【新着】春の新生活!【物件情報】

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【新着】春の新生活!【物件情報】

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人生を卒業して、アテもなく街をうろついていた。

周囲の連中は事故死や他殺等のインパクトで順調に出世街道を昇り、

悪霊となっては有名な僧侶に紹介されて供養の後に成仏していく。

私は焦っていた。

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もう長いこと浮遊霊をやっているが、出来ることと言えば暗闇で人を驚かすことくらい。

……幽霊としての将来性の無さ、死んでなお癒えぬ漠然とした不安。

そもそもこの劣等感のせいで自殺したのに、

死後でさえこんなふうに悩むなんて。

これじゃいけない、新生活を歩もうと決意して、住居を定めることにした。

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浮遊産屋へ出向き、自縛物件を紹介してもらうことに。

もともと多くの物件には自縛というオプションが付いていて、現時点の地縛霊が成仏すると、

次の予定の幽霊が新しくその住まいの地縛霊として住まうことが可能になる。

廃墟などは誰もいないから住みやすいが怨霊レベルが高くないと“呪い家賃”が払えないし、

たいていの場合は生きた人間と同居になる。

でも同居でもなんでも、浮遊霊の暮らしは終わらせたいのだ。

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自縛というオプションを採用しない場合はシェアハウスになる。

1DKなら最大4444体までが同居できるが、怨念がうるさすぎて休まる暇が無いし、

そこに住む人間が専門家を呼び、私達を地獄に落としてしまう危険性もある。

(そんな非道なことをするのはだいたい黒魔術師だ…)

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一般的に住居の窓が結露するのは、

空気中の水蒸気量が多くなりすぎる(専門的に言うと飽和水蒸気圧の露点を超えた時点)からですが、

“飽和霊蒸気圧”もこれと同様の現象です。

先程の例で言えば1DKには4444体までの霊を収容することが可能ですが、

その規定人数を超えた瞬間に怪奇現象が発露します。

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「霊感なんて全然無いんだよね」と語っていた人が突然、

自宅で頭蓋の割れた幽霊を目撃してしまう、なんてことがたまにありますが、

学術的には『飽和霊蒸気圧を超えた際の怨念の発露』と発表されているもの(『42年度ジュネーブ霊障学会,論文No66』)で、

その時点で限界量を超えた霊体が部屋に充満している、と結論づけることが出来ます。

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つまり1DKで霊感の無い人が幽霊の発露を目視した場合、

すでにその部屋には4444体以上の霊が住んでいると推測され、

当該の人物が偶然目撃してしまったのはそこからはみ出した、たった一体だけと考えられます。

(これをお読みの生きている人はお部屋探しの目安にしてみてください)

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自殺したのが東府中だったので、

まず浮遊産屋で紹介されたのは以下の通り。

飛田給スタジアム(サッカーファンがうるさい)

調布のラブホ(あんまり見たいものは無い)

青山墓地(逆に綺麗すぎる)

裏渋谷の歩道橋(死霊のノリがウザい)

鶯谷の駐車場(アダルトすぎて先祖に言えない)

歌舞伎町の雑居ビルと違法マンションの間(情緒はあるが狭すぎる)

井の頭公園の池の中(これはわりと気に入った)

ピ○ールTの自宅周辺(ごめん何でもない)

八王子城跡(鎧武者と話が合わない)

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他の土地も見てみたかったので浮遊産屋と一緒に各地を浮遊した。

大阪万博の太陽の塔(見晴らしが最高!)

名古屋のナナちゃん人形のスカートの中(わりと居心地が良かった)

熊本の路面電車コース(鉄オタなら楽しい)

福岡の水族館(お魚さん可愛い)

佐賀の田んぼ(田んぼしかない…)

埼玉の田んぼ(田んぼしかない…)

うどん県(うどんしかない…)

シーサーのところ(海しかない…)

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いろいろ迷ったけれど、

霊戸ロック付きの屋内がやはり安心だ。

オートロック付きのマンションならSUUMOのサイトで調べられるが、

今回はSHISUMO(死すも)の霊界電脳網で霊戸ロック付きを調べてみた。

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霊戸ロックとは、特殊な結界によって許可された幽霊しか通さないという、

画期的な霊体認証システムのことですが、

どうやら何件かありました。

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ふむふむ、なるほど。

そうか、ここか…。

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次に私が住むのは、どうやらあなたのお部屋のようです。

…うひひひひひ!

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