短編2
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おいで

小学6年生の夏休みの時の話です。

キャンプ合宿の夜に肝試しをすることになり、

女子にかっこつけたかった私たちは懐中電灯ひとつもって山の中にあるお地蔵さんのところまで行き、

『奉納』と書いてある赤い垂れ幕を持ってくる、と宣言しました。

ただ山の中はほぼ完全に真っ暗ですごく怖かったので、熊や猪でも出たら命に関わる、と主張して男子5人で行くことにしました。

引率の先生にばれないようにこっそり出発し、みんなで手を取りあいながら恐る恐るお地蔵さんのところまで行き、

意外と簡単に奉納の垂れ幕を獲得することができました(今になって思えばかなりバチ当たりですが)。

真っ暗で怖かったものの幽霊的なものに出くわすことはなく、少し拍子抜けした感じがあったので、五人のうちの一人が

「じゃあこの先の殺人事件のあった川まで行こうぜ」

と言い出しました。

そこは10年ほど以前に強姦殺人事件のあった川があり、心霊スポットではありませんでしたが、危ないエリア、と認識されていました。

「さすがにあそこはやめようよ」

「そろそろ帰らんと先生に見つかったらしばかれるよ」

「がんばって行っても証拠に持って帰れる物がない」

ということでキャンプ場にもどることになりました。

無事にキャンプ場に帰り、女子たちに垂れ幕を見せつけてひと通りかっこつけ、

その日はおとなしく寝ました。

翌朝、先生にばれないようにまた五人で垂れ幕をお地蔵さんのところにもどしに行きました。

そこで

「明るくてもけっこう怖いな」

「たたりとかないよな?」

と何気ない会話の中で

「お前なんで昨日殺人事件の川まで行こう、とか言ったの?」

と私が尋ねると

「え?おれじゃないよ」

「おれでもないよ」

と五人全員が否定しました。でも五人全員が

「誰か」が川に行こう、と提案したことははっきり覚えているのです。

結局誰が川に行こうと言ったのかがいまだにわかりません。

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