短編2
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娘のうさこ

引っ越しの時、娘のかおりがとても大切にしていたぬいぐるみを捨てた、もう小学5年生になるというのに未だにぼろぼろのぬいぐるみ『うさこ』を大切にしていたからだ。

大切にすることは決して悪いことではない、しかし、寝るときも、家族旅行にも、いつも娘は『うさこ』を一時も離さずに連れていた。そればかりか、中学受験を本格的に控え塾に通うと決めた日、娘は『うさこ』と一緒に行くと言い出したのだ、さすがにそれは異常だと判断した妻が、引っ越しのタイミングで『うさこ』を捨て、あえて行方不明にしたのだ。

罪悪感もあり悲しむかおりには、受験が終わったら「本物のうさぎを買おう」となだめすかした。

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かおりが『うさこ』のことを忘れかけた頃、私が一人で留守番をしていると、自宅の電話が鳴った。

「どちら様ですか?」と出ると「わたし、うさこ。今までごみ捨て場にいたの。」ガチャン!

と電話は切れた。いたずらか、と思った瞬間、また電話が鳴り

「もしもし、わたし…うさこ。今大宮公園駅にいるの。」なんと今度は最寄り駅を告げてきた。

再び電話が鳴り、受話器を取ると「わたし、うさこ…。今、かおりちゃんのお家の前にいるの。」

気味が悪くなり私は電話線を抜いた…が、鳴るはずのない電話が再び鳴った。

「ん!なんなんだよ!」怒りと恐怖で怒鳴り、再び鳴った電話を取ると…「もしもし、わたしうさこ。今…かおりちゃんパパの後ろにいるよ…。」

振り返る瞬間に…

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急に目が覚めた、夢だったのだ。よくある怖話だから、夢に出たのだ。

いい大人が「まったく!なんなんだぁ」と、独り言をつぶやき、寝汗でぐっちょりとしたパジャマを脱いだ。

シャワーを浴びようとバスルームにいくと、携帯が鳴った。

画面には、かおりの番号が…、子ども部屋で寝ているはずのかおりから電話が来た。

「もしもし、…かおり?」

「わたし、うさこ…、今、かおりちゃんと一緒だよ!」

ビックリした私は、娘の部屋にあわてて飛び込んだ。ベットで寝ている娘を揺さぶり起こす。

「かおり、かおり…」

眠そうに両手でこすった目を見開くと…真っ赤な目のかおりがしゃべった。

「どぅしたの~、かおりパパ?」

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