長編17
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残酷なお札

友達夫婦と自分が数年前体験した話。

男友達の町田(仮名)が結婚することになった。

町田とは、俺が大学卒業後ダラダラとフリーター生活をしていた頃、同じバイト先で仲良くなった。

その後2人とも就職して昔ほどではないがたまに遊びに行く仲になった。

そしてこの度町田と結婚する彼女の沙紀ちゃん(仮名)は、2年前くらいに紹介されて、以来半年に1、2回くらいのペースで3人で飲みにいくようになった。俺が当時付き合っていた彼女と別れて沈んでたときも、二人で慰めてくれたり。

沙紀ちゃんは当時20代半ばのOLで、少しシャイだけどしっかり者で、

色白で目がぱっちりしてて笑顔が可愛い子。そして酒が強い。

正直町田が超うらやましかった。

ちなみに俺と町田は当時30代半ばのおっさん。

そんなこんなでとうとう結婚するとの報告を受け、3人でお祝い飲み会することになった。

(というか自分がただ単に飲みたいっていうのもあったw)

最初は結婚おめでとうの飲み会のはずが、本来の趣旨を外れてやれプロレスだのプロ野球だのといった趣味の話で盛り上がってしまったw

そして2時間くらいたった頃にやっと本来の趣旨を思い出し、何杯目だかも思い出せない生中のおかわりを頼みながら、

「そういや結婚式と披露宴どこでやんの?沙紀ちゃんの花嫁姿絶対綺麗だよなー、あ、町田は特に期待してないからwww沙紀ちゃんこんだけ可愛いってことはお母さんも綺麗な人だろうなー」

と言ったら、沙紀ちゃんの顔が一瞬固まった。

???と思ってたら、

「あ、ああ、うん。まあ美人…な部類に入るかもね!」

と少しごまかすような感じで沙紀ちゃんは答えた。

隣にいる町田も、なんか心配するような感じで咲希ちゃんを見ていた。

まあ結婚するときって両親と色々あるよなーと思いつつ、披露宴とかの話題になり、その後泥酔した俺は2人に担がれながら家まで送ってもらい、

次会うときは結婚式場でな!!!とその夜は別れた。

それから約1週間後、仕事から自宅のアパートに帰ると、ポストに結婚式の招待状が届いていた。部屋に入って招待状の封を開けようと思った瞬間、スマホの着信が鳴った。町田からだった。

「もしもし町田?今ちょうどお前らの結婚式の招待状開けようと思ってたんだよ!すごいタイミングだな!」

「・・・・・俺君・・・!沙紀が・・・・沙紀が倒れた!」

「え?」

「さっき救急車で運ばれて・・・今病院で・・・沙紀が・・・・!!!」

タクシーを呼んで町田の言っていた病院に直行した。

手術室の前のソファに町田がうなだれるように座っていた。

「町田!沙紀ちゃんは⁉」

「俺君・・・・!」

つい3時間程前、町田と沙紀ちゃんは、同棲しているアパートで、仕事から帰宅していつもと同じように2人で夕食を食べ、その後結婚式の衣装とか色々カタログを見ながら話をしていたんだそうだ。しかし話をしながらだんだんと沙紀ちゃんの様子がおかしくなり、頭が痛い!と苦しみ始め、その場に倒れて意識がなくなったという。

救急車を呼んで、病院でCTスキャンをしたところ、脳の血管に血栓のような塊があり、緊急の摘出手術が行われることになった。

執刀医には、最善を尽くしますが、もしもの場合も覚悟してくださいと、言われたそうだ。

町田は号泣した。俺は茫然とした。目の前では、手術中のランプが煌々と光っている。

これから幸せになろうっていう2人に、神様はなんて残酷なことをするんだろう、怒りと悲しみとで胸が痛くなった。

「・・・・・町田、大丈夫だって信じよう。沙紀ちゃんの生命力を信じよう。・・・・大丈夫だ!お前がそんな泣いててどうするんだよ・・・!」

「・・・・沙紀・・・!沙紀どうか助かってくれ・・・・・!」

もう何時間程たっただろうか。ソファに2人して、ひたすら祈っていたので、もう時間の感覚は無かった。

手術室のランプが消え、ドアが開いた。

「沙紀ちゃん!」

「さ、沙紀!!!」俺と町田は急いで駆け寄った。沙紀ちゃんは、頭に包帯を巻かれ、呼吸器や管を体に通されていた。

看護師数名に、そのままストレッチャーで病室に運ばれていった。

そして執刀医の先生が俺たちに言った。

「高野さん(沙紀ちゃんの苗字)はよく頑張ってくれました。摘出手術は成功しました。意識が戻るまでもう少し時間はかかると思いますが、一命はとりとめました」

俺は安堵で力が抜けた。町田はまた号泣した。二人して泣きながら、鼻水と涙でぐちゃぐちゃの言葉になってない有り難う御座いましたを、先生に何回も何回も言った。

そして病室に案内される前に、先生が摘出したものを見せてくれるといい、診察室に行った。

金属のトレーには、灰色がかった石ころのようなものが1つ入っていた。

大体大きさは直径5ミリくらい。

俺が想像していた血栓とは全くイメージが違った。それは町田も同じだったようだ。

町田「これ・・・血栓ですか?」

先生「正確には血栓とは言い難いです。私も長いこと医者をやってますが、こんな事例は初めてでして・・・正直なんて言ったらいいのか・・・ただ、これが高野さんのちょうどこめかみあたりの血管に詰まっていたのは事実です」

俺「これ・・・何ですかね」

3人で石ころのようなものをまじまじと見た。すると、先生が

「ん?なんか切れ端的なものが見えたな」と、スポイトとピンセットを持ち出して何やら始めようとしていた。」

町田「どういうことですか?」

先生「いや、なんかね、これ石じゃないかもしれない、紙の塊なんじゃないかと思って」

と、石ころに少しずつ、スポイトで水をかけ始めた。すると、ぺらっ、と石の表面がはがれ始めた。それを細いピンセットで少しずつ剥がした所、何か文字のようなものが見えてきた。3人は目を合わせた。先生はマスクをしていたが、驚いた表情であったのは分かった。

水を差し、ピンセットで剥がす、これを繰り返した。そうして、石ころのようなものの正体が判明した。

それは、お札だった。神社なんかで売っている、壁とかに貼る、あれ。

3人とも、その場に立ちすくみ、状況をうまく呑み込めていなかった。

隣にいる町田に目をやると、顔が青ざめていた。

「・・・・このお札、なんで文字が滲んでないんだ?」先生がそう切り出した。

言われてみればそうだ。数時間前に脳内の血管に入っていて、ついさっき水をかけたばかりなのに、何語かわからないけど、書いてある文字は全く滲んでいない。お札自体は濡れているのに。もうなにがなんだかわからない。これ、夢か?悪夢でも見てるんじゃないのか?

町田「沙紀に・・・なんて言おう」

俺「何てって・・・どう言うんだよ、だいたい何なんだよこれ・・・」

先生「何がどうなってこんなものが血管に忍び込んだのか僕には全くわかりません。ただ・・・高野さんにこれをどう説明するかは、町田さん、任せます」

町田「・・・・・沙紀はまだ眠っているんですよね?だったら・・・ちょっと考えさせてください」

先生「これ、どうします?こっちで処分しようか?」

町田「いえ、明日でも良いので下さい!」

時間はもう夜中を過ぎていた。町田は、沙紀のそばにいたいからと、今夜は病室に泊まることにした。俺はタクシー呼んでそのまま帰ることにした。

俺「町田。良かったな。」

町田「うん。良かった」

俺「なんか・・・必要なことあったら言えよ。俺、出来る限り手伝うからさ」

町田「ありがとう」

俺「お札・・・・あれ、なんだろな、怖いよな」

町田「・・・・・うん。俺君、今日はもう帰りな。実は色々話すことがある、時間あるときでいいから、また病院来てくれないか?」

俺「もちろんだよ!お前も早く沙紀ちゃんのとこいってやれよ。おやすみ」

お札のことが頭から離れず、一睡もできなかった。

それから2日後、俺は改めて病院にお見舞いに行った。前日に町田から連絡が来て、沙紀ちゃんの意識が戻ったのだ。しかし、病院の1階にある喫茶店で待つように言われ、コーヒーを頼んで暫く考えていた。沙紀ちゃんや、2人の家族にはこの事実をどう伝えるのか、町田は大丈夫なのか。

しばらくして町田が俺の席にやってきた。

沙紀ちゃんは意識が回復した後、町田と少し会話をして、今は寝ているそうだ。町田の家族も遠方から駆けつけてくれて、一緒に身の回りの事をしてくれているという。

俺「沙紀ちゃん回復してよかったよ、・・・だけどよ、今回の事、説明すんのか?家族には何て言ったんだ?」

町田「先生と話し合って、血栓があったと皆には説明したよ。さすがに事実を伝えるのは難しいからさ」

俺「そっか・・・沙紀ちゃんの両親にも同じように説明するのか?てか連絡したのか?」

町田「うん・・・その事なんだけどさ、俺君、今日1日、時間あるか?」

そう言って町田は上着のポケットから何かを取り出した。それはビニール袋に入ったお札だった。先生が町田に渡す前に、汚れを取って乾かしておいてくれたそうだ。

改めてみるとやっぱ気味悪い。何語かわからない文字が、赤と黒で書かれており、真ん中には謎のマークが描かれている。

町田「俺、このお札を過去にも見たことあるんだ。」

俺「え?」

町田「沙紀の母親が、持ってたんだ。同じやつ・・・」

俺「は、母親が?」

町田曰く、沙紀ちゃんの両親は所謂「毒親」ってやつなんだそうだ。

父親は仕事人間で家を空けることが多く、たまに家に居ても母親と喧嘩、DVっ気もあったため、殺伐としていた。

母親はというと兄を溺愛、妹である沙紀ちゃんを邪険にすることが多く、典型的な長男教。妹は居ない子扱い。

溺愛されてきた兄は徐々に引きこもりになり、父親と同じように家庭内でDVを起こすようになり始めたにも関わらず、湯水のように金を使い、お小遣いを渡し、無くなると沙紀ちゃんにまでせびるようになったそうだ。

更には新興宗教に入信していて、沙紀ちゃんに入信するよう執拗に迫っていた。

沙紀ちゃんは夜逃げ同然で家を出て、連絡を絶って2年ほどして、町田と出会った。

付き合い始めのころに、沙紀ちゃんから家庭環境について告白され、こんな自分が彼女でいいのかと聞かれたそうだが、町田はその時はよくある母娘の喧嘩別れだと思っていたようで、あまり気に留めなかった。

ところが付き合って1年ほど経ったある日、1人暮らしの沙紀ちゃんの部屋に遊びに来ていた時に、インターホンが鳴った。お届け物とのことだったので、トイレに行っている間に受け取っておこうと玄関を開けると、痩せ型で長髪の中年女性が立っていた。

そしてニヤッと町田に笑いかけた次の瞬間部屋に入ってきてしまった。そして洗面台から出てきた沙紀ちゃんと鉢合わせになった瞬間、その女が金切り声で「沙紀!!!!逃げても無駄だーーーーー!!!!!」と沙紀ちゃんを押し倒し、髪の毛を掴んでそのまま外に出ようとした。とっさに町田は女を引っぺがし、沙紀ちゃんを庇うと、女は「娘を渡せ!!!!!○○先生(難しくて聞き取れなかったそうだ)の教徒になって心を入れ替えてもらうんだ!!!!!○○ちゃん(兄の名前)がどうなってもいいのかーーーー!!!!!」と更に怒鳴り散らし、

再び襲い掛かろうとしてきたところ外でパトカーのサイレンが聞こえ、女はそれに気づいてそのまま出て行ってしまった。この女こそが、沙紀ちゃんの母親だった。

そして母親が立ち去る瞬間、手に持っていたバッグ、というかズタ袋のようなものに、あのお札がぶら下がっていたのだ。

警察にも相談し、町田と沙紀ちゃんはすぐ引っ越して一緒に住む事になった。

町田「あの後、沙紀は少し精神不安定になって、病院でカウンセリング受けたりしてたんだ。別れようって言われたこともあるけど、悪いのはあの母親で、沙紀は悪くない。元々結婚を前提にしていたし、俺は沙紀を守りたい。」

俺「こ、怖ぇな…え、てか、今回の事って、沙紀ちゃんの母親がやったって言うのか…!?だとしてもどうやって???」

大体の新興宗教って、胡散臭い、インチキ臭いのが殆どだって思っていた。

でも、人の体内にお札を入れる?マジシャンや超能力者でもやらなそうなこと、ただの入信者が出来るのか?

背筋がゾッとした。

そして、町田は何かを覚悟したように、俺に言った。

「俺は今から、それを調べに行く。俺君、無理にとは言わないけど、一緒に来てくれると心強い。どうだろう?」

正直、遊園地のお化け屋敷も入れないくらい、怖い体験は苦手だ。でも、沙紀ちゃんと町田がこれ以上変な事のせいで苦しむのは見たくない。

俺も意を決して、一緒に調べることにした。

~~~

それから約1時間後、俺たちは新幹線に乗り、町田の母方の田舎に向かっていた。

今日1日時間あるか、というのはこういう意味だった。

田舎といっても、都心から新幹線で1時間ほどの場所だ。駅に着き、タクシーに乗って、町田はある場所にに向かうように運転手に言った。20分ほどして着いた先は、小さな神社だった。

町田曰く、氏神様の神社なんだとか。子供のころから親交があり、今でも帰省した時はここに初詣にきているのだそう。

鳥居をくぐり、境内の奥の戸建てのインターホンを押す。

中から、神職の格好をした小柄な初老の男性が出てきた。ここの神主だ。

「おお!渓君(町田の名前)!何だい年末でもないのに!」

「おじさん、早々で申し訳ないけど、頼みごとがあるんだ、力になってほしい」

「うん。なんか縁起の悪いもの持ってるみたいだねえ・・・まあ入んなさい」

町田に俺を紹介してもらい、玄関から奥の間に通された。年季の入った木造の柱が印象的だった。障子が空き、奥さんと思われる女性が、お茶を持ってきてくれた。

そのあと神主さんが来て俺たちの前に座り、

「渓君、持ってきたものを見せてごらんなさい」と、穏やかな口調で言った。

端正な顔立ちの、物腰の柔らかい人だ。

町田はバッグからお札を取り出して、前に差し出した。神主さんは少し顔を曇らせた。

神主「ふむ・・・これは不味いねえ、誰かを本気で恨んでる人じゃないとこれは作れない」

町田「こちらで、お祓いしてもらえませんでしょうか?沙紀が、婚約者がこの札のせいで倒れたんです」

神主「そりゃ、大変だったね。このまま持っておくと、もっと色んな所に不幸なものをもたらすかもしれない、こちらでなんとかしてみよう」

町田「ほんとですか⁉」

俺「ありがとうございます!あ、でもこれって・・・なんなんですか?これと同じものを持っている人が、○○っていう新興宗教に入っていて・・・そちらのものなんでしょうか?」

神主「う~ん、そうだねぇ・・・これは・・・」

その時、障子が開く音がした。目をやると、そこにはガタイのいい、短髪でTシャツ短パンの男が立っていた。そして部屋に入るなり、

「おい!なんつー禍々しいもの持ってきやがってんだ!お前らか⁉あ⁉」

へ?こ、怖い・・・・・てか、顔がゴリラ。まじで。てか、俺たち怒られてる?てか誰?

「おい!俊哉!お客様に無礼な口は辞めろと言っただろうが!」神主がたしなめる。

俺・町田「えっとあの・・・・どちら様でしょうか?」

神主「私の倅だ。無礼なことを言って申し訳ない」

俺・町田「えええええええ」

ゴリラ「親父!なんで入れたんだよ!さっきから背筋が寒いんだよ!」

ゴリラは神主の隣にドカッとあぐらをかき、俺たちの目の前に迫った。正直めっちゃ怖い。

そしてお札を見るなり、

「申し訳無いけど、こんなのうちじゃ祓えないから」と俺たちに吐き捨てた。

俺たちはイラっときて声を荒げた。

「なんなんだよ!俺たちは藁にも縋る思いでここに来たんだよ!ふざけてこうなったわけじゃないからな!」

ゴリラ「どんな理由でも駄目だ!」

俺・町田「なんだとー!」

その時、パン!!!!!と手を叩く音が広間に響いた。神主さんが、静かに、そして厳しい口調で「お前たち、やめなさい!」とたしなめた。

ゴリラはばつの悪そうな顔をしながら、またあぐらをかき、

「親父、なんとかしてやりてぇ気持ちは分かるが、もう気づいてんじゃねぇのか?こんなの祓おうものなら、逆に自分が喰われるかもしれねぇって」

町田「どういうことだ?」

神主「ああ、そうだ気付いているよ。渓くん、俺さん、ほんとに倅が無礼で申し訳ない、だが、こいつは俺の先代、つまりこいつの祖父の力を継いでるから、禍々しいものには人一倍気づきやすい。倅がここまで荒ぶるのは珍しい。どうやらこの札は、相当なものだ。」

町田と俺は顔を青ざめた。すると、

ゴリラ「障子越しに聞いてたけどよ、○○教(沙紀ちゃんの母親の入信している宗教)だっけか?

ありゃタダのインチキだ。金を巻き上げてるだけのな。こんなの作れっこねーよ。」

町田「え、でも沙紀の母親がこれを持ってて…」

ゴリラ「だから!インチキとは違う、もっとマジもんの、しかもヤバイのに手ぇ出しちまったってことだな、いくらなんでも親父や俺じゃ、これは無理だ。ちっと待ってろ」

そういって、持ってた携帯で誰かに電話をかけた。

「もしもしばあちゃん?おお、うん…ああ、頼むわ。今からそっち行くから、じゃーな」

そう言って電話を切ると、

「おい立て、今すぐ出るぞ」と、外に出てワゴン車を出した。

俺たちを後部座席に、神主さんを助手席に載せ、10分ほど山道を行った先に、小さな民家が姿を表した。

神主「お前、ばあさんにあの時みたいな危ないことさせるなよ」

ゴリラ「分かってるっつの、おーいばあちゃん!来たぞー」

ガラッ、とガラス戸を引くとももに、1人の老婆が現れた。俺達は老婆を見て、ヒッと小さな悲鳴を上げてしまった。両方の黒目は殆ど薄い灰色ががり、全体的に白目な感じだった。老婆は町田を見るなり、

「こりゃ厄介だわ、入んな」と、無愛想に言って招き入れた。

俺達は居間に通され、老婆、ナツさん(仮名)と向かい合う形で座り、簡潔に経緯を説明した。

神主とゴリラはその後ろで様子を伺うように座る。

神主「ばあさん、老体に鞭打つようで悪いが、助けてやってくれ、私も手伝うから」

ゴリラ「ばあちゃん、頼むわ。」

ナツさん「言われんでもわかっとるわ!まだまだお前さんらよりは出来るわ」

町田「あの、よろしくお願いします!沙紀を…大事な人を守りたいんです!」俺と町田は土下座をした。

ナツさんは、「まあまあ、札を見せな。はぁ~、こりゃ、随分なものを作りおって」

俺はもう何がなんだか話についていけなくて、堪らず聞いた。

「あの、これは何なんですか?ヤバイのはわかります、でも、どうヤバイんですか?」

「まあ、普通に生きてりゃこんなのにお目にかかるのは殆ど無いから無理もないわな。この札に書いてあることはな、ワシがまだ幼い頃に存在していたが、もう廃れてしまったある宗教のまじないの言葉だよ。○○○といってな、まあ神道と仏教と、その他のあらゆる宗教をごちゃ混ぜにしたもんだわな。邪教の部類だ。そちらさんの婚約者の母親は、どこかでこれを知ったんだろうね。そんで、自己流でこの札を作ったんだと思うわ。」

「○○○は、最初のうちは、神道と変わらず、村の人間の安泰を願うことに勤めていたが、いつの時代にも、悪用する奴が出てくる。時が経つに連れ、恨み憎しみを成就させるものになってしまった。」

ナツさんは町田の方を見て、

「お前さん、女が同じものを持っているのを見たと言ったね。それは、お前さんの婚約者の前にも、何人かに同じことをやってると思うわ。それも、実験台としてな。確実に呪い成就させるために、試行錯誤してこれを作ったんだろう。なんにしろ、人を呪わば穴二つだ。」

そう言ったあと、ナツさんは神主とゴリラに清酒を用意させ、飲むように促した。

そして残った清酒を全員の身体に振り撒き、

ジャラッ、と首に下げていた長い数珠を両手で鳴らしながら、ぶつぶつと何かを唱え始めた。

シンと静まり返った空間に、数珠と言葉だけが響く。何だか空気がさっきと違う。

そして、ジュウッ!と、何かが焼けるような音と共に、目の前のお札が端から黒ずみ始めた。まるで火を着けたように。

みるみるうちにお札は黒くなり、文字も模様も消えていった。ナツさんが唱え終わると、お札は原型は留めているものの真っ黒になり、辺りに微かに焦げ臭い匂いが漂った。

何がどうなってんだ?これ、夢か?これも夢なんじゃないのか?

そう思っていると、ナツさんが口を開いた。

「呪い返しだ、まあ、これで大丈夫だろう、神社に預けさせる。焚き上げときな」

町田を見ると、静かに涙を流していた。

4人でナツさんにお礼を言い、俺たちは帰ることを伝えた。

ナツさんの家を出る間際、ナツさんは思い出したように俺たち言った「ああ、札を作った女な、ありゃ数日後にはあの世だ、それも地獄だろうな」

俺・町田「えええっ」

ブッ!とゴリラが笑って吹き出す。それを神主さんはたしなめていた。

ナツさんは続けて、

「そりゃそうだ。自分の娘の命を奪って何らかの利益を得ようとした。あの札からはそんな念を感じたよ。それに、もう札を作る時点であの世の悪いもんに魂を売っちまってる。ある種の犠牲ってやつだな」

「人間っちゅうもんは誰でもな、自分の望みを叶えるために、大なり小なり犠牲を払ってるもんだ。でもな、誰かを不幸にするための犠牲っつうのは、幸せにはなれんもんなんよ。」

そういって、静かに微笑んだ。

帰りの車のなか、ゴリラにナツさんは何者なのか聞いた。

ナツさんは、ゴリラの祖父、つまり先代の神主の時期に神社に勤めていた元巫女だったそうだ。

子供の頃から何か不思議なものが見えたり聞こえたりする能力があり、それを見込まれて修行し、巫女になったという。引退した今も、村人の相談役になったり、今回のようにお祓いをしたりしてるんだそうな。

ゴリラ「俺さ、ガキの頃心霊スポット行って騒いだり、色々やんちゃしてたんだ。で、ある時禁足地に行ってヤバイもんに見初められちゃってよ、じいちゃんも祓えないくらい強力なやつで、危なく命を捕られるところを、ばあちゃんに色々やってもらったんだ。今はそのヤバかったのが、守護霊みたくなってる。ばあちゃんの目、見たろ?あれはそんときに差し出してくれたんだわ。盲目になっちまってよ。んで、ばあちゃんとじいちゃんに言われて、色んな所で修行した。行者の元で厳しい修行したり、漁師になって働いたりよ。だから、初対面でもしゃーないわな。」

神主「いつかは渓くんに紹介しようと思っていたんだが、件の事があって、随分と家を空けていたからな。仕方がない。倅は力が強い。俺の跡も安心だ。」

神社に戻り、改めて2人にお礼を言った。

神主「またな渓くん、年末年始にな。彼女も連れてくるといいよ」

ゴリラ「おい、ゴリラ呼ばわりしてたのはバレてんだからな!(笑)次来たときは酒盛りするぞ!」

ゴリラバレてたか…

タクシーに乗り、駅に向かう。時刻はもう夕方になろうとしていた。新幹線で戻る途中、トンネルの辺りで、女の絶叫ともレールの歪みともとれる音を聞いたが、眠気に耐えられず2人とも寝た。

~~~

それから3か月後、休日ぼーっとビール飲みながらネットサーフィンしてたんだ。

で、あるオカルトサイト覗いたら、

「近隣住民が謎の怪死!謎の女の仕業か!?」

という記事があったんだ。何でも、ある日突然その地域の住民が突然死してしまい、付近にはお札のような紙切れが散らばっていたとか。

長髪の女が何度か目撃されていたが、事件解決には至らず、迷宮入りしたと。

監視カメラの画像と思われる写真が載っていたが、どことなく、沙紀ちゃんの面影があるよーな、無いよーな。

いかんいかん、縁起でもないこと。

明日は町田と沙紀ちゃんの結婚式なんだから。

Concrete
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@とっつ さん
読んでいただきありがとうございます(^^)
どうぞこれからもよろしくお願いします(^o^ゞ

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