中編3
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ウォシュレット

僕の家に念願のウォシュレットがついた。

とはいっても最新式の高価なものではなくて、誰でも簡単に取り付けられる後付け式のやつ。父さんが知り合いの業者さんから安くで譲ってもらったらしい。少し前のタイプだけれど新品なので問題はないとの事だ。

「やだ、便座が暖かくて最高だわ!」母親が喜んでいる。

「うわ!痛い!痛い!」弟が間違えて水圧をマックスにしてしまい、笑いながら苦しんでいる。

ともかく家族みんなが大満足していて、僕もウォシュレット初体験であまりの気持ち良さに感動してしまった。父さんも嬉しそうだ。

だけど、そんな幸せなウォシュレットライフにも一週間で陰りが見えてきた。

トイレが水浸しになっていたのだ。どうやら夜中に誤作動が起きて、水が出しっ放しになっていたらしい。

父さんが説明書を読みながら設置し直していたけれど、また次の日の朝も水浸しになっていた。

父さんは安く譲ってもらった手前、売ってくれた相手に文句がいいにくいとため息をついていた。

そんな夜、みんなが寝静まった後に僕は妙な物音で目が覚めた。

一階からガタン、ガタンと繰り返し物音がしている。凄くうるさい訳ではなかったけれど気になった僕は階段を降りていった。

音はどうもトイレの中からしているようだ。扉を開けてみると、誰も触っていないのに便座が慌ただしく上下に開閉を繰り返していた。

これも誤作動かな?完全に不良品じゃん。僕は手元のスイッチを入れて電気をつけた。と、その瞬間、開閉がピタリと止まった。

ドキっとしたけれど、まあたまたま電気をつけたタイミングで誤作動が直ったのだろうと考えなおした。

だけどこれだけ誤作動を起こすからにはやっぱり不良品だ。明日になったら父さんに話して売ってくれた業者さんに返品を頼んで貰おう。そう思いながらウォシュレットの主電源であるコンセントを引き抜こうとタンクの下に手を伸ばして驚いた。

コンセントは既に抜かれていた。

そう言えば今日の昼に父さんが、また水浸しになるのは勘弁だから、ウォシュレットの電源は切っとくぞと言っていたのを思い出した。

ではなぜさっきまでこの便座は勝手に開閉を繰り返していたんだろう?混乱する僕に追い打ちをかけるようにトイレの電気がパチンと落ちて真っ暗になり、びっくりした僕は廊下側に尻もちをついた。

ギィー、バタン。

ギィー、バタン。

僕の目の前でまたひとりでに便座が開閉を始めた。

「あははは、あー楽しい」

どこからかそんな子供の声が聞こえた。

「あー面白い、あー楽しいいい」

シャーー

ギィー、バタン。

ギィー、バタン。

「ねー、これって面白いよね?」

暗闇の中にいる何かが、振り返って僕に聞いた。

僕はそのままトイレの前で気を失っていたらしい。母さんは今日は僕がトイレを水浸しにしたんだと思ったみたいだけど、抜いてあったコンセントをもう一度さしても起動しないウォシュレットを見て、怒られずにすんだ。

父さんはなぜかウォシュレット一式を返品せずに自分で処分したらしい。

弟はウォシュレットがなくなって残念そうにしていたけれど、僕たち家族とは別にもう一人いた我が家の住人のあの子も、おそらくガッカリしている事だろう。

だってあんなに楽しそうだったんだから。

Concrete
コメント怖い
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まー様、ふふふ。安定の思いつき中途半端話にございます…ひひ…

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いや~怖いは怖い…
けど、何も解決してない(笑)

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