短編2
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帰路

びちゃっ、

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部活の帰り道、十字路を曲がった所で水を掛けられた。

「あぁ、ごめんよお嬢ちゃん。

お花にお水をあげていたら飛び出して来たものだから、びっくりしちゃったよ」

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見ると、右手に水の流れ落ちるホースを握った小太りのおじさんが、大袈裟に驚いた顔に汚らしく口角を上げ黄ばんだ歯を剥き出しにして立っていた。

薄い頭に脂汗が浮き出ていて、そのわざとらしい笑みに不潔な嫌悪感を抱いく。

黄ばんだ前歯は1つ欠けていた。

おじさんは、見開いた目を狡賢いネズミのように細めると、左手を手刀のようにかざしてゴメンゴメンと謝った。

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「濡れちゃったよね。風邪ひいちゃうといけないから、お家に上がって上がって」

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ねっとりとした猫なで声に、水の冷たさとは違う寒気がゾワリと背筋をなぞった。

ニコニコとした表情で言うのだけれど、細められた目の奥がギラギラしていて怖かった。

さぁ上がってと、繰り返し促すその手の先に見える開いた玄関の奥は、洞窟のように真っ暗だった。

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「…いや、いいです。家直ぐ近くですから」

そう言うと、おじさんから目を逸らしながら足早にその場を離れた。

ちょっと待ってと後ろから声がしたが、振り返らずその場を離れた。

肩がけに濡れた夏服の制服が張り付いて気持ち悪い。

最初の十字路を曲がった所で、私は全力で逃げ帰った。

夏の明るい夕暮れを包む蝉時雨が、いくつもの嘲笑のように私を指差した。

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足早に逃げ帰り、ふいに、私は思い出す。

…視線を逸らして俯いた視界の中、おじさんの家の軒先に、花壇なんて何処にも無かった。

Concrete
コメント怖い
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