中編6
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仮面の家

舞「4話目。まぁこうなるよな。またあたしの番か。お前らお面とか集めてたことあるか?夜店とかいくとさ。色んなキャラクターのお面とか狐面とか、かわいいやつもあればちょっとどうなんだっていうデザインまで色々あってよ。」

楓「うーん‥わたしはあんまり興味なかったなぁ。」

咲「私も同じね。お面は演舞で使われる能面とか、海外で儀式をするときにはめられてる類いしかみたことないし。お祭りも全然行かなかったもの。」

舞「そっか。そういや近々祭りがあるみたいだし、みんなで行くか?いつだったかなぁ‥まぁそんな話はさておき、今回の話はそんなお面を集めた家にまつわる話だ。」

この3人は「オカルト研究会」を自称し、今も他の生徒が帰った後、空き教室で勝手に集まりお喋りをするのが日課になっている。3人とも女子高校生である。

いつもぼーっとしていて、少し抜けている楓

少し口が悪く、考え方にどこか時代を感じさせる舞

オカルト知識が豊富だが、その内容が少し偏っている咲。 

この物語は、その3人による会話劇である。

舞「ある2人の姉妹が、両親が出かける都合で親戚の家に泊まる事になった時の話だ。その親戚の家は別に山奥とかにあるとかそんなんじゃなくて、普通に街中にあるごく普通の家。一つ変わった点と言えば、そのばあちゃんは昔から仮面が好きだったってとこだな。

ばぁちゃんは、じいちゃんが少し前に亡くなってからは一人暮らしをしてるんだけど、別に普通に家族と仲良かったから、時々ここに両親は子供を預けて出かけてたってわけだ。で、家の中なんだけど、いたるところに仮面がかけてあるんだよね。能面だったり般若だったり。

しかも有名なやつだけじゃなくて、若い頃に外国で買ってきたり集めたりしたような気持ち悪いものまで色々おいてあるんだよ。子供達は勿論怖いんだけど、もうずっと前から見慣れてるし、おばあちゃんの「この仮面はこういうものでね~」っていう話を聞くのは好きだったから、そんなに気にしなかったんだよね。

さて、いつもみたいにおばあちゃんが「今日はこの仮面の話を‥」って、黒い箱から箱から取り出した仮面を見せてきたんだけど、これが少し気持ち悪くて、髪みたいな黒い糸が頭につけてあって、目の部分がつり上がって口も尖っててまるで怒ってるみたいな外国の仮面だったわけよ。

おばあちゃんは「この仮面はアフリカで見つけた魔除けの仮面で、ある儀式に使われてたらしいの。大分古いものだけど、中々珍しいものなのよ。」って言ってたわけ。ちょうどこの時、家の電話がなっておばあちゃんが部屋から出てってな。

妹の方が、「何か気持ち悪い仮面ね」って言って、ちょっと強く仮面を叩いたんだよ。そしたら、黒髪の部分がぽろって全部とれてしまったんだよね。「まずい!壊しちゃった!」って妹は慌てたんだけど、姉が「大丈夫。こっそりこの箱にしまっとけばバレないよ。こんだけ仮面があるんだもん。別のを見せてもらおう。」って言って糸をぐちゃぐちゃにして、仮面が入ってた箱に詰め込んで、仮面ごと片付けたわけよ。」

舞「おばあちゃんが戻ってきて、「ちゃんと戻しといたよ」って言ったら案の定何もなく、また違う仮面の話を聞かせてもらって楽しく1日過ごして、その日はもう寝るだけになってさ。

もう二人とも4年生、5年生だから二人で寝るって言って2階にいったんだよね。姉の方は一旦寝れたんだけど、しばらくして妹におこされて、ふと時計をみたら深夜2時。「何よ」って言ったら、「お姉ちゃん‥何か聞こえない‥?」って妹が言うんだよな。耳をすませたら確かに何か遠くの方で聞こえるんだよ。」

「しかもだんだん近づいてきてて、どうやらそれは階段を登って来てるらしい。しかも何かがたくさん喋っているみたいな。二人はもう怖くてその場から動けないんだよ。その話し声は2人の部屋の前で止まって、次に扉が勝手に開いたんだよ。何がいたと思う?」

咲「まぁこの流れだと一つしかないわよね。」

舞「お察しの通り、昼間壊した仮面がいたんだよな。でもそれだけじゃねぇ。家にあったあらゆる仮面、仮面、仮面‥それがみんな表情を動かして笑ってるんだよ。壊した仮面を中心にな。壊した仮面も笑ってんだよ。それらは部屋に飛び込んできて、二人をみながら意味のわからない声で笑ってるんだよ。二人はもうごめんなさい!ごめんなさい!ちゃんと直します!って謝ることしか出来なくて。壊れた仮面が何かを呟きながら妹の顔に近づいてきたその時、「どうしたの!?」っておばあちゃんが来たわけよ。」

「なんでも寝てたら、いきなり上の階から「ごめんなさい!」っていう声が聞こえてきて、慌てて登って来たらしい。二人はさっきの事を話して、仮面を壊した事を泣きながら謝ったんだよね。おばあちゃんは「私階段登って来たけど、笑ったり動いてる仮面なんかなかったわよ。多分、二人が悪いことをしたから、そんな夢をみたんでしょう。よく正直に話してくれたね。壊した仮面は明日一緒に治そう。今日はもう寝なさい。」って言って二人を慰めて部屋を出ていったんだよな。

二人はあれは夢だったのかってほっとして、ふと足元を見て凍りついたんだよ。そこには確かに箱にしまったはずのとれた黒い糸と、壊れた仮面が落ちてたんだよ。しかも夢でみた笑った顔をしてな。」

舞「話は以上だけど。」

楓「うん‥これは‥」

咲「なんというか、仮面を集めること自体あんまり良い趣味とは言えないのよ。面っていうのは、「それを被れば別の存在に成り代わることが出来る」のものなのよ。つまり、面そのものに強い力が宿ってるのよ。何の力もない人間が儀式を行えるのだって、仮面をつけてそういった存在に成り代わる事が出来るからで、勿論、この儀式は良いものだけではなく、悪いものもあるわよ。そんな時だって仮面は使われるのよ。そんなものが一ヶ所に集まったら、何も起こらない方がおかしいわ。」

楓「で、でも二人が仮面をちょっと壊したくらいであんな怖い事をするのは可哀想な気もするなぁ‥というか、仮面は何をしようとしたんだろう。」

舞「それがわかんないのが、この話の怖い所なんだよな。」

咲「そうは言うけれど、あなた達だって体に何かされたら嫌でしょう?仮面はあくまでも依り代みたいなもので、それに宿っている存在にしてみれば体みたいなものよ。そうね。妹の髪でも剥がそうとしたんじゃないかしら。」

楓「‥」

舞「さらっとえげつないこと言うなよ。まぁ取り敢えず、悪いことやっちまったら正直に名乗り出るのが大切って事だ。」

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咲「次は私ね。今の話を聞いて仮面に関する話を思い出したわ。それにしようかしらね。」 

楓「あんまり怖くないのでお願いね‥」

咲「大丈夫よ。大分昔のお話だから。もしかしたら想像ついてる人もいるかもね。」 

舞「昔の時代にに仮面の怖い話なんかあったか‥?」

咲「あんたは多分知らないわよ。私まだ話してないもの。‥さて。今日の晩御飯なんだけれど、屋台に行きたいわね。」

舞「ラーメンとかそんな感じか?」

咲「えっと‥そういえばお祭りって今日だったんじゃないかしら。さっきチラシがあったわよ。」

楓(咲ちゃんお祭り行きたいんだね~)

舞「なんだお前、祭り行きたかったのか。そんならそうって言えばいいのによ。」

咲「うるさいわね。さっさと行くわよ。(昔は友達居なかったから行けなかったし。一人で行ってもつまらないのよ。)」

楓「でも、今の話聞いた後でお面みたくないなぁ‥」

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