中編3
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オルゴール

友人sの話。

sとは小学校からの付き合いで当時は毎日のように遊んでいた。

ある日、俺とsはやっていたゲームに飽きた。

その時はsの家にいて、休日の昼間だった。

ちょうどsの両親がいなかったこともあり、俺はsの両親の部屋を見てみたいと提案した。

sの家の中でそこだけははいったことがなかった。

sは了承し、二人で部屋へ向かった。

両親の部屋は二部屋続きとなっていて手前の部屋にコタツがあり、奥の部屋が寝室となっていた。

寝室には特に何もなかった。

俺の興味を引いたのは手前の部屋で窓際にある背の低いタンスの上にある細々したアンティーク品だった。

物珍しさに俺が見ていると、sは父親が人からもらったものだと教えてくれた。

そう言いながら、アンティーク品を見るsの顔は曇っていた。

みると、海外で作られたもののように感じられ、装飾は可愛いよりは古ぼけてどことなく不気味な雰囲気をまとっていた。

俺はsのテンションが下がったのを感じて、探検を切り上げることを提案しsの両親の部屋を辞した。

sの部屋に戻りゲームも飽きたなと思いながら何をするわけでもなく雑談をしていると、突然何かの音楽のようなものが聞こえてきた。

何の音だろうと思っていると、

sがオルゴールだ、と気味悪そうに言った。

言われて、俺はさっきのアンティーク品のなかにオルゴールがあったのを思い出した。

でも、触っていないのになとsを見ると

自分が一人の時にたまに勝手に鳴り出すことがあると泣きそうになっている。

聞くと、アンティーク品の中でそのオルゴールだけに何だかいやな感じがする。もっと言うと両親の部屋に行くとオルゴールに見られている感覚がするらしい。

俺は好奇心からそのオルゴールを詳しく見たくなりもう一度両親の部屋に行こうと頼んだが今度はsが了承しない。

ふたを開けると中はどうなっているのか聞くと、気味の悪いピエロのような小さな人形がネジを回しているような装飾らしい。

でもそのピエロがかなり怖いらしくsはもう二度とふたを開けたくないと語った。

先ほどの探検でも俺がオルゴールを手に取らないかヒヤヒヤだったらしい。

そこまで聞いたらさすがに怖くなり俺はオルゴールを見るのを諦めた。

その内にsの母親が帰ってきた。

俺にジュースとお菓子を出してくれた。

俺は気になってオルゴールのことを聞いてしまった。

sの母親は笑い出して、気温の温度差でオルゴールは勝手に鳴ることもあると教えてくれた。

確かにその日は暑い日だった。

俺は大いに安心して逆にsをからかい出したがsは暗い顔をしていた。

数日後、sの家に遊びに行くと

オルゴールは捨てたよ、とsが言った。

あの後、母親が夕飯の時に父親にオルゴールについて話した。

その時にsが気味が悪いと言うと、父親は捨てると行ってどこかに持っていったらしい。

よかったじゃないか、と俺が言うがsの表情は晴れない。

鳴ったよ。

sが言った。オルゴールを捨てた日の夜に両親の寝室の方からオルゴールの音が聞こえたらしい。

そこで次の日に両親に音が聞こえたことを言うと父親は確かに捨てたと明言した

が、その後もsが一人になるとオルゴールの音が聞こえることがあるそうだ。

父親が捨てたと嘘を付いているなら納得できるがまあ、そんな嘘をついてまで残したいものでもないそうだ。

音が聞こえるだけらしいので実害はないだろうがsからしてみれば滅茶苦茶怖い話である。

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