短編2
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『避けろ』

いい加減、うんざりしていた、毎日おなじこと、慣れたとはいえ、それがうんざりなのだ。

 それに慣れたことに、うんざりだ、べつにいい、ただそのまま、見てればいいのだ。

 「殺してやる」とか「死んで」とか、なんかそんなことが聞こえるが、何を言っているか、わからない。

 ただ、そのままにしておけばいいのだ。

 気になることもある、別のところで見たのだ、さっき見たのだ、でも、それもそのまま行き過ぎればいい、落ちればいいだけ。

 だがそれができるだろうか、私はできるのだが。

 『自殺が多いのです、このマンションは』とマンションを貸す不動産会社は言った。「いいですよ」と私。その意味はすぐに分かったのだが、やり方次第、過ごし方次第なのだ。

 ベランダから、向かいのマンションのベランダを見る。同じようにベランダで佇んでいる人がいる。その後ろに、いた、それが。

 わたしは、叫ぼうとした、しかし、まずはこっちだった。後ろから声が聞こえた、いつも通り小さすぎてわからないが、それはいい。

 その後すぐに来ることに注意すればいい、うしろから速足で近づいてくる、真後ろにきた、私は避けた、それはそのまま、押すものがいなくなったせいで、力余って、自ら、ベランダを超えて、落ちていった。

 私はすぐに、向かいのベランダにいる人に向かった、今落ちたものの跡は、確かめない、どうせ、いつも、いないのだから。

 私は向かいのマンションに叫んだ。

 「避けろ」

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