斎場の斉場(シーズンⅡ) その2

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斎場の斉場(シーズンⅡ) その2

─カタ、カタ、カタ、カタ、、、

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たてつけの悪そうな窓が、小刻みに揺れている。

また急行列車が通り過ぎているのだろうか。

時刻は午前11時になろうか、としていた。

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赤い毛布を被った古澤は、古びた箪笥の横に座り込み、先ほどから俯いたまま話を続けている。

斉場はその前に正座して、ただ静かに耳を傾けていた。

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「あれは俺がまだ、九州の山奥の小さな火葬炉で働いていた時のことだ。

そこは炉が一つしかなくて、たまに近くの婆さんが掃除を手伝いに来たりはしていたんだが、

棺の搬入から焼き上げ、そして骨上げまでを、基本一人でやっていたんだ」

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「運ばれてくるのは、山あいで百姓仕事をしているじいさんや婆さんがほとんどで、そういったことだから、実際仕事なんて一週間に一回あるかないか、という感じだった」

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「それはある梅雨どきのことだった。

朝から生暖かい雨が降ったり止んだりを繰り返していて、何だかどんよりとしていて鬱陶しい天気だった。

その日は午後一番に一件、火葬の依頼があった。

だから午前中俺は、デスクでタバコを吸っては、思い付いたように床をはわいたり、炉を点検したりしていた」

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「そうこうしているうちに昼にもなろうとした頃、突然、デスクの黒電話が鳴った」

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「もしもし、、、」

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「、、、、」

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「もしもし!?」

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「、、、、」

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「─何だ、いたずらか?

舌打ちしながら、受話器を耳から離そうとした時だった。

いきなり低く濁った男の声が聞こえてきた」

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「あんたのところは、人を焼いてくれるのかい」

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まるで地獄の底から響いてくるような男の声に、少したじろぎながら、

「そうですが。

すみません、とりあえずお名前とかご住所を教えていただけませんか?」と、型通りに答えると、

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「そんなことは、どうでもいいんだ。

とにかく今日、日が沈む前にはそっちに行くから」

と、電話は切れた」

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─いったい、何なんだ、こいつは?偉そうに

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「その後午後一番から、前もって依頼のあっていたご遺体が運ばれてきた。

確か一昨日の夜に消防団の寄り合いで、しこたま飲んだじいさんが自転車で帰る途中、クリークにはまり込んで、朝方には土左衛門になって浮かんでいたということだった」

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「お骨上げを終えた後、住職を先頭に、骨壺を抱えた喪服の老婆と遺族たち数人が火葬炉を出て、葬儀屋の箱バンに乗り込みだしたとき、時刻はもう午後三時になろうとしていた」

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「その後俺は炉の中と周辺を掃除し、バナーの点検と調整をしてから、ざっと床を掃くと、デスクに腰掛け一服していたんだ」

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「そこの斎場は本当に山の奥にあったから、聞こえてくるのは野鳥たちのさえずりや風に揺れる枝の音くらいで、普段はとても静かだ。

ただその日は、朝からの雨が延々と続いていて、

俺は窓から見える、まるで一枚の墨絵のような風景をぼんやりと眺めていたんだ」

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「やがて蒸し暑くなり、つい冷蔵庫を開けて缶ビールに手を伸ばそうとした、

正にそのときだった」

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shake

─パアアアアアン!

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「突然、車のクラクションの音が鳴り響き、驚いて玄関口に走ると、いつの間にか黒いライトバンが停まっている」

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「不振に思ってよく見ると、車の前に黒いスーツの男が立っており、少し離れて同じようなスーツ姿の二人の男が立っており、その間に挟まれ、なぜか白いブリーフ一枚しか身に付けていない目隠しをした50歳くらいの小柄な男が手足を縛られ、何やらおどおどしながら立っていた」

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斎場の斉場(シーズンⅡ)その3に続きます

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@クーペ 様
コメント、怖いポチ ありがとうございます
どう転がっても、絶望しか見えてこないですね

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黒木露火 様
コメント、怖いポチ ありがとうございます
確かに、おっしゃる通りです

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