長編11
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M子さんの除霊

あれから1週間後F子から電話があった

「アニキ!!大変だよ・・・M子さん、撮影中に倒れて病院へ運ばれたよ・・」

「え!病院へ運ばれたのか・・今はどうなの?」

「今はね・・・病院から帰ってきたんだけどね・・・あんまし体調良くないみたい

それで・・私たちのお薬を飲ませたらだいぶ楽になったみたいだけどね

アニキ、早く除霊をしたほうがいいと思う」

「たしかにな・・・俺、和尚様に電話するわ」

徐々に霊障が表れてきてる

このままだと命にかかわる

私は和尚様に電話をした

「・・・・というわけなんですよ・・・もう除霊をしないとヤバいとおもう」

「こっちのほうも準備はできましたわい

それで・・・オヤジ殿、F子さん、M子さん、F君、S君、楓ちゃんと葵ちゃんを連れてきてほしいですわい

特に今回はオヤジ殿と楓ちゃんの力が欲しいですわい

わたしゃ一人では無理だと思いますわい」

「わかりました・・・相当霊の力が強いんですか?」

「さようですわい・・・機械が真っ二つになったと聞いて・・・これは相当な怨念だなと思いましたわい・・・M子さんの体力もどこまで持つかどうか・・・」

「そうですね・・・」

「今週の土曜日にでもM子さんを連れてお寺まで来てくだされ

まぁ、M子さんの体調次第だと思いますけれど」

「はい、今週の土曜日には行きたいとは思っています

後はM子さんの体調ですね」

私はF子に電話を掛けた

「どう?M子さんの体調は?」

「いまのところ安定はしてるよ、でもね・・・」

「どうした?」

「アニキ・・・今すぐにお寺へ行きたいんだけど・・・

M子さんの苦しんでる姿をみると本当に辛い

薬を飲むとある程度の時間は落ち着くんだけど薬の効用が切れると

すごく苦しそうにしてる

一刻も早く徐霊をしてほしい」

「和尚様が言うには今週の土曜日に来てほしいと言ってた

でも、一刻を争うのならとりあえずはお寺へ運んだほうがいいよな

でも、M子さんの体力は大丈夫なのかな?]

「まぁ・・・今のところはおそらく大丈夫だと思う

でも・・・やはり早めに除霊をしたほうがいいと思うよ

とりあえず明日M子さんと一緒に戻るね

誰かが傍にいれば何かあったときにすぐに対処できるから」

「そうだな・・無理せずM子さんの容態を見ながら帰ってきてくれ

もし無理なら俺が行くからな」

「アニキ、ありがと、Sアニキに言って戻る準備をするから」

一刻も猶予がないような気がする

私は和尚様に今のことを話をした

お寺の方は準備が整っているからいつでもいいとのこと

ただ・・・楓は学校があるからな・・・早々に休んではいられない

楓は後から私が迎えに行こうと思う

葵も楓と一緒に連れて行こう

夕食時にこの件のことを話をした

「おっちーー!!M子さん、大丈夫かな・・・とりあえずは家で様子を見てから

お寺へ行ったほうがいいと思うよ」

「そうするつもりだよ、無理はさせない」

「仏間をM子さんの部屋にするからな、オヤジ」

「おう、いいとも、あそこは静かで強い結界を張ってあるし一番安全な場所だ」

「楓と葵は土曜日にパパがお寺まで連れて行くからな」

「うん、わかったよ、パパ、葵となら全然寂しくない」

「あたちも楓姉ちゃんとなら楽しいし寂しくないんだぞ」

「そっか、まぁあくまで予定だからね」

とりあえずはうちのほうは準備OKだ

次の日の夕方にM子さんたちが来た

「お邪魔します、またご厄介になります」

「体の方は大丈夫なんですか?」

「はい、今のところは・・・でも不安でいっぱいです

お薬をもらって飲んでるんですがこの薬はよく効くんですね

効用が効いてる間は本当に体が軽いです」

「そうですか、あの薬は和尚様の家代々に伝わるものらしいです

私たちも体の不調の時は薬を飲んでます

よく効くんですよね」

「さぁ・・・とりあえずはリビングへどうぞ」

「はい、お邪魔します」

「よぉ!F、ちゃんとM子さんを連れてきたよ」

「ありがとな」

「アニキ!鼻の下がのびてるよ」

「え!!そんなことはない!」

「冗談だよ、アニキ、ベェーー」

「おっちーー、パパ、ホントだ!伸びてるぞ!」

「S子!!!」

M子さんをリビングへ案内をした

「皆さん、またご厄介になります」

「M子お姉ちゃん、体の方、大丈夫なの?」

「ありがとう、楓ちゃん、今のところは調子はいいよ」

「うん、よかった」

「食事は食べれそう?M子さん」

「はい、食べれます」

「良かった、今夜はカレーにしようと思ってるのよ」

「やったーーー!ばあちゃのカレーはうまいんだよ!!」

「俺、カレーよりステーキ食べたいぞ」

「なに!!!あんた、ステーキだと夢みたいないことを言うんじゃないよ」

「チッ!」

「じっちゃ、ばあちゃを怒らせたらダメなんだぞ!」

「葵ちゃん、じいちゃはほっといで、少しお手伝いをしておくれ」

「うん、ばっちゃ、わかったんだぞ」

「F子さん、F子さんのお母さんはそんなに怖いんですか?」

「ううん、ただ、パパに対しては非常に厳しいのは確かだよ」

「そうなの・・・F子さんのお父さん、怖い顔をしてるけどお母さんにはかなわないみたいに感じだけど」

「当たり!パパはママにいつも負けてる・・・」

「そうなんだ・・・でも仲の良い夫婦に見えるよね」

「うん、ああやってるけど・・・本当に仲はいいのよ、不思議とね」

「うらやましい、私もこんな風に何でも言える家族を作りたい」

「M子さん・・・」

M子さんは体調が良いみたいでカレーをきれいに食べた

でも・・・これは薬が効いてるせいだろう

今夜がどんな感じでM子さんの容態が変わるのか一抹の不安を感じている

霊障なのかそれとも病気なのか・・・

やはり・・・不安は的中した

夜中の1時過ぎに仏間からすざましい悲鳴のようなわめくような声が聞こえだした

「はじまったな・・・オヤジ、一緒に仏間へ行こう」

「おうよ、こりゃ厄介なことになりそうだぞ、F!」

私とオヤジとS子とF子と一緒に仏間へ向かった

「痛い、体が痛い!!!手がちぎれるよ、誰か助けて~~~」

悲鳴が聞こえた

「M子さん、部屋に入るよ、ごめんね」

これは・・・すざましい光景だった

腕がまるでねじれるように今にも折れそうな格好で悲鳴を上げていた

「いたーーい!助けてーーー」

「オヤジ、すまんがM子さんのお腹にゲンコツ1発いれてくれ」

「おいおい!いいのかよ」

「いいんだよ、とにかく気絶させるんだよ」

「そっかい、じゃあ、遠慮なく、すまん、M子さん、おりゃ!!!!」

オヤジのゲンコツがM子さんのお腹にもろに当たった

「うっ・・・」

とお腹を抱えて倒れた

「S子!!!いまのうちに薬を飲ませてあげてくれ」

「おっちーー!わかったんだぞ」

荒っぽいやり方だが仕方ない

これで少しはM子さんも楽になると思う

「S子、すまんがM子さんを布団のところへ運んでくれ」

「おっちーー、わかったぞ、パパ」

「それと、S子とF子すまんが今夜この部屋にいてくれ」

「わかったんだぞ、なにかあれば知らせるから、パパ」

「わかったよ、アニキ」

これはもう間違いなく霊障だ

これは一刻も猶予はない

今日の夕方には家を出て和尚様のところへ行こう

薬が効いたのか其の後には何も起きずに朝を迎えた

M子さんがリビングに来た

「おはようございます、昨日・・・何かあったんですか?

S子さんやF子さんが隣で寝てたんですけど」

「あ・・いや・・・昨日のことは覚えてないんですか?」

「昨日は・・・急に眠気が襲ってきてそのまま寝ましたけど」

どうやら昨日の出来事は覚えてないらしい

正直に言うべきが迷ったが何も言わないほうがいいとおもった

「今日の夕方頃に家を出ますんでその間に荷物など準備しておいてください」

「はい、わたしはそれほど荷物は持ってきていないんです

お寺までどのくらいかかるんですか?」

「休憩を入れておよそ4時間ほどですね」

「4時間も・・・」

「はい、慌てずゆっくりと行きますから、M子さんは車の中でまったりしてればいいですよ」

「はい!」

どうやら元気な様子

夕方になった

各自それぞれの荷物を車に乗せて出発した

やはり・・・ピクニック状態となった

まぁ・・いいか

途中で休憩を挟んで無事お寺まで着いた

「和尚様、ご厄介になります」

「無事で何よりですわい」

「和尚様、M子と言います、よろしくお願いします」

「は、はい、」

「和尚様まで!鼻の下、伸びてるぅ~~」

「え、いや・・・・F子さんにはかないませんわい」

一同大笑い

夜の11時過ぎになっていた

お祓いは明日の朝にすると和尚様は言っていた

和尚様が私に小さな声で話しかけてきた

「F君、M子さんの状態はあんましよくない・・・

本当は夜中に除霊をしたいのだけれど・・・M子さんにとり憑いているものがはっきりとしないんですわい

こんなことははじめてですわい

今夜・・・恐らくとり憑いているものたちが暴れると思いますわい

もし暴れだしたらチャンスですわい

そのまま除霊をしますわい

楓ちゃんと葵ちゃんはF君と一緒に隣の部屋にいてほしいですわい

オヤジ殿はわしゃと一緒にいますわい

M子さんとF子さんはこの仏間にいてほしいですわい」

「わかりました」

今夜、どんなことが起きるのか・・・・

案の定、和尚様が言った通りM子さんの異変がはじまった

すぐにオヤジと和尚様は除霊の儀式をはじめた

仏間は異様な雰囲気となり邪悪なものたちが口々にM子さんの口を借り

和尚様を罵った

すぐに和尚様はF子をとなりのわたしのところに行くようにと言われてF子が来た

「アニキ!仏間!大変なことになってる、和尚様は楓ちゃんと葵ちゃんにこの念仏を唱えてほしいと言ってた」

「念仏?そっか、葵と楓、和尚様からこの文章を読んでほしいと頼んできたよ」

「うん、この文章を葵と一緒に唱えればいいんだね、パパ」

「そうだよ、ひらがなで書いてあるから読めるよね?」

「うん、読めるよ」

「葵は楓おねえちゃんがしゃべっているのを真似すればいいからね」

「わかったんだぞ、楓姉ちゃんの後に言うんだぞ」

葵と楓はひらがなで書いてある念仏をゆっくりと唱え始めた

隣からはすごい悲鳴と太い声が交じり合ったような感じの声がしていた

和尚様の念仏がよく聞こえてきた

オヤジもすごい声でとり憑いている者たちに対して何かわめいていた

私はどうしても気になって仏間へ少し覗いてみた

仏間の空気がいつもと違いどんよりと重い空気が流れているように思えた

M子さんは座ったままで口だけが動いていた

とてもM子さんの声ではなく地獄の死者らしい野太い声が聞こえてきた

オヤジも対抗して相手を罵声していた

和尚様の念仏も徐々に効いてきたのが段々ととり憑いている者たちの罵声が弱くなってきた

「貴様みたいな!!ヘナチョコ!お化けは怖くはないぞ!俺様がおまえらを食いつぶしてやろうか」とオヤジは相手を煽っていた

「おまえ!!!俺たちを怖くはないのか!!!和尚から食べてやろうか!!」

「お前らが怖いだと笑わせるんじゃねーーや、この俺様がおまえらを食ってやるぜ」

「人間ごときが我々を食うだと、まずはおまえを食ってやるわ!!」

「上等だぜ!!!食ってみなよ、さぁ早く食え!!」

「望み通りに食ってやるーーーー」

「オヤジ殿、相手が出てきますわい、そしたらそのまま食べてくだされ」

「おう!!なんでも食ってやるぜ」

しばらくするとM子さんの口から黒い塊が5つ順々に出てきた

すかさずオヤジはその黒い塊を食っていった

どんどんとオヤジのお腹は膨らみまるで妊婦のようなお腹になった

オェェーー気色悪ぅーーー

オヤジ本来の姿を久しぶりに見た

「ギョェーー貴様は!!!あの・・子孫だったのか!!!!地獄の世界へ戻りなくないーー閻魔に会いたくはないぞーーー、せっかくおいしい人間の体を手に入れたのにぃーーー」

すごい絶叫が響いた

するとオヤジのお腹は元へ戻っていった

和尚様は最後にオヤジの背中を3回ほど叩いた

オヤジはげっぷをして最後に薬を飲んだ

「オェ!まずいもの食ったわ!!!くそ坊主!もっとおいしいものを出しやがれ!!」

「無茶言わんでほしいんですわい、オヤジ殿」

「今度こそ、おいしいものを食わせろよ、くそ坊主!!」

「無茶な・・・・」

およそ2時間の除霊だった

除霊??どうみてもオヤジの食事だと思う

とにかく除霊は終わったようだ

M子さんは横になって眠っていた

「F君、F子さんを呼んでほしい」

「はい!」

私は隣の部屋へ行きF子を呼んだ

「F子さん、M子さんの傍にいてほしいですわい」

「はい!和尚様」

「これですべて終わり申したわい、今後は霊障は起きないですわい」

「よかった」

「相手は地獄から追放された悪霊で人間の魂を栄養源とする化け物でしたわい

今頃、閻魔様の目の前で相当なお仕置きをされてるはずですわい

もう2度と地獄界や地上界にはいられない時空の間(はざま)に追放されると思いますわい」

「時空の間って・・」

「要は時間と空間が止まっている世界ですわい

つまりは無期懲役みたいな感じですわい」

「はぁ・・・」

「まぁ・・2度と現れないということですわい

M子さんの体の調子も段々と良くなっていくはずですわい

まぁ・・・休養は1か月ほど静養してほしいですわい

まずは体力を元へ戻すことですわい」

「それとオヤジ殿、しばらくは休養が必要じゃわい」

「え!!!なんで?化け物を食ったからですか?」

「そうですわい、地獄へあの化け物たちを送り返したんですわい

その際に化け物たちが相当抵抗したようですわい

なんとか地獄の閻魔様のところへ追い返したんですわい」

「信じられん!!人間業じゃない!オヤジこそ化け物だよ」

「さよう、オヤジ殿ははっきりといって化け物ですわい

それも生まれる前からの宿命

化け物には化け物で退治しないといけないんですわい」

「オェ!やはりな・・・普通の人間じゃないと思ってた」

「しかし、F君はオヤジ殿の血をちゃんと受け継いでいるんですわい

ただ、F君の場合は幸か不幸か化け物の遺伝子が発動してないだけですわい

そして、ちゃんと楓ちゃんがオヤジ殿の血をまともに受け継いたようですわい」

「え!!娘にですか・・・あちゃ・・・楓・・・かわいそうに・・・

だからか・・・霊感が強いというか感じやすいんですね」

「ええ・・・でも化け物を食べるとかはしないですから安心してほしいですわい

霊感が強いということは普通の日常生活の中で人より疲れやすいということですわい」

「そっか・・・F子と同じだ・・・」

「さよう、F子さんも幼少の時は体力がすぐに無くなって疲れやすい体質だったはず

声が小さかったのもそのせいですわい

今はほぼ霊感が無くなったので普通の人と同じように生活ができるようになったんですわい」

「そうだったのか・・・オヤジがいつもF子の傍にいたからな

てっきり娘かわいさのあまりに傍にいたと思ってた」

「オヤジ殿がF子さんに寄って来るいろいろな霊を追い払っていたんですわい」

「オヤジ・・・」

「すべて運命ですわい」

M子さんの除霊は成功したようだ

1か月ほど休養をし新しいアパートも見つかったようだ

F子もM子さんと大変親しい仲になり女子会も盛り上がっているそうだ

オヤジも1週間ほど休養したのちにまたおふくろの奴隷としてこき使われている

最近の餓鬼たちの動きが静かなのは不気味だが静かな生活が一番

Concrete
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