中編3
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2つの冤罪

「私じゃない!」ずっと叫び続けている。

俺は大手銀行に勤めていた。

妻と子供(小学一年生の女の子)が一人。

銀行での仕事はストレスもあるが、充実して幸せな毎日を過ごしていた。

幸せは失ってから気づくものだ。

その時はまだ、その当たり前の幸せに、気づいていなかった。

満員電車に揺られ通勤する日々。

ある朝の電車の中。

今日も詰め込まれ勤務先に運ばれる。

変わらない景色を車窓から眺める。

いつもと同じ。

そのはずだった…。

不意に目の前にいた女性が叫ぶ。

「やめて下さい!」

「この人痴漢です!!」

(は?)

俺の右手を掴み離さない。

「ちょっ、何ですか?」

訳が分からない。

周囲の視線が集まる。

汚物でも見るような目でみる女子高生。

呆れたように溜息をつく爺さん。

回りの男達に囲まれ、駅に着くと引きずり降ろされた。

「私じゃない!痴漢なんてしてない!!何かの間違いだ!」

「この人です、間違い有りません。スカートの中に手を入れて来たんです!」涙目で訴える被害女性。

女子大生だろうか、露出の多い服に短いスカート。確かに痴漢に会いそうな姿だが、断じて俺はしていない。

弁明を続けるも、駅員と共に駅事務所に連れられていかれた。

俺は無実を訴えたが、駆け付けた警察官は一切耳を傾けず。

話にならないので帰ろうとしたら、現行犯逮捕されてしまった。

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数日後、被害女性の代理人を名乗る男から和解を持ちかけれた。

「300万円支払えば被害を取り下げます。」

払えない金額ではない。

自分の弁護士からも和解した方が良いと言われた。

初犯だから実刑判決は無いだろうが、有罪となれば社会的信用を失う事になると。

さらに数日後、示談金を200万円にしても良いと女の代理人が言ってきた。

間違いない…あの女は金目当てで偽証したんだ。

俺はやってないんだ、臆する事はない。

裁判で争うことにした。

やってもいない罪を認めて和解など出来るものか。

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だが…結果的に裁判には敗れ、罰金刑を言い渡された。

勤めていた銀行は懲戒解雇。

妻とは離婚することになった。

「あなたの事を信じて無いわけじゃないのよ…。でも子供の事を考えたら…あの子…学校でイジメにあっているの。私も周りの視線が辛い。」

そう言われては判を押す他無かった。

全て失った…。

許せない…あの女への復讐を誓った。

略式起訴だったので、通知書から女の名前はすぐに分かった。

数ヶ月後、住所を突き止め、その家の前に車を止め待ち伏せた。

あの時と違い地味な格好だが、間違いない…あの女だ。

女が出てきたところで車のトランクに押し込み、人気のない山中に連れ去った。

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トランクから女を降ろした。

ナイフを突き付けながら問いかける。

「俺の事を覚えているか?」

「し、知りません!」

「お前が痴漢呼ばわりした男だよ!」

「私じゃない!人違いです!」

衝動的に顔を殴り付け、服を引き裂いた。

泣き叫ぶ女をなぶり、犯し、殺した。

因果応報…。

この女は俺の人生を奪ったんだ。

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数日後、女の遺体が発見されニュースになっていた。

被害者の名前がテレビに映しだされる。

その時、違和感を感じた。

何だ…

名前が…違う?

名字は一緒だが、名前が一字違う。

被害者の姉だという女がインタビューに答える「妹は真面目で誰からも好かれるコだったんです…。」

姉の姿が一部映った…派手な服に短いスカート…。

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あれから毎日、夜になると俺の横で女の霊が叫び続けるんだ…

「私じゃない!」

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