中編5
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こっくりさん

この手の噂は廃れないので、若い方もご存知だろう。

こっくりさん。

一応、私が知っている限りでやり方を簡単に説明すると、YES、NO、あいうえお…などの文字や数字が書いてある紙の上に10円玉を置き、それに皆で指を添えて、こっくりさんを呼ぶと10円玉が紙の上を動いて書いてある文字や数字を指し、色んな質問に答えてくれるというものである。

小学校時代、テレビは連日のように心霊番組をやっており、小学生はそれに釘付けだった。私の小学校は1学年1クラスでクラスの人数は20人くらいの田舎の小学校だったが、それでも心霊番組は見逃す者など居なかった。

また、その頃「地獄先生ぬーべー」も同じく異様な人気があり、それの効果もあってか、小学生ながらこっくりさんやかごめかごめなどの心霊に関することは呪われそう。というのでやることはなかった。

しかし、古い名前が続いて申し訳ないが、人気番組であった「200X」という番組で、こっくりさんなど嘘。という内容の放送があり、私の小学校では皆こぞって、こっくりさんをやろう!という声があちらこちらで聞かれ、実際にやった者もいた。

ついには、その話が先生の耳に入り、こっくりさんの禁止令が発動された。

私の学年には、これが逆効果。止めろ!と言われるとやりたくなるのが人間の性というものだろうか。今まで私の同級生はどちらかというと、こっくりさんをやってみよう!という者は少なかったが、やろう!やろう!という話になった。

放課後、3人の同級生がこっくりさんを行い、私を含めた4人がそれを見ることとなった。さすがに7名全員では行えなかった。

その頃はもちろんインターネットなど普及しておらず、皆うる覚えのやり方を持ち寄って、いざ始める。

「◯◯くんの好きな子誰だ?」

「◯◯くんのこの前の算数のテストの点数は?」

「◯◯くんは女の子のリコーダーを舐めたことがあるか?」

などのくだらない質問が続き、いつの間にか、やっている者だけでなく、見ている4人も質問に参加した。そして、質問はだんだんエスカレートしていく。

「◯◯にバチは当たりますか?」

「◯◯は学校みんなから嫌われていますか?」

とか、どちらかというと負の方に進んでいく。もちろん、誰かが動かしているのは間違いない。それなりの答えに10円玉が動く。もちろん皆動かしているのは分かっている。それを見て面白がって笑っている。

ふいに誰かが、

「次に死ぬのは誰ですか?」

と言った。本当に誰だったのか、今でも思い出さない。

【C・F】

ここではイニシャルで書くが、ある名前を10円玉が指す。私含めて数人は「?」だった。

誰かが◯◯学校のあの女の先生だよ。と言った。

昔過ぎてなんて名前の研修か忘れたが、宿泊研修というのだろうか。青年の家に泊まったりするやつ。私の小学校は人数が少なかったので、他の人数の少ない小学校2校と合同だった。

今思えば、ドングリの背比べだが、他の2校は全校で30人くらいだ。私の学校は1クラス20人なので、全校だと120人くらいになる。

これは優越感だ。他は1校5人に対して、こちらは20人。2校足しても追い付かない。20人仲が良い者が結託するので、他校は居場所がない。特に私たちの小学校の男の子は威張っていた。

そして、事件は夜の星を見る研修の時に起こった。研修には懐中電灯を持参して参加していたのだが、研修前に懐中電灯は使わない。懐中電灯をつけたものは没収する。と言われた。

私は研修途中に見ていないだろう。と思い、自分の手のひらに懐中電灯の光る部分を押し当て、光をつけた。しかし、真っ暗な中でつけたので、意外にも手を通り越して、光が漏れてしまい、その女の先生に見られてしまった。

その女の先生は没収だ!と私に詰め寄ったが、私は前の日に親から買ってもらったものなので、取られたくなく、拒否する。それでも、しつこく詰め寄る女の先生。

すると、その光景を見ていた周りの友達が、「だったら、最初から懐中電灯持ってこいって言うなよ。」とか、「てめー、うちの学校の先生じゃないだろ!」とか叫び、しまいには「黙れ!黙れ!」コールとなった。

もちろん私たちの担任がそれに激怒し、その場は収まり、そのどさくさに紛れ、私の懐中電灯は無事であった。

質問の答えが、その女の先生だったのだ。それが判明し、不謹慎ながら私含めてその場全員が笑った。子供は時に残酷である。

それから時は経ち、中学校。もちろん他の地域の小学校が集まる。その際にその女の先生の話になり、その方が亡くなったことを聞いた。

誰かが、偶然だよ。偶然。みたいなことを言ったが、その後、私たちの中でその話はタブーとなった。

私はこれを怖い話だともなんとも思っていなかった。子供のイタズラで人が死ぬなんて考えられない。子供なんて、ヒーローごっこで、死ね!とかしょっちゅう言っている。子供の…というか、人間のイタズラで人がいちいち死んでいたら、たまらない。

しかし、先日の同窓会でちょっと奇妙な体験をした。

先日の同窓会、私はいつになく酔っていた。小学校時代に仲の良かった同級生と久々に会い、かなり嬉しかった。県外に出た者もいる。それが全員集まってくれたのだ。嬉しくて嬉しくて、ついつい飲み過ぎてしまった。

酔い過ぎたのか、ポロッとタブーとなっていた、女の先生の名前を出してしまった。酔いながらも、あっ!と思ったが、みんなが意外な反応だった。

「誰それ?」

みんな、そんな人知らないという。あれ?名前を間違ったかな?と思い、小学校時代のこっくりさんの話をすると、こっくりさんをしたのはよく覚えているという。

しかし、女の先生のことは覚えてないという。宿泊研修でも居たかもしれないな…。程度の反応だ。あんな衝撃的なことがあり、覚えていないはずがない。

しかし、私以外は全員本当に覚えていないという。

私の記憶違いなのか、みんなが忘れているのか、みんなが私を怖がらせようと口裏を合わせたのか、その女の先生は本当は優しい人だったとのことだったので、子供の私たちを苦しめないように記憶を消してくれたのか…。そうなるとなぜ私だけ…。

ともあれ、理由は今でも分かっていない。

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