中編3
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山と祭りと

その日は随分と疲れていました。

帰宅ラッシュよりも遅い時間だったため、私は座席に座ることが出来ました。

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ウトウトどころではなく電車の中で爆睡してしまった私は終着駅で目が覚めました。

家や職場と正反対なため実際に行くことはなかったのですが、噂に聞いていた通り、ホームから見ただけでも田舎とわかる場所でした。

最悪なことに、もうこの駅に来る電車は見当たりませんでした。

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無人駅の改札を抜けると右手には鬱蒼とした山、左手は住宅街がありました。

ただ人が住んでる気配はなく、昔ながらの木造建築で明かりは灯ってません。

電波も弱く地図アプリが役目を果たさないため、私は友人に駅名と迎えに来いと言うメッセージを送りました。

一通送るのに五分ほどでしょうか。

返信は来ないままだったので、私はとりあえずこの場から離れようと線路沿いを歩き続けました。

すると後ろから電車の走る音が聞こえ、徐々に明かりが近づいてきます。

確かに、終電の確認をしたはずなのに。

私は疲れていたこともあり見落としただけだろうと思いました。

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1時間は歩き続けました。

3つ分の駅を超えました。

その間に、また電車が1本来たのです。

私はその瞬間時刻表をスマホで見たのですが、そんな時間の電車はありません。

中には人もいたしどうも回送には見えませんでした。

歩いていて気づいたのですが、遠くの方から祭りのような音が聞こえるのです。

秋祭りがどの地域でも開催されていたし、夜遅すぎではないか、という点以外は不思議と思いませんでした。

だから臨時停車があるのではないかと。

私はラッキーだと思いました。

さらに30分ほど歩き続け四つめの駅に来ました。

兎に角座りたいと思い、改札を通りました。

祭りらしい鈴や太鼓の音、虫の鳴き声、心地いい風。

座った状態ですが、疲れ切った私には眠るのに最適でした。

少しも経たないうちにウトウトしましたが、間もなくして電車が近づいてくるのがわかりました。

それと同時に友人からのメッセージも届きました。

20分前に送信したようでした。

迎えに行くから電車には乗るな、山を降りろ、と。

正直改札を通ったし、目の前には電車もあるし何より疲れが体に訴えてきていて迷いました。

これ以上歩き続けるのにも限界を感じていたからです。

停車してくれた電車には少し罪悪感も覚えましたが、わざわざ来てくれる友人のために歩こうと思い立ちあがりました。

ふと何気なく電車を見ると、中に乗っている乗客全員が私を見つめているのです。

笑っているわけでもなく怒っているわけでもなく、ただただ無表情で。

それなのにその表情は脳裏にこびりついたままです。

乗客の浴衣は土のようなものが付いていて、所々破れていました。

ただ祭りに行ったような姿ではありません。

口をパクパクさせて何かを言っているようでしたが、ようやく固まった体が動いて逃げ出しました。

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何も考えずに走りました。

転んだときにヒールは折れて膝からは血も滲んでいました。

そこでやっと友人と出会いました。

車に乗って自分の状況をやっと整理することが出来ました。

どうやらこの山は何年か前に土砂崩れが起きて村が埋まってしまったようでした。

その日は祭り当日で人も多かったそうです。

田舎ですがかなり有名な祭りなので地元民以外の人間、老若男女問わずたくさんいたらしいです。

友人の友人にも同じ体験をした人がいると聞きました。

その人にも迎えにこい、と言われたそうですが、たまたま友人に予定があったらしく断りました。

最後に電車に乗るからもういい、とメッセージが来たあと、二度と連絡が取れなくなったらしいです。

友人の友人の家族に連絡を聞いたところ、行方不明で捜索されていると。

私もあの電車に乗っていたらどこに行っていたのでしょうか。

私が終着駅だと思っていた場所も立ち入り禁止で入れないのだと知りました。

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未だに私が体験した話は非日常的すぎて夢のようです。

あの日以来、祭りのような音やあの人達の表情が頭から離れません。

どうか電車で寝過ごしたりしないように気をつけてください。

Concrete
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