中編3
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〜風になっていた〜

私は風になっていた。

陸地の見えない大海原の上を静かに穏やかに吹いていた。

隣には姿の見えない誰かがいる様で、私の手をフワッと優しく握り、共に海風となって吹いていた。

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高い所の苦手な私だが、空高く吹き上がっても恐怖を感じる事もなく、だからと言って気持ち良いとも感じず、ただ吹いていた。

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言葉を発するにも口もなく、口も無ければ顔も身体もない。

ただ、意識だけが私と認識し、風となって吹いている。

だから、誰かと手を繋いでいると言うのも感覚だけで、実際には隣の人の姿も見えなければ手の平を合わせて握っている訳ではない。

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晴れた空。

凪た海。

私の大好きな南の海風となって、風のくせに心で歌を唄っていた。

「わたしのぉ〜お墓のぉ〜まぁ〜えでぇ〜…」なんて。

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だが、ふと気が付くと、私は海から突き出た岩に有る穴に吸い込まれた。

海に突然現れた岩は、海底火山の噴火で出来たものなのか?

大海原の中、そこだけに出現した岩だった。

その岩に出来た洞窟は、海水で長い年月削られて出来たのだろう。

それ程奥行きはないが、洞窟内には沢山の蜘蛛の巣が張り巡らされ、私は只々、恐怖した。

(私は、蜘蛛が大の苦手ですT_T)

風の私には蜘蛛の巣を避ける術はなく、突き破る身体も持ち合わせていない。

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洞窟の天井近く、僅か2〜30cm程に向こう側から射し込む光りが漏れている。

私はその隙間に行きたかった。

だが、吹き込んだ風(私)は洞窟の壁にぶち当たると又海に向かい吹き返される。

そのまま外に出たいのに、意思など無視してただ吹いているだけ。

外に出る事は出来ずに、又蜘蛛の巣の間を通り壁にぶち当たる。

何度も何度も…

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後、ほんの少し上に吹けたらあの隙間から外に出られるのに。

「こんなところにいたら、子供達にも会いに行けない。」私は必死だった。

泣きたいくらいに必死だった。

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だけど、どうやっても外に出る事は叶わない。

もう、死んだら風になりたいなんて思えないと、風の私は泣きたい思いで吹いていた。

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もし、地獄と言うのが有るのなら…

自分の意識や意思が有るのに、何も思う通りに行く事のない場所に行かされる事なのかもしれない。

死ぬ程嫌いな物のいる場所へ無抵抗のまま放り出される事…。

鬼が金棒を持っているのが地獄なのではないと、そう思った夢でした。

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そんな話を先日、霊感の有った友人に電話で話をしたところ…

彼女も以前風ではないが、道路を渡ろうとしても渡れずにどうしたもんかと迷っていた時に、昔飼っていたペットが信号の向こうからやって来て助けてもらったと。

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渡っていたら恐らく、死んでいたのだろうとの事だった。

所謂、三途の川と呼ばれるものだったのではないかとの見解だった。

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確かに…

風になった夢を見た頃の私は、全くと言って良いほど、物が食べられなくなっていた。

食べられないから体力もなくなり、フラフラになってしまい、意識は飛ぶわでトイレですら行くのも辛かった時期だった。

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「もし、姐さんがその上の隙間を通っていたら、死んでたかもしれないよ?」

彼女にそう言われて愕然とした。

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最近、別の友人に聞いた話も…

突然の心筋梗塞で倒れ、臨死体験をした時の話なのだけれど…。

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懐かしい過去の出来事が本当に次から次へと浮かんで来たと言っていた。

そして、気持ち良くて心地良くて、フワフワと浮かびながら手術台に横たわる自分を見下ろしていたらしい。

余りにも気持ち良くて、このままこうしていたいと思う程だったのに、気付くと病院のICUのベッドに身体と意識が戻されていたと…。

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三途の川…。

川の向こう側。

お花畑の中で故人が微笑み手招きをしていたり、来るなと追い払ったり。

それだけが、三途の川ではないのかもしれません(´・ω・`;)

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生と死の境目…。

信号を渡らなかった友人。

気持ち良さに包まれながらも生き返った友人。

もし、私が洞窟の上にある隙間を通り抜けていたら、もしかしたら、今、こうしてここ、怖話に投稿する事も出来なかったのかもしれませんね。

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@小夜子 様
いつもありがとうございます(´;ω;`)✨
まだまだ小夜子さんも私も、こっち側の人間です((*´∀`*))
ジタバタしてもどうしようもなくなるまでは、私もこっち側にいようと思います ( ˶ˆ꒳ˆ˵ )
ジタバタしてもどうしようもなくなった時は、ちゃんと受け入れますが(b゚v`*)
それまでは、何があっても負けません♬

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@夜行列車 様
コメント&怖ポチを有難うございます ( ˶ˆ꒳ˆ˵ )

そうなんですよ!(,・`□´・)ノ"
生と死の境目があるなら、誰でも分かる方法でやって欲しいですよね((´±ω±`))

突然死…
も…
もしかしたら、そんな分かりにくい境目に迷い込んでしまって、そのままあちら側に行ってしまって…(((ʘ ʘ;)))

なんて事もないとも言えませんよね(◦•_•;◦)

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@りこ-2 ちゃん
そうなのよねぇ…(๑ó﹏ò๑)
私も友人に言われるまで、それが三途の川なんて思っても居なかったから((´±ω±`))
ただ、「あ〜…私、風になったんだなぁ〜」って、呑気に千の風を心で歌ってたんですからww

兎に角、洞窟の上の隙間から外に出たくて…
なのに、全く思うように吹けない。
蜘蛛の巣怖いし、吹き返されて外に出る事も出来なくて、ずっと繰り返し繰り返し…壁にぶち当たってをやってて…

三途の川にバージョンがあるなんて、考えた事もなかったから。

兎に角、分かりやすいやり方でやってよ(; ̄°Д° ̄)!!って、私も全くもって同感です!

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@むぅ 様
私も考えしまいました(!◎▼◎!)
風って、どうなってるんでしょうね…?
そのうち消えるものなのか…地球をぐるぐる回っているものなのか…

考えれば考えるほど、眠れなくなっちゃう〜(*≧▽≦)ノシ))

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@あんみつ姫 様
いつもありがとうございます(´;ω;`)

インフルもすっかり治り、後はこれから待ち受けている大きな課題に取り組むだけになりました ( ˶ˆ꒳ˆ˵ )

頑張って参ります(ง •̀_•́)ง‼

又、姫ちゃんとここ、怖話でお会い出来る日を楽しみにしています❀.(*´◡`*)❀.

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