中編3
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出るラーメン屋

 大学一年の時に光る人型に遭遇してから、オカルト的なことに興味を持つようになった。

 地元で、俺の世代ではコックリさん等のオカルトブームは鳴りを潜めていた。

 逆に霊が視えるとでも言おうものなら、即座にそいつは痛い子扱い。

 侮蔑の対象ですらあったのだから、自然とそういうものからは遠ざかる。

 俺自身、興味もなかったが実際に自分の目で見たとなると逆に興味がわいてくる。

 前述の体験も恐怖というよりは衝撃、不可解だという気持ちが強く、全然痛い目に会っていないので、それからの俺はオカルト、心霊的なものにセンサーを全開にして自分から突っ込んでいくようになった。

 

 そこから一年が経った。それまでの活動で実感したのは、やはり自分には霊感がないということだった。K市には地元で有名な心霊スポットがある。自転車で十分に行ける距離なので何度も通ったがはっきりとした霊体験は一度もなかった。一度だけ、恐怖体験をしたが霊なのか確認していないために除いておく。

 大学2年時、俺はコンビニでアルバイトをしていた。

 その時には既に現在のスタイルである、自分で霊体験をしようとするのではなく、身近な人が経験したオカルト話を蒐集するというやり方で興味を満たしていた。

 コンビニの隣に道路を挟んでラーメン屋がある。そこの店員二人が勤務終わりに毎回コンビニに寄って夜食を買っていく。自分はレジ打ちをしているので自然と二人と話す機会が増えた。

 二人とも気さくな人だった。男女で男をA、女をBとする。

 ある時、十分に仲良くなったな、と思い心霊体験をしたことがないかと二人に聞いた。

 自分の経験上、打ち解けていない状態で心霊話を切り出すとよく引かれるからだ。

 すると、Aは一切霊感がないというがBはかなりの霊感の持ち主らしくよく霊を見るという。

 

 例えば、最近ではいつ見たのかとBに聞くと驚きの答えが返ってきた。

 今朝、だという。

 その時はもう明け方近かったから正確には昨日の朝になる。

 場所は何と働いているラーメン屋だ。

 Bは霊感が強いというのか分からないが、普通の人間と霊の区別ができないほどにはっきりと視えるそうだ。

 Bはバイトだが店長に近いことをしている。深夜まで通常のシフト通りに働き、一度帰ってから朝にまた来てその日の仕込みなどを行っているそうだ。

 昨日の朝もそうして一人で仕込みをしていると客席に初老の男性が座っているのが厨房から見えたそうだ。

 あまりに堂々と座っているので最初は霊だとは思わず、何事かと事情を聴きに近づいた。

 すると、近づいたとたんにスッと消えてしまったそうだ。

 霊感の強いBもまさか自分が働く店で霊が出るとは思わず困惑したそうだ。

 だが、仕込みが忙しく特に怖いと思っている余裕もなくそのまま一人で作業を続けたという。

 メンタル強いなB。

 

 俺はいつくかBに質問した。

 中でも驚いたのが初老の男性が出た時間だった。

 朝の八時ぐらいだという。

 幽霊と言えば夜に出るんじゃないのか。

Concrete
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