中編6
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「見える人」中編

(前編のあらすじ)

心霊スポットに出掛けて以来、心霊現象に悩まされるカノコ。

彼氏のカレオは自称・見える人のミエコに相談したが、何故か事態は悪化。

カレオに問い詰められ、逃げようとしたミエコだったが、その行く手を阻むものが…。

謎の美少女・ミコの登場により、事態は大きく動き出す。

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カノコの異変を巡り、

不穏なムードになったカレオ、ミエコ、そして、この僕・ボクオ。

そこに一人の女生徒が割って入ってきた。

・・・

ミコだ。

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ミコは、この地に古くからある由緒正しい寺の一人娘。

普段は家業の手伝いで、巫女(みこ)をしている。

無口で物静かな性格で、友達と呼べるようなクラスメイトはいない。

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周囲と馴染めないのではなく、

周囲を寄せ付けないようなオーラを

あえて身にまとっているようなタイプの人間だ。

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一見すると、知性的で落ち着いた雰囲気のある美少女なのだが、クラスメイトからは近寄り難い「変わり者」と認知されている。

そんな彼女の突然の登場に、

ミエコだけでなく、カレオも僕も呆気に取られた。

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「いい加減、霊能者ごっこはやめたらどうなの?」

神々しいオーラを身にまとったミコが、鋭い口調で言い放った。

どうやら、事のいきさつを見守っていたようだ。

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「私にはわかる。

恐らく、カノコは今、大変な状態にある。

何らかの救いの手を差し伸べる必要があるわ。

もしかしたら、一刻を争う事態かも知れない。

馬鹿馬鹿しい言い争いは、いい加減にして。

カノコを助けたかったら、今すぐ私をカノコのところに連れていって」

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僕たちは、ミコの剣幕に圧倒され、

冷静さを取り戻した。

そして、まるで救世主のようなミコの言葉に素直に従い、

ミコ、カレオ、ミエコ、僕の4人で、

さっそくカノコの家に見舞いに行くことになった。

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カノコは、カレオらと一緒に心霊スポットに出掛けて以来、

悪夢にうなされ続けるようになったため、悩んだ末にミエコに相談。

対処法を教わり、それを実践したところ、

何故か事態は悪化したのだった。

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カノコは部屋に閉じ籠ったまま出てこなくなり、

一週間ほど不登校が続いている。

家族が説得を試みても、ケダモノのように周囲を威嚇し、

まともに話すらできない状況になっている。

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カノコの家に着くと、状況が状況だけに、

家族は最初、カノコに会わせることを拒んだが、

由緒正しい寺の一人娘であるミコを伴ったことが功を奏し、

カノコの部屋に通してもらえることになった。

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その際、ミコは、とあるお願いをしていた。

「先に、仏間に案内して頂けませんか?」

そして、仏間に通されたミコは、部屋全体を入念に確認した。

「…なるほどね…」

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いよいよカノコの部屋の前に来ると、

部屋に入る前に、ミエコから教わってカノコが実践した

盛り塩を確認した。

「…やっぱりね…」

ミコの瞳がキラリと光った。

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部屋に入ると、カノコは布団にくるまりながら、

ベッドの上からケダモノのような荒々しい視線をこちらに向けた。

ミコが近づこうとすると、

カノコはまるで野犬のように喉を鳴らして、激しく威嚇してきた。

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しかし、ミコは動じない。

一歩一歩、静かにカノコへと近づく。

一触即発の距離まで近づいたときだった。

ミコは、袖の中からお札のようなものを取り出すと、

すかさずカノコの額にはりつけた。

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すると、カノコがまとっていた殺気は消え失せ、

ミコの腕の中で、スヤスヤと寝息をたてながら、

安らかな寝顔で寝入ってしまったのだ。

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それはまるで、キョンシーを封じ込めるような、

あるいは、猛獣を一瞬で手慣づけるムツゴロウさんのような、

常人には理解し難い状況だった。

「安心して。お札の力で、少しの時間、安らかに眠っているだけよ」

ミコは穏やかな笑みを浮かべた。

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「さて、それじゃあ、何から説明しようかしら。

でも、その前にまずは状況を整理しないとね」

そう言うとミコは、カレオとミエコに

これまでのいきさつを振り返らせた。

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事の始まりは、今から2週間ほど前。

街の郊外にある廃墟に、カレオとカノコのカップルらが

肝試しに行ったことから始まる。

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肝試しの最中は、特に心霊現象は起きなかったが、

帰宅後、カノコは毎晩、

心霊現象にうなされる日々が続くようになる。

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その心霊現象とは、夜中にふと目が覚めると、

部屋のドアが開いていて、

そこに見ず知らずの少女が背を向けて立っている。

すると、廊下の方から不気味な足音が聞こえてきて、

言い知れぬ恐怖がカノコを襲う。

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恐怖に怯えるうちに、意識を失ってしまったカノコは、

夢の中で、不気味な何かに追いかけられるのだが、

追い付かれる寸前に、体が淡い光に包まれ、夢から覚める。

そんな日々が一週間ほど続き、心身ともに憔悴しきったカノコは、

藁にもすがる気持ちで、ミエコに相談を持ちかけたのだ。

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「で、ミエコはなんてアドバイスをしたの」

ミコは切れ長の瞳をミエコに向け、問いただした。

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「取り憑いた少女の悪霊が、

カノコに悪夢を見せるため、

毎晩やって来たわけだから、

悪霊がこれ以上、近づいてこないように、

部屋の四隅とドアの外側に盛り塩をするといいわ、

と言ったわ。

それがなんなのよ」

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すると、ミコは声を荒げた。

「ミエコ、あなたなんてことをしてくれたの?

本当に、この状況が理解できてるの?

霊能者ごっこはいい加減にして!!」

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ミコは、腕の中のカノコをギュッと抱き締めると、

フッとひとつため息をついて、穏やかに語りはじめた。

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「まずは、その少女のことから話さないといけないみたいね。

そもそも、彼女は悪霊なんかじゃない。

ミエコのお父さんの双子の妹で、10歳の時に亡くなっているの。

さっき、仏間で遺影を見て確信したわ。

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そして、仏になった彼女は、

カノコの家にとっては守り神のような存在になっているの。

特に、カノコにとっては強力な守護霊でもあるわけ。

肝試しのときは、彼女が守ってくれたお陰で、

心霊現象が起きることはなかったようね。

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だけど、その心霊スポットの廃墟には悪霊が潜んでいた。

肝試しのあと、カノコのあとを追ってきた悪霊は、

隙を見てカノコに取り憑こうと、

毎晩カノコの部屋に侵入しようとしていたわけ。

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だけど、強力な守護霊である彼女が、

部屋の入り口で身を挺してカノコを守り続けたり、

淡い光の玉となって、カノコを悪夢から救い出していたのよ」

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「なるほど、そういうことだったのか…

僕自身は霊感がないからよくわからないけど、

話を聞けば、合点が行く」

僕は深く感心した。

「だけど…」

ミコは表情を曇らせた。

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「そんな守護霊である彼女に対して、

ミエコがカノコにさせた誤った悪霊退治は、

守護霊である彼女を、とことん弱らせてしまったのよ。

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考えても見て…、

彼女はケダモノのような悪霊と対峙して、

身を挺して守っていたのに、

背後からは盛り塩によって、炎に焼かれるような痛みに、

さらされていたのだから…

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彼女の霊力は今や、風前の灯。

守護霊の力を無くしたカノコは、

まんまと悪霊の手中に堕ちてしまったのよ…」

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ミコの話には、確かに説得力がある。

「…そんな…」

さすがのミエコも認めざるを得ないようだ。

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「悪霊に取り憑かれてしまったカノコはどうなってしまうの」

事態を見守っていたカレオが重い口を開いた。

「悪霊の正体は、ある特殊な欲望の塊なの。

簡単に言うと、ロリコン野郎ね。

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そんな悪霊が、少女の身体に乗り移ったら、やることはひとつ…

まあ、コミケで売ってる薄い本とかを読むと、

だいたい察しは着くと思うけど…」

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シリアスな展開だったはずが、

いきなりのお色気展開に、

Dボーイの僕は度肝を抜かれた。

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綺麗系のカノコのムフフンな姿や、

美少女に違いないミコが意外なエロ知識を持っていたことに、

興奮を否めず、想像が膨らむと同時に、

僕のボクチンがピクリと反応した。

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そんな僕をよそに、

ミコは不安げな表情を浮かべたままだ。

「悪霊はケダモノと化していて、このまま取り憑かれ続ければ、二度と人間の心を取り戻せなくなってしまうかもしれない…」

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「なんてこと…」

カレオはその場に泣き崩れた。

優しかったカノコに二度と会うことが出来なくなるかもしれないという不安…

軽い気持ちで心霊スポットに行った、自分の軽率さへの後悔…

カレオは絶望の縁に立たされた。

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「でも、まだ希望はある。

悪霊が潜む、郊外の廃墟…

そこで、全ての決着を着けるわ」

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ミコの言葉に、

一同が「まさか!?」という表情を浮かべる。

「行きましょう!!あの廃墟へ!!」

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(廃墟で明らかとなる悪霊の正体!

ミコの家系に伝わる秘密も明らかに?

物語は怒濤のクライマックスへ!!

「見える人」(後編)に続く…。

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