中編5
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近づいてくるモノ

この話は、お盆に帰省してお墓参りをしたときに、たまたまいらっしゃったお寺の住職から聞かせてもらった話なんです。

というのも、私は実家から離れた所に住んでるんですが、住職が某SNSをされておりまして、フォローさせてもらってるんです。そういった関係もあって、帰省した際には時々、お墓参りを兼ねて住職にお声掛けさせて頂いてるんです。

私が、投稿サイトで怖い話を投稿してる事は住職も知ってまして、「あんまり、そういう話を集めたりするのは、おすすめしないんだけどねぇ……」なんて言いながらも、結局は話してくれるんですけどね(笑)

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で、その話というのが……

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私の実家がある町というのは、小さな田舎町でして、そうそうこういった事は無いらしいのですが、ある日、一人の男性がお寺に来られまして、住職にすがるように、お話を聞いてくれ!!と言うのです。

この方、町の方なんで住職も顔を知っておりました。仮にAさんとしておきましょう。

Aさんは、全くの現実主義者とでもいいましょうか。

そんな人なので、幽霊の類いなど全く信じない。それなもんで、お墓参りなんかにも全然こられない。住職も、街中でAさんと顔を会わせる事があれば、やんわりとお墓参りにでも、と話しかけるそうなのですが、全く取り合って貰えない。

そんな人が、住職を頼ってお寺にこられた訳ですから、のっぴきならない事情があるのだろうと、住職はお話を伺った訳です。

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Aさんは開口一番、こう仰られました。

「住職、聞いてくれっ!!あのな、子供がね、知らない子供がね、突然出てきよったんですよ!!」

いやいや、小さな田舎町ですけど子供は居る。いくら町民同士顔見知りとはいえ、知らない子供も居るでしょう。

住職はそう思ったんですが、話を聞いていくと、どうやら全く違うらしい。

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Aさんはその日、仕事が休みでした。前日、仕事帰りに同僚と呑みあげた揚げ句、二日酔いで夕方まで倒れていたんです。

夕方になってやっとこ具合が良くなってきた。小腹が空いたので、街中のスーパーまで買い物へ行くことにしました。

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あ、言い忘れておりましたがこのAさん、ちょっと前に離婚されて、独り暮らしをしておりました。

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話を戻しましょう。

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Aさんの家からスーパーまではそんなに遠くありません。Aさんは自転車に股がってスーパーへ向かいました。田んぼが広がる道を颯爽と走ってますと、ふと、遠くの田んぼの畦道辺りに小さな人影が見える。

(ん?子供か??)

その人影までは距離があるのではっきりはわからない。ただ、胸の辺りが鮮やかな赤色をしていて、それだけが目立っていました。

(なんだろうなぁありゃ??)

Aさんはこの時、不審には思ったのですが大して気には掛けませんでした。そして、その日はそのまま買い物をして、何事もなく家に帰ったそうです。

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翌日は仕事。Aさんは、仕事の行き帰りに車を使っていました。出勤の為、田んぼが広がる道に車を走らせる。

と、昨日と同じく、遠くの田んぼの畦道辺りに、また、小さな人影が見える。

「あれ??昨日の奴じゃねぇか……??」

思わずAさんがそう呟いたのには、訳がありました。

その人影の胸の辺りが、やっぱり赤く目立っていたからです。

昨日と同じような奴が、また、同じような所に立っている。

Aさんも、これには少し薄気味悪さを感じたももの、仕事中に思い出したりって事もなく、その日もいつもと変わりなく、1日が終わりました。

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ところが、ここから毎日、遠くの田んぼの畦道辺りの、同じような所に、胸の辺りが赤い小さな人影が立っている。

Aさんは、だんだん気味が悪くなってきた。

(何で毎日、あいつはああやって立っているんだ??)

毎日、田んぼの道は通らないといけないので、Aさんは極力、そいつが立っている方は見ないように、気にしないように過ごしていました。

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しかしながら、怪しげな人影が現れて20日程経った頃、Aさんはある事実に気がついてしまいます。

極力、人影が居る方を見ないようにはしていたものの、やっぱり目の端には入っていて、気にはしてしまっていたのです。

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どうやらこの人影、ちょっとずつ近づいて来ている。

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20日前は、はっきりとした姿までは解らなかったのですが、今でははっきり、見えてしまっていたのです。

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袖がだらりと長い、ボロボロの着物の様なものを羽織り、よだれ掛けの様な、真っ赤な前掛けをつけている、目の細い5歳位の男の子。頭はボウズに刈り上げており、どう見ても今時の子供ではない。いくら田舎町とはいえ、そんな格好をした子供は居ませんから。

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それでもAさん、幽霊の類いは信じたくない。透けて見える訳でもなく、形としてはっきり見えている。

気味が悪いながらも、ただの子供だろうと自分に言い聞かせて、気にしないようにしてたみたいなんですが……

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Aさんは、それから更に、20日位は頑張ったみたいなのですが、その間にもその子供は、どんどん近づいて来ている。

今や、田んぼから上がってきそうな程、通勤時のAさんの車に近づいていました。

Aさんも、これには流石に堪らなくなって、住職の所に転がり込んできた……

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という訳なんです。

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Aさん、怪しげな人影が出始めて、40日くらい頑張ってたんですね……ビビりの私には信じられない話です……

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住職は、この話を聞くと少し考える素振りを見せ、険しい表情になると、Aさんに質問を投げ掛けました。

「……うん。Aさん、貴方……その人影が出てくる様になる前、何か、お地蔵様にイタズラなどされませんでしたかな??」

そうしますと、Aさんの顔からみるみる血の気が引いていき、真っ青になってしまいました。

「えっ!?いや、なぜそれを……。いや……は、はい。実は……」

Aさん、怪しい子供が現れた日の前夜に、会社の同僚と、居酒屋でたらふく酒を飲んだそうです。そして、べろんべろんに酔っぱらって家に帰る途中、少し夜風に当たろうと、家に着く少し前にタクシーをおり、田んぼの広がるいつもの道を、ふらりふらりと千鳥足で歩いて帰っていた時でした。

おしっこがしたくなった。

酔っぱらっていたせいもあったのでしょう。

ここでAさん、あろう事か、田んぼの道の脇に立っているお地蔵様に、小便をかけてしまったそうです。

流石に住職も、これにはAさんに対して説教をされたみたいです。

「Aさん、貴方の前に現れた子供というのは、間違いなく、そのお地蔵様でしょう。ボロで袖の長い着物に、赤い前掛け、お地蔵様の格好そのもので御座いますからな。早速、お経はあげさせていただきますけれども、ただ、それで何とかなるかどうかは解りませんよ……」

こうしてその日は、住職がお経をあげ、Aさんは頭を下げて帰っていかれたそうなのですが……

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その9日後、Aさんは、見通しの良い、田んぼの広がる真っ直ぐな一本道で、お地蔵様が立っているすぐ脇の電柱に追突する事故を起こし、亡くなってしまいました。

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そうです。Aさんが、妙な人影を見掛けていたという、その場所で……

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……この事故が、お地蔵様と何かしらの関係があるのかどうかは解りません。ただ、Aさんが亡くなったのは、お地蔵様にイタズラをしてしまった日から、ちょうど49日後だったそうですよ……

Concrete
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