中編3
  • 表示切替
  • 使い方

日曜日よりの死者

wallpaper:958

 其の日曜、午前一時。

 仮装大会に興じる渋谷の群衆から暴徒が発生、軽トラの横転を端緒に混乱が拡大。

nextpage

センター街を中心に強奪や傷害行為が波及し、警官が多数動員されるも対応は追いつかず、鉄パイプなど凶器を手にした者達と数カ所で衝突、遂に発砲事件に至る。

ごく僅かの間に死傷者は3ケタにのぼり、夜明け前、スクランブル交差点は腕や脚の破片が撒き散らされた血の海と化していた。

nextpage

 この事態へ政府は戒厳令を敷き、自衛隊の出動を決定、しかし暴力の嵐は収まることなく新宿へ飛び火、団結したパリピによって都庁が占拠され人質事件に発展、及んで永田町の政治機能が支配下に置かれてしまう。

nextpage

昼前には国会議事堂はダンスホール風の内装に調えられ、巨大なサウンドシステムからは爆音できゃりーぱみゅぱみゅのエンドレス再生。

苦渋の決断で議事堂への陸空からの攻撃を開始するが、国家転覆を狙っていた左右両翼のカルト的過激派が同時に武装蜂起して是れと戦い撃退。

nextpage

 いよいよ総理は、秘密裡に進めていた計画を実行せざるを得なくなってしまった。

 テロ等による暴力行為の拡大は、いついかなる政府に於いても経験する可能性はある。暴徒への対応を研究した結果、総理の趣味に最も合う方法として『60年代デトロイト方式』が採用されることになった。

nextpage

当時のデトロイト警察の慣例である「黒人であれば無罪だろうがぶん殴って黙らせる」という非常にシンプルな方法だが、とはいえ島国日本の警官では他人種を日常的に差別するという習慣があまり無いのが大きな問題であった。

nextpage

 総理が設置したテロ等対策委員会はそこで、異例の方法を採用した。

現役時代の人種差別主義者にそのまま働いてもらうのが最も効果的であるとの判断から、デトロイトへ多額の寄付をして墓を暴く権利を獲得。

nextpage

黒人を2ケタ以上不当に殺した経験のあるデトロイトの白人警官の死体を数百体、密輸して、同時に脳神経外科や運動生理学の専門家など、各分野のトップを招集。

死者の蘇生に成功してしまったばかりか、生前の性格を電気刺激で復活させて、さらにトレーナーをつけて丁寧なリハビリを重ね、既にデトロイトゾンビ部隊が完成していたのだ。

nextpage

 其の日曜、午後六時。

 渋谷の暴徒の勢いは衰えず、そこかしこで誰もがダンスと略奪に興じている現地へ、ゾンビ部隊が多量の銃火器と共に投入された。

nextpage

直前に部隊の脳へインプリンティングされたのは『パリピと思想団体への差別意識』であったので、夜を迎える前に渋谷は肉片と沈黙の幕に覆われた。

いくら攻撃しても死ぬことがない彼らは活躍を重ねて都庁と議事堂を奪還、このようにして事態は収束を迎えた、かと思われた。

nextpage

 問題は彼らの管理方法にあった。

 攻撃目標のリセットが出来ない使い捨て部隊だったのである。

nextpage

 ゾンビ部隊は今も渋谷を彷徨い続けている。

 その潰れた眼球や焼けた肌は、仮装ではないのだ。

Normal
コメント怖い
10
8
  • コメント
  • 作者の作品
  • タグ

@車猫次郎 様
細かい描写をするとめっちゃ長くなるので敢えて経過報告的にまとめましたw
ロメロのゾンビはじつはやや切ないんですよね
自由への主張も籠められている映画だと感じました

返信

いやはや、実に目まぐるしい場面展開。
ジェットコースターみたいで、面白かったです、
ゾンビ映画は、昔からよく観ました。いろいろな監督が撮ってますが、私はやはり、シンプルですが、ジョージAロメロの作品が一番好きですね。

返信

@来道 様
パリピというのは単なる呼称ですが、
戦後のモボモガとか昭和のたけのこ族とか平成のチーマーとかそういう種類のものですね
いつか跡形も無く消え去るいつものマスコミのジャンル商品です
渋谷の文化とはつまり資本主義の象徴としての消費文化でしょう。
翌日の路上のゴミがすべてを証明しています。

立川談志は文明と文化を明確に区別していましたが、
明るさの無い渋谷の流行はいつか恥ずべきものとなるくだらない文化です。
誰がいつ振り返っても何の生産性も無いゴミがゴミを生むだけの日常がつまり、あの文化です。

我々、というより今の子供達に覚えていて欲しいと思います。
渋谷の大人達は信じられないほどにつまらないことで笑うセンスの無いクソバカ野郎どもばかりだったということを、きちんと学習して、
大人の多くは、年功序列とか格差社会をまず無視してさえも侮辱してもしたりないほどの底脳のバカ共ばかりだということを、
次世代の子供達にきちんと見極めて欲しいと思います。

尊大ぶる権利など例えば僕の世代にはすでになく、
そして戦後からずっと大人達は永遠に情けない存在なのです。
これを理解しなければ、若者を本当に守り育てる社会は生まれないだろうと思います。

文句ばかり言って何もしないおっさんどもを本当に不思議に思います。
説教したいなら渋谷で、あのハロウィンの真ん中で説教すれば良い。
世の中を変えたいならまずあの渋谷を変えるために動けば良い。

でも、誰も、何もしません。
それが今の大人ということです。
世の中について叫ぶ権利を持たない大人しか存在しないのに、
若者の叫びに応えることはまず無理でしょう。

返信

まさにパリピ!
しかしパリピがわからない…

返信

@とっつ 様
ハロウィンについて僕はよく知りませんが今回の渋谷に関しては、外国の文化を日本人が汚してしまったという嫌な感じを受けています。
イベントとして普通に楽しもうとしている人達の邪魔をする彼らの行いは良くないですなあ…

返信
表示
ネタバレ注意
返信
表示
ネタバレ注意
返信
表示
ネタバレ注意
返信
表示
ネタバレ注意
返信
表示
ネタバレ注意
返信