短編2
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ドア向こうの男

ある日、仕事帰りに近所宅の玄関先で、全身黒づくめの男を見かけた。

それから数日後。そこに住む老夫婦が交通事故で亡くなったと聞かされた。

また違う日には、あるテナントビルの前で同じような格好をした男を見かけた。

程なくして、そのビルに入っている一軒の店から火が出て、死人が出るほどの惨事になったとニュースで知った。

それからというものその風体の男を見かけるたびに、その場所では必ず何かしらの事件や事故が起きて死人が出ている。

これが偶然だとはとても思えず、普通では考えられないが、俺はあの男が死神かなんかだと思うようになった。

そんなある日、休日だからとうだうだ昼まで寝ていたら、突然のチャイムに起こされた。

モニター越しに玄関をうかがうと、画面には全身黒づくめのあの男が映し出されていた。次は俺の番かと全身に冷や汗をかきながら固まっていると、不意に男が俺を見透かしたかのように話しかけてきた。

「申し訳ありません… お向かいの渡部さんに用事があって伺ったのですが、どうもお留守のようで…」

その言葉に俺はホッと息をついて、男へ返事をした。

「あ、ああ、渡部さんなら一昨日から新婚旅行に行かれたと聞いてますよ。また日を改めてみては?」

男は軽く目で会釈すると「そうですか、それではまた後日伺う事にいたします…」と言い、後ろを向いた。

「なんだよ、驚かせやがって」

俺の心の声が聞こえたのかすぐに男はこちらを振り返り、ニタァと口もとに笑みを浮かべた。

「ああそうだ、児島さん。渡部さんの方がすみましたら、次はこちらへも伺いますので…」

Concrete
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