も尽きると公園のベンチで眠るようになった。

その頃にタケルはケンイチと別れた。

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公園内の他のホームレスの段ボールハウスの近くに、同じような段ボールハウスを作り、安堵したのも束の間、公園中のホームレスに囲まれ、段ボールハウスは壊され、タケルも袋叩きに遭った。

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どうやら、ホームレスの世界でも縄張りと言うものがある様だ。

タケルは仕方なく、車検の切れた車に乗り、そこで生活をする様になった。

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そして…ふと、あの日の女を思い出したのだ。

あの、綺麗な顔立ちの女を…。

女と一緒に埋めたピアスとネックレスが本物のダイヤモンドなら、売れるのではないか?

タケルは逸る気持ちを押し殺し、夜になるまで待った。

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人も車も通らない深夜になると、僅かばかりのガソリンが残った車で山道を上り、いつかの待避所に車を停めるとスコップを取り出し、杉の木林の中の背の高い雑草をかき分けて入って行った。

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懐中電灯は少しこんもりと土の盛リ上がった場所を照らす。

腐敗した女を見るのは怖いが、それよりも… 

あの女が着けていたダイヤモンドが、今はとてつもない魅力だった。

タケルは女が埋まっているであろう場所の土を、スコップを使い掘って行く。

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万が一にも遺体に突き刺さる事のないように、慎重に掘り進んだ。

なぜかと言うと、やはり、罰当たりな事をしている罪悪感も心の奥底にはある。

そして、何より…

腐乱遺体に出来るなら触れたくはないと言う、勝手な思いからだった。

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掘り初めて数分で、何か柔らかい物がスコップの側面に触れた気がした。

未だ50センチも掘っていないのに…

女を埋めた時は真っ暗闇の中だったから、思ったよりも浅い穴だったのかもしれない。

タケルは、今度は先ほどより慎重に、土を掘っていた。

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その時、どこからともなく声が聞こえた気がした。

タケルは辺りを見回したが、こんな真夜中に、こんな場所に、タケル以外の者がいるとは思えない。

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だが、何者かの気配はある。

鳥肌が立つような、毛穴がプツプツとなるような感覚で、思わずゾゾッと身震いをした。

そして、声の出処を耳を澄まし、聞いてみる。

すると、足元の土動いた。

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タケルはビックリして飛び上がった。

女の遺体を何かの獣が食べているのか?

それとも、大きな虫でもいるのか?

タケルは懐中電灯で先ほどまで立っていた辺りを照らした。

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すると…

ポコポコと微かに音を立て、土から何かが顔を出す。

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『んん〜…んぎゃぁ〜』

それは顔を出すと、一段と大きな鳴き声を上げた。

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タケルは開いた口を塞ぐのも忘れ、暫しの間赤ん坊を見つめていると、泣いている赤ん坊の声にハモるように声が聞こえる。

笑っているような声も聞こえる。

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タケルはパニクった。

『な…何が起きたんだ!?』

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暫らく唖然と泣いている赤ん坊を見つめていると、その近くの土がポコポコと盛り上がって来る。

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そして、最初の赤ん坊を囲むように、あちこちから赤ん坊が顔を出した。

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『ギ…ギャーーッ!』

タケルは悲鳴を上げながらその場から逃げようとすると、掘った穴から積み上げた土に躓き、その場で仰向けに倒れこみ、そのはずみで後頭部を石でぶつけてしまった。

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.…

どのくらいの間そうしていたのか…

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後頭部酷く痛む…

そして、何かがモゾモゾと頬の皮膚の上で蠢いている嫌な感覚がある。

タケルは倒れた時と同じ、仰向けの姿勢のままで目を開けると視線を自分の頬へ滑らす。

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『うおッ!!』

頬には赤黒い大きなムカデが右目のすぐ下でモゾモゾと蠢いていた。

タケルは慌てて立ち上がると、ムカデが這っていた辺りの頬を何度も摩った。

痛みもなく腫れもないところをみると、噛まれたりはしていないようだ…

足元にはムカデの姿が見えず、どこか遠くに飛ばされたのか?

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気持ちは悪いものの、被害には遭わずに済んだ事でホッと一安心……

をしたいところだか、タケルの目の前には不可思議な現実があった。

赤ん坊は、ひとつ…ふたつ…みっつ…よっつ…いつつ…むっつ…

……

全部で6人の赤ん坊が、皆、ほんのり朝の気配の漂う靄の中で、土から頭を出して寝ている。

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……

………

タケルはダイヤモンドは諦め、赤ん坊達を起こす事なく、そっと振り返ると…車に向かって歩き始め……

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『んん…むん…』

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変な声が聞こえ、タケルがそっと背後へ首だけを向けると、中の一人の赤ん坊が口をへの字にし、タケルを見つめて今にも泣き出しそうな顔をしている。

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ヤバッ!!!!!

タケルは動くに動けなくなり、赤ん坊達に背を向けたまま、次の一歩を出せずに止まった。

『むむむ……ん……

んぎゃーーー!!』

赤ん坊の一人が泣き出すと、他の赤ん坊達までも一斉に泣き出す。

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タケルはオロオロしながら、赤ん坊達の元へ駆け寄り、激しく泣いている一人を抱き上げようとしたのだが、土の中から紐状の物が付いていて、抱き上げる事が出来ない。

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仕方なく、地面に腹這いになる形で、赤ん坊達を両手で抱くようにしながら頭を撫でた。

そのうち、赤ん坊達はニッコリ笑顔になり、キャッキャと笑い声を上げる。

アヒルやカモでも有名な話だが、卵から孵ったばかりの雛が、初めて見る者を親と勘違いしてしまう、インプリンティングと言うものか…

明らかにタケルを親と勘違いしているようだ。

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赤ん坊達を手にかける訳にも行かず、このまま放置すれば…野生の獣の餌食になってしまう。

その前に、女の遺体がバレてしまう。

タケルは仕方なく、スコップは使わず、両手で土をかき、赤ん坊達から生えている紐状の物を取るために掘った。

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早くしないと、誰かが来てしまう。

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やがて、女を包んでいた毛布の端が土から現れた。

毛布を引っ張るようにしながらもっと掘り進むと、ケンイチが破り捨てた服の切れ端が出て来る。

心配していた腐敗臭はなく、どこからかほんのり甘い香りが漂っている。

そして、暫くすると女が姿を現した。

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女は…まるで老婆のように…

イヤ、老婆と言うより、ピラミッドから発掘されたミイラのように、カスカスに干からびていた。

美しかった顔はシワシワになり、歯だけがやたら大きく見える。

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タケルは、女の身体にかぶった土を除けた。

赤ん坊は、女の身体の四方から、へその緒状の紐で繋がっている。

そして、女の身体のあちこちから、オレンジ色の、あまり綺麗ではない花が咲いていた。

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タケルはポケットに無造作に突っ込んでいる十得ナイフを出すと、女の身体から生えた紐状のへその緒のような物を一つずつ切り、濁った血が流れるそれをこま結びにして行く。

一人一人、順番に作業を続け、6人全員を土の上に並べた。

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そして、女の首のネックレスと耳たぶを飾るピアスを外すと、胸ポケットにしまった。

女の身体に咲いている花も、目の前の三個ほどを毟り取り、ポケットにしまうと、最初よりもかなり雑に女の身体に土をかぶせ埋めた。

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赤ん坊を連れて、取り敢えずはいつもの駐車場に戻ると赤ん坊達を置いて、その足で近くの公園の水道でネックレスとピアスに着いた泥を洗い流した。

そのまま質屋に持って行き、鑑定をしてもらうと、プラチナ台の本物のダイヤモンドで、人気のブランドの数量限定商品だと言う。

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思った以上の査定額にタケルは飛び付いて即売した。

帰りにドラッグストアに寄り、赤ん坊に必要な物を店員に聞きつつ購入し、自分の朝食用の弁当を買いにコンビニに寄った際、こっそりとお湯の入ったポットをパクって来た。

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オムツやらミルクやら哺乳瓶やらポットやらの大荷物を抱えて車に戻ると、赤ん坊達は泣いていたのに、目に涙の粒を溜めながら、タケルの顔を見ると一斉にニッコリと笑った。

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赤ん坊達全員にミルクを飲ませ、オムツ交換も甲斐甲斐しくしていたタケルだったが、三日坊主とはよく言ったもので、3日目には元来の飽きっぽい性格が顔を出し、赤ん坊達の世話をするのにも飽き飽きしてしまった。

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警察に連れて行くなんて、先ず出来ない。

何かの事件を疑われるのが関の山だ。

病院捨てに行くと言っても、これだけの人数の赤ん坊をなんて…

簡単には行かない。

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どこかに捨てると言っても、今の時代、防犯カメラのない場所を探すのも一苦労だ。

それこそ防犯カメラもない場所になんて、捨てて来れる訳がない。

死んでしまったりしたら…

タケルは無い知恵を絞り、考えた。

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使えない携帯を出し、誰かアドバイスをしてくれるような人物はいないか…アドレスのア行から見て行く。

すると、すぐに見付かった!!

!!

《ウェイさん》なら…!!

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ウェイさんは隣国の人だが、闇金のボスとも親交があり、何度かウェイさんとの飲みの時、ボスにケンイチと共に連れて行ってもらった事も有った。

日本にも事務所を構えている。

そして、酒を飲んで饒舌になったウェイさんから聞いた話をタケル思い出していた。

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『ワタシの国では人口が多いから、子供も自由に産めないね。

後継の男の子が生まれないと、男の子、買う人多いね。

男の子、攫って来て売るのが手っ取り早いが、最近は国の警察もうるさくて、簡単に金にならないのが困るよ。』

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確かにウェイさんはそう言っていた。

タケルは早速、小銭を掴むと公衆電話に向かった。

携帯に残された番号を見ながら、公衆電話で番号を押す。

ワンコールで男が出た。

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『はい。◯◯興業です。』

渋い男の声で、一瞬怯んだが…

『もしもし。自分は以前…』と、闇金のボスの名前を出し、そこで働いていたと話すと、赤ん坊の事を直球で打診した。

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相手は暫く黙り込むと、ウェイさんに話し、折り返し電話をすると言う。

だが、タケルの携帯は滞納しているので使えない。

そう話すと、取り敢えず…と、タケルの口座番号を聞いて来たので教えた。

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僅か数秒後、入金したからそれで滞納分を払えと。

すぐ様銀行のATMに行くと、何と…100万もの入金があった。

タケルはその中の半分ほどを下ろすと、携帯会社に行き、滞納分を支払った。

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その日の夜にウェイさんから直接タケルの元へ電話が入ったので、6人の赤ん坊の事を話した。

『男の子が4人、女の子が2人なんすけど…』と話すと、ウェイさんは含み笑いをしながら

『全部もらうよ。

男の子も女の子も。全部』と言う。

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女の子だけを残されても困るので、タケルにしたらラッキーな事だが

『女の子も売れるんすか?』

ウェイさんに尋ねた。

『女の子は女の子で需要があるからね。』何かを含んだ言い方に、タケルは少し動揺したが…

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……

金のため…

……

そう割り切って、赤ん坊を全て引き取ってもらう事に了承した。

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赤ん坊はどの子もあの女と顔立ちがそっくりで、男の子も女の子も美形だった。

ウェイさんから指定された、日本海の港から出航する船に乗り、コンテナの一つに赤ん坊達と乗り込むと、タケルはパスポートも持たずに隣国へ行った。

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赤ん坊達はこれからの人生も知らず、可愛い笑顔でタケルを見る。

……

タケルは罪悪感に打ちひしがれた。

……

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だが、隣国の港に到着し、ウェイさんの使いの者に現金を手渡されると、胸を締め付けられるような罪悪感は海の泡と消えて行った。

タケルはそのまま隣国の地を踏む事なく、来た時と同じ船で帰路に着いた。

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ウェイさんから渡された金額は、何と500万円だった。

最初に振込まれた100万円と併せると、1人が100万で売れた計算になる。

タケルは、その金でワンルームマンションの一部屋を借りた。

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その日もスロットで遊んだ帰り、夕飯代わりに一杯ひっかけて家に帰った。

ローベッドに横になり、テレビを観ていると、部屋の中からガサガサと音がする。

タケルの大の苦手のゴキブリか!?

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タケルは枕元に有ったエロ本を丸めると、音の出処を探した。

耳をすますと壁に掛けてあるジャケットの方から音が聞こえる。

タケルは腕を上げ、ヤツを叩ける姿勢を取り、ハンガーに掛けてあるジャケットをめくった。

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だが、そこにヤツは居なかった。

代わりに、掴んでいるジャケットの裾の方が蠢いている!

タケルは悲鳴と共に、ジャケットを放り投げた。

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…………

ガサガサ

…………

ジャケットの右のポケットが蠢き、中から姿を現したのは、なんとも言えない奇妙な生き物だった。

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身体の四方から小さな分身を生やし、カサカサに干からびたムカデだった。

身体から、あの…オレンジ色の花を咲かせている。

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微かな甘い芳香が、あの夜の、あの赤ん坊達との出会いを思い出させた。

タケルは、そこらに転がっているコンビニ弁当の空き容器に突っ込まれたままの割り箸を取ると、これもそこらに転がっていた芋焼酎の空き瓶にムカデを入れた。

逃げ出さないように、瓶の口をラップを二重にして塞ぎ、爪楊枝でちいさな穴を開けると、ムカデを観察した。

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……

多分、あの夜、タケルの顔を這っていたムカデなのだろう。

あの赤ん坊達と同じく、へその緒状の物でムカデの本体と繋がる小さなムカデが、これは10匹もくっ付いている。

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そして…身体から咲く花。

これは何か?

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タケルは赤ん坊達を連れて来る時に、女の身体から咲いたこの花を摘むと、ポケットに入れた。

たまたまポケットに入り込んだムカデに、この花が寄生したのだろうか?

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確か…

もう二つほど、ポケットに花が入っている筈だ。

タケルはジャケットのポケットを明かりの下で見、虫が入っていない事を確認すると中の花を取り出した。

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花は多少萎れている物の、まだ枯れ切ってはいない。

コップに水を入れ、その中に花を入れた。

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次の日、タケルは人生で初めての図書館に来ていた。

花の図鑑を机に並べ、片手に持った花と比較して行く。

そして、その花の名前が分かったのは、図書館に来てから半日も経ってからだった。

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名前は【ハカラメ】。

葉から芽。

又の名を、【マザーリーフ】と呼ぶそうだ。

名前の通り、一枚の摘み取った葉の四方から新たに葉を付ける植物だそうだ。

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正式名称は、【セイロンベンケイソウ】と言う。

そんな葉が、何故人に寄生して、本人そっくりの子供を作るのか…?

タケルの頭では何が何だか分からなかったが、ただ一つ、タケルが分かった事は…

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これを元に、金儲けが出来る!!

と、言う事だった。

だが、簡単には遺体は手に入らない。

先ずは第一歩で躓いてしまった。

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タケルは自宅に戻るとウェイさんに電話をしてお願いをした。

『前の《処理》の仕事が有ったら、是非回して下さい!』と…

ウェイさんは上機嫌でタケルに

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『あ〜、あの仕事ね。大丈夫。あるよ。

それじゃ、これからタケルに回すよ。

それと、この前の子達はアッと言う間に売れたよ。

綺麗な顔してるし人懐こいし、なかなか評判良かったよ。

未だ有るなら、もっと買い取りたいんだけど。有るか?』

二つ返事をくれた後、ウェイさんはそう聞いて来た。

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タケルは自信を持って

『今は在庫切れっすけど、そろそろ次のを仕込もうと思ってます!

出来次第、すぐにウェイさんにご連絡します!』

そう宣言して電話を切った。

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《処理》の仕事は一人では難しい。

なので、タケルは以前の闇金で一緒に仕事をしていたケンイチに電話をかけた。

ケンイチも相変わらずで、毎日パチンコやスロットに明け暮れてその日暮らしをしていると言う。

そして、《処理》の仕事だけを持ちかけると、ケンイチは喜んでノッテ来た。

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ウェイさんの《処理》依頼が何度か入り、その報酬の半分はウェイさんに。

残り半分をケンイチとで分けた。

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だが、思うような遺体に出会う事が出来ない。

タケルは自分の手を汚すのは嫌だったが、ケンイチに全てを打ち明け、協力をしてくれるように頼んだ。

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とにかく外見重視で、綺麗な人、ハーフの人、外人など、条件の合う人を拉致し、この仕事の為に借りた山に有る小屋に連れて来ると監禁し、両手足を手錠で動かせないようにすると、その身体の、心臓部分に穴を開け、花を植えた。

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数日経つと、花は身体に根を張る。

一週間も経つ頃には、身体のあちらこちらの皮膚が小さく盛り上がって来る。

その頃には養分を吸収されてしまうからか、母体も少し萎びて来るようだ。

やがて、盛り上がった皮膚は人の形になって来る。

モゾモゾと動いたり、両手足を伸ばして伸びをするような仕草をするようになる。

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タケルは、小学生が使う絵日記が書ける◯ャポニカ学習帳に、毎日の成長の過程を描いた。

そして、3週間ほど経つと、母体はすっかり萎み、ミイラのようになってしまったが、未だ生きているようだ。

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4週間も経つと、母体はもう動かず、身体から生えた赤ん坊は可愛らしく笑ったり泣いたりするようになった。

タケルは母体から咲いた花を全部摘み取ると、次の犠牲者になる母体へ次々と植えて行く。

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ウェイさんからは順調に注文が入り、タケルのブリーダーとしての知名度も、裏の社会では少しずつ知られるところとなった。

最近では、国内の裏社会からの注文も来るようになった。

隣国とは違い、臓器提供者としての需要も多くなっている。

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タケルは、あくせく働くサラリーマンを鼻で笑い、自分が人生の成功者だと勘違いしていた。

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その日タケルは、つい先日籍を入れたばかりの、美しい妻の手料理を食べ、都心の一等地に建てた家で美味しいワインを飲んでいた。

妻のお腹にはタケルの分身とも言える子供がスクスクと育っている。

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タケルは幸せの絶頂にいた。

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『あなた

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…』

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妻がタケルの手からそっとワイングラスを取り上げ、ニッコリと笑いながら タケルに呟く…

タケルの意識は、妻のくちびるの動きを最後まで見る事なく途切れた。

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タケルが目を覚ました場所は、山に有るいつもの小屋の中だった。

両手足が手錠で繋がれている。

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そして…

………

そして……

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……

タケルの身体の真ん中には、あの花が咲いていた。

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叫びたいが、口には猿ぐつわが嵌められ、ヨダレがダラダラと流れるだけで、大声を出す事が出来ない。

暫くの間、タケルは繋がれた手足をバタつかせて暴れたが、誰も助けに来ない事を悟った。

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タケルの隣には、ミイラのように萎んだ女が身体から赤ん坊を生やして横たわっている。

足元の女も同じように身体のあちらこちらをボゴボコと隆起させ、声にならない声を上げて泣いている。

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自分も同じ運命を辿るのか…

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だが、何故妻が?

……

これから子供を産み、幸せな家庭を育んで行く筈だったのに…

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それなのに、何故妻は…

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すると、小屋の扉が開き、誰かが入って来た。

『タケル!悪いなぁ〜!』

その声は……

ケンイチ!?

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余り効かなくなった視界で声のする方を見る。

『ふふふッ♫』

妻も一緒か!?

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『お前さぁ〜

汚い仕事や面倒な仕事は全部オレにやらせるくせに、そんで取り分はお前が八割でオレが二割って…

バカにしてんだろ?

やってらんねぇ〜よなぁ〜』

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ケンイチはタケルの顔を見下ろし、ニヤニヤ笑ってやがる。

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『タケル〜!ゴメンねぇ!

アタシさぁ、ケンイチの方がタケルより好きだったんだよねぇ。

だから、お腹の子もタケル!

アンタの子じゃないんだ!

ケンイチの子なんだよねぇ〜

ふふッ』

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この…くそアマ〜…

俺を騙してやがったのか!?

タケルは猿ぐつわを嵌められた口で、思い切り二人を罵った。

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『何が言いたいのか分かんない♫』

妻は笑い転げ、そんな妻の肩を抱き、2人は小屋を出て行った。

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wallpaper:4828

暫くすると、ケンイチと共に輸送係をしているジュンが小屋に来たが、極力タケルを見ないように、タケルに背を向けたまま小屋を出て行く。

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隣の女は沢山の赤ん坊を実らせ、命が尽きたようだ。

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ジュンは黙々と赤ん坊と女を繋ぐ紐を切り、赤ん坊を一人ずつ布団を敷いた籠の中に入れると、籠を抱えて小屋を出て行き、又籠を抱えて小屋を出るを繰り返し、赤ん坊を全て運び去ると、今度は女に咲いた花を摘み取り、ミイラのように軽くなった遺体を担ぎ、又小屋を出て行く。

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暫く経つと、小屋の裏にある焼却炉からの煙で小屋が満たされた。

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タケルは夢と現の狭間にいた。

身体の痛みはなく、高級なアルコールでホロ酔い加減になっているような、心地良さの中にいた。

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[俺…母ちゃんに、何も親孝行してないんだよなぁ…]

ふと、実家に一人で暮らす母の姿が浮かび

[母ちゃん…ゴメン…]

タケルは涙を流した。

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それから数日、タケルの意識はもうすでに無くなっていた。

身体に生えたタケルにそっくりな赤ん坊は、ニコニコ笑ったり、元気よく泣いたりしている。

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タケルはその日のうちに、静かに命の灯火を消した。

母への懺悔の気持ちを抱えたまま。

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wallpaper:4829

『う…うわぁー!』

数日前に臓器移植をした子供の様子を見に、深夜の見回りで訪れた看護師は悲鳴とも驚愕ともつかない声を上げる。

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ICUの夜勤の看護師達はその声を聞きつけ、子供のベッドへ駆け寄った。

そこで看護師達が目にした物は…

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小さな子供の身体から生えた、小さな赤ん坊達の姿だった。

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それから数日の間に、同じく臓器移植を受けた子供が亡くなり、海外でも同じ事案がある事が分かった。

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そればかりか隣国では、成人男性が同じ様に身体から子供を生やし、自身は萎んで亡くなると言う病気の事例が数十件報告されていた。

それらの患者の共通点は、どの者も、小児性愛の逮捕歴のある者だった。

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新聞などを読む習慣のないケンイチは、そんな大事になっているのも知らず、ブリーダーとして、今日もあの山小屋へ向かう。

『やっぱ金になんのはハーフの女なんだよなぁ〜』

ラップを口ずさみ、これからの贅沢な暮らしを夢見ていた。

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その頃、怒りに怒ったウェイは、手下を連れてタケルの妻から吐かせたあの山小屋へ、黒塗りの車を何台も走らせていた。

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