中編3
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真似人形

その日は家で一人留守番をしていた。

何をするでもなく、手を動かして空中に舞っているホコリを指の先で捕まえてた。

それも暫くすると飽きてきた。

天井に目が向く。

何もない白い様子は、ショートケーキのクリームをずっとみているような感じだ。

そしたらお腹が鳴った。

グーッて。

立ち上がりながらお菓子の入ってる棚に走っていった。

まだ身体が小さいからと行ってもドタドタ走る自分はなんだか、猪にでもなった気分だ。

そんなことを考えながら棚に手を伸ばして扉を開けた。

目の前には箱に入ったお菓子やら袋に入ったお菓子やらが沢山置いてあった。

沢山置いてあるのだから何個も一辺に取ってもいいだろうと、勝手に2、3個を取って部屋に戻った。

机はいつも角に立て掛けてあって、使う時以外は降り立たんで閉まってある。

少しだけ重たいから、子供の僕には不便だと少しだけ文句を考える。

そうやって机をだし終わってみると、なんだか味気ない。

机の上にお菓子しかないとつまらないなぁと、近くにあったピエロの人形を机に置いた。

「さぁ、いただきますだ!」

そういって手を合わせて、同じように人形にもお辞儀をさせた。

そうして食べ始めた時には人形に向かって「美味しいね」「楽しいね」と声をかけては自分で、そうだね、美味しいねなんて言って、人形と会話をした気分になっていた。

そういえば、前に買った本の中で人形が自我を持って楽しく主人公と遊び回ると言う話があった。

主人公は人形に自分の真似をさせたあと、何か大切なものをあげていた。

「そうだ同じことをすれば人形が動いて遊んでくれる!」その時ふいにそう閃いた。

だから、ピエロの人形にも自分と同じことをさせ始めた。

歩いてみたり、手を動かしてみたり、飛んでみたり、寝転んでみたり。

色々する中で人形にも続けて同じことをさせた。

最後になめていたペロペロキャンディーを人形の口にくっつけた。

そしたら、人形の手が動き出した。

「動いた!」

そういってはしゃいでた。

嬉しくて嬉しくて堪らなくなり、いても立ってもいられず人形に喋りかけた。

「ねぇ、名前は!」

「T太」

その名前には聞き覚えがある。僕の名前だ。

「同じだね」

「そうだよ」

ぎこちなく返ってくる言葉にテンションは上がるばかり。

「一緒にお菓子食べようよ」

そういって机の前に座り直したとき、

「お菓子は食べない。僕T太。昨日お漏らしをしてごめんなさい。」と少しだけ泣きそうな声で喋った。

何で知ってるの?

確かに昨日お漏らしをした。

けど、それは誰にもいってない。

人形の方を驚きながら振り替える。

「僕T太。明日K君と遊ぶんだ!」

これも本当だけど、誰にもまだ伝えてない。

なんだか怖くなってきた。

何で自分しか知らないことを喋っているんだろう。

「だって、僕T太だもん!」

いつの間にか目の前にあった人形の顔は自分と同じ顔をしていた。

その途端酷い頭痛がして目の前が見えなくなくなってきた。

「僕T太。プリンも食べなくちゃ!」

その声を遠くに聞いたのを最後に意識がプツンと切れた。

気づいたら部屋で寝ていたらしい。

いつの間にか帰ってきていた母に起こされた。

変な夢をみたなぁと起き上がりながら目の前の机をみたらプリンの容器が転がっていた。

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