短編2
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黒揚羽

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これは大学の先輩から聞いた話です。

大学の先輩とはサークルを通じて出会いました。

社会人になってからも家が近いということでよく

今でも呑みに行ったり、旅行に行ったりとしています。

そんな先輩にはお祖父ちゃんが居ました。

厳しいお祖父ちゃんで学校の先生をしていたということでした。

先輩はそんなお祖父ちゃんが嫌いだったそうです。

「昔から勉強しろ勉強しろってうるさくてさ」

でもそのお陰で先輩は高校の時学年トップの成績をおさめたそうです。

そんな厳しいお祖父ちゃんは昔から心臓が悪かったそうです。先輩が中学生になった頃ちょくちょく病院に通うことが多くなっていき、大学が決まった冬に発作を起こし亡くなったそうです。

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お葬式当日。

雪がシンシンと降る寒い朝でした。

お葬式に参列をするために朝早く起き、1階のリビングに行こうとするとお祖父ちゃんがよく朝新聞を読んでいた応接間がふと気になりました。

お祖父ちゃんが亡くなったあの日からカーテンが閉まっている応接間。

先輩はカーテンをそっと開けたそうです。

そう毎朝お祖父ちゃんがそうしていたように。

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「きゃっ!!」

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そこから出てきたのは真っ黒な揚羽蝶。

おかしい…

だって今は真冬。外は雪だって降ってる。

蝶はおろか虫一匹いないはず。

悲鳴を聞き付けた先輩の母親とお祖母ちゃん、そして妹が応接間まで駆け付け先輩が今あった事を説明をするがカーテンの奥から飛び出した真っ黒な揚羽蝶は一向に見付からなかった。

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それから1周忌、お盆、2周忌…

先輩は黒揚羽を見るようになったそうです。

そして先日…

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先輩は結婚をしました。

私も結婚式に参列をさせて頂きました。

元々細身で背も高い先輩のウエディングドレス姿は本当に綺麗でした。

式も無事終わり先輩が教会の入り口から出てきました。階段を1歩ずつ降り丁度私の目の前を通りすぎようとした時…

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…漆黒の羽を一生懸命動かし舞い上がる揚羽蝶。

その瞬間先輩は涙を流していました。

「お祖父ちゃん、ありがとう」

先輩はしっかりと黒揚羽の舞い上がった大空を

見送っていました。

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