短編2
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「ホタル」

これは戦争を体験した、祖母から聞いた実話です。

祖母は6歳で当時、戦時中だった為、田舎に家族と共に疎開していました。

祖母には兄が一人いたそうですが、戦争が激化するにつれて、とうとう兄も戦争に行かなければならなくなりました。

戦場に向かう前日、兄は祖母の母(以下ひいばあちゃん)に「お母さん。自分はこれで戦場にいきます。でも、必ず、必ず帰ってくるから。なんとしてでも。だから、待っててください。」と言ったそうです。

ひいばあちゃんは「待っているから。必ず帰っておいで」と涙ながらに言ったそうです。

それから、3ヵ月後、ついに戦争は終わりました。

しかし、いつになっても兄は帰ってきませんでした。

戦死した。

この連絡が来たのは、それから1ヵ月後の事でした。

それを聞いた、ひいばあちゃんは「約束を破るなんて、なんて親不孝な子供なんだ。親より先に死ぬなんて…」と泣いたそうです。

その日の夜。

ひいばあちゃんが寝ようとした時、一匹の「ホタル」が部屋に入ってきました。

その「ホタル」はまるで、ひいばあちゃんを労るように、また、ひいばあちゃんに申し訳なさそうに、ひいばあちゃんの周りばかりをぐるぐると飛び続け、またどこかに飛んで行ってしまいました。

その日のひいばあちゃんの夢の中に、死んだ兄が現れ「お母さん。ごめんよ。俺、ホタルになってでしか、お母さんに会えなかったんだ。もっと、お母さんと一緒にいたかった。本当にごめんよ…」と言ったそうです。

ひいばあちゃんは、それから2年後に還らぬ人となりましたが、戦争が終わってから毎年、必ず家中の窓を兄の命日にあけます。

また、いつでも兄がひいばあちゃんに会えるように…。

約束を守れるように…。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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