中編3
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ガサガサ

 当時、地元民には有名な心霊スポットが住んでいる場所の近くにあった。

 そこは公園と名前がついていたが俺からすると森か山という印象だった。

 車で行くとすぐだが、徒歩や自転車で行くとそこそこの時間をかけて傾斜のきつい坂を上らなければいけない。紅葉などのシーズンには綺麗な景観らしいが、俺には正直、前述した印象しかない。好きな人にとっては申し訳ないが。

 閑話休題。 

 大学一年生の時、その公園が心霊スポットだと聞き、手あたり次第に知り合いに肝試しに行こうと誘ったが断わられた。大学生といえばそういうイベントは大好物だと思ったがそんなことはなかった。あるいは俺と行きたくはないという話だったかもしれない。

 ともかく一緒に行ってくれる人がいないので一人、チャリンコを漕いで行った。

 現在から思うと、その行動力には我ながら引くくらいだ。

 時間は深夜。その時はまだバイトをしていなかったので気持ちも楽だった。

 公園に至る道にはいくつかルートがあり、公園自体はちょっとした山の頂上付近にある。

 俺は自宅から近いだろうという理由で、K市の駅に続く国道沿いの道から入っていくルートを使っていた。

 ここでぶっちゃけると件の公園自体で俺が心霊体験をしたことは結局なかった。

 確かに深夜に行くと雰囲気があって滅茶苦茶怖かったが。

 ただ、公園に行く途中で一度怖い思いをしたことがある。

 公園に行く道の国道沿いのルートは、公園自体を内包する山が行く途中にずっと続いているのだが、その道中は街灯もなく夜はすごい不気味だ。

 おまけに途中になぜそこにあるか分からない廃トンネルもあり、そこは霊感ゼロの俺でも絶対近づきたくない場所であり、俺的には心霊スポットよりも怖い場所として記憶している。

 心霊スポットに行くのにそれより怖い場所を避けるなんて、今から思えば何だか矛盾しているようだが、当時の俺からすればそれが当然というか、疑問も抱かなかった。

 その廃トンネルの近くでの出来事。

 近づきたくないと言ったがトンネルには鉄柵がかけられており、中には入れない。

 入れないのだが鉄柵の隙間から向こうが少しは見えるわけで、そばを通るときはどうしてもソワソワというか、何となく落ち着かなく、絶対に隙間の向こうを見ないようにはしていた。

 その時もそうして心持ち急いでトンネルの前を通り過ぎようとしていたのだが、

 ガサガサ!!

 いきなり、上の方で大きな音がした。

 吃驚して、思わず急停止した。心臓が早鐘のように脈打っている。

 ガサガサ!!

 その間にも音は鳴りやまない。

 無意識に発生源と思われるほうを見ると、トンネルの上部そこはもう森と呼べる部分で、

 大きな植物が生い茂っていた。

 ガサガサ!!

 音に合わせて茂みが大きく揺れている。

 俺は目を凝らして何がいるか見ようとしたが茂みが深すぎて分からない。

 ガサガサ!!

 少し、冷静になり野生動物だろうか。と考える。

 猿か、イノシシか。だけどあんな斜面ギリギリの危ないところを通るだろうか。

 茂みの揺れは一定の範囲に留まっていた。あの動きは何かを探しているような感じだ。

 しばらく見ていると人間の右肩のように思える部分がチラッと見えた。

 色褪せた緑色の作業着みたいな服だった。

 それが見えた最後、揺れは小さくなり、最初から何もなかったかのように辺りは静寂で包まれた。時間帯だからか車も通らず、シンっと静まり返っている。

 それを見た時に俺が思ったのは何だ、人間じゃないかという思いだった。

 恐らく、山菜か何かを採ろうとしていたのだろう。

 逆に安心したくらいだった。

 それで心霊スポットに行って何もなく帰ってきてからさっきのことを整理して思った。

 さっきのは人間だった。これは間違いないと思う。だが、あんなところで何をしていたのだろうか。俺が見たところからほぼ垂直に近い壁を上ろうとしても恐らく九メートル以上はある。逆に森側からあの場所に行こうとしてもほぼ崖みたいなものだ。

 普通に行ける場所ではないのだ。

 それを思い出して怖くなる。あの時俺が見たのは人間だったのだろうか、と。

 

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