中編4
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夢についての考察

「昨日怖い夢見ちゃった‥ポテトサラダがね‥」

「なんだよお前。幽霊のあたしらに怖いもへったくれもないだろ?」

「まぁ死人がまだ夢を見ているのかっていう野暮なつっこみは無しだけれど‥夢といえば、それにまつわる怖い話はかなりの量があるのよ。今回はそれらについて軽い紹介をしようかしら。」

この3人は「オカルト研究会」を自称し、今も他の生徒が帰った後、空き教室で勝手に集まりお喋りをするのが日課になっている。3人とも女子高校生である。

いつもぼーっとしていて、少し抜けている楓

少し口が悪く、考え方にどこか時代を感じさせる舞

オカルト知識が豊富だが、その内容が少し偏っている咲。 

この物語は、その3人による会話劇である。

「そもそも、人が夢を見ている時は脳はまだ起きているというのは有名な話よね?この脳が寝る、起きるのスパンは約90分。だから6時間寝ていればだいたい4種類の夢を人は毎日見ているのよ。」

「マジかよ。でもそんなに覚えてねえし、そもそも夢って起きたらすぐ忘れちまうもんだろ?」

「脳は私達が普段考えようとして考えてる事以外にも、凄まじい情報を処理しているの。だから重要じゃない情報はフィルターにかけられて、すぐ忘れるようになっているのよ。夢の殆どはそうやって消えるの。‥逆に中々忘れない夢は重要なメッセージだったりしてね。」

「へー。あ、あたしあれだぜ。夢の中で殺人者に追いかけられたり、ビルから飛び降りたり‥」

「相変わらずベタね。夢は脳のイメージだから、イメージ出来れば何でも出来るのが夢の凄いところなのよ。逆に言えば、イメージ出来ない事は絶対に起こらないわ。どんなに怖い殺人者だって、高いビルから飛び降りて激痛が走った所で、それは今までに自分が感じた物であるはずなの。悪夢に悩まされてる人はこう考えたら、少しは対処できるんじゃないかしら。」

「なるほどなぁ。てか今回の話は全然怖くねえな。あたしにとっちゃありがてえけど。」

「もしかしてわたしに気を使ってくれたの‥?」

「今更気を使う仲じゃないでしょう?楓はもう十分怖い思いを夢でしたのよね?じゃあ今更すこーし追い討ちをかけた所で、大丈夫なはずよ?」

「えっ」「お前‥」

「まず、イメージさえ出来れば何でも出来るという話。これは本人がイメージしようとしてイメージする、という事じゃなくて、脳が勝手に考えてしまった事でさえ実現可能という事なの。例えば、自分が生きてきて大した怪我をしたことがなかったとしても、何かの情報を見たり聞いたりして、それから無意識に凄まじい痛みをイメージしてしまったら夢の中では凄まじい激痛が走るわ。その線引きは誰にも出来ないのよ。」

「な、なんかヤバい話に‥」

「夢の続きという典型的な怪談があるの。これは5人の別人が前の人から夢の内容を聞いて同じ夢を見るんだけど、人ごとに順番に夢が進んで行って、最後に見た人は夢の中で死んでしまうのよ。因みにその人は数日後現実でも死んだわ。」

「夢の中で死んだら現実でも死ぬだぁ?そんなバカな話があるかよ。」

「何も珍しく無いわ。脳がそう強くなイメージしすぎて、脳からの信号が乱れたり、神経が狂ったり‥睡眠中の突然死、結構有るのよ?」

「‥」「な、なんかえげつない話だな。」

「違うパターンで、この話を聞いたら夢の中で××をしないとそのまま夢の中で殺されるっていう話もあるわね。こういう話はその話自体がトリガーになってイメージを植え付けるっていうたちの悪い話の典型的な例よ。猿夢なんか少し違うけど、系統は同じよ。」

「そんな話に対処法はあるの‥?」

「対処法自体は結構簡単だったりするのだけれど、その前にもう1つだけ説明しておこうかしら。二人は明晰夢って知ってる?」

「あ、知ってる。夢の中を思い通りに出来るってやつな。」

「そう。これは夢だって夢の中で認識する事で、イメージそのものをねじ曲げて夢を好き勝手に出来る夢のことよ。‥これ、何回もやると夢と現実の境が危うくなって中々危険だし、何より夢は自分のイメージした事しか起こらないから未知の喜びは得られないっていう矛盾があるのよね‥そりゃ夢の中でハーレムを築いた所で、そいつらは所詮イメージ通りの行動しかしないのよ。そこに気がついたら悲しくならないのかしらね。」

「何か例が生々しくないか‥?まぁいいや。所で、お前は明晰夢出来るのかよ?」

「昔は出来たんだけどね。馬鹿馬鹿しくなって辞めたわ」

「え、じゃあさっきのって」

「同じ理由で夢日記もオススメしないわ。夢と現実の境を崩すのは危険なのよ。対処法の話に戻ろうかしら。」

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「何回もいうけど、夢は脳が考えていることなのよ。無意識でも考えさえすれば起こり得るのが恐ろしい事だけれど、逆にイメージだと理解すれば自分に直接的に被害は及ぼせないはずなの。自分の体の一部なんだから。まぁそう解っていても怖いものは怖いわけで、そこを突いてくるのが怖い話の上手い所ね。こんな所かしら。」

「なぁ、気になってたんだけど、最初に楓が言いかけてたポテトサラダって結局なんだったんだよ。」

「あ‥そういえば忘れちゃった。何だったんだろ」

「もう1つ対処法あったわ。怖い夢を見たらそれを人に話なさい。そうすればその対象をそいつに移せるから。最初の例みたいにね。」

「相変わらずおっかねえなぁ‥」

感想。

夢ってよくよく考えたら不思議だよね。

それにしても、何だったんだろあの夢。ポテトサラダっていうのは何となく覚えてるんだけど‥今日寝るときに続き見ませんように。

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「ポテトサラダねぇ‥なんなんやろこれ。まぁ所詮は夢だから気にしないでおきやすかね。‥まぁまだ記憶取り戻してないみたいや。ひと安心やな。」

Concrete
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@ふたば
あ、ポテトサラダの元ネタ知っておられましたか‥!感激です。因みに自分の話にはそういった怪談の一部分がそれとなく出てるので、気づいて頂ければ嬉しいです。

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@ふたば

コメントありがとうございます!嬉しいです!

あー‥その点なんですけども、個人的には幽霊だろうが元々人であった以上、数えかたとしては「X人」としています。混乱させてしまってすみません!

それとは別に、ヒトは題材としてチャレンジしてみますね!ありがとうございました!

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