暴走族のSさん後編 ~稲川淳二風怪談~

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暴走族のSさん後編 ~稲川淳二風怪談~

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前編から時間があいてしまいました。

よかったら前編をサラッと読んでからお楽しみください。

http://kowabana.jp/stories/31921

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翌日になってまた皆でコンビニに集まったそうです。

昼過ぎにはB君を除く昨日のメンバー全員が集まってたそうなんですが、明らかにみんな元気がない。

まあそりゃそうですよねえ、B君のことを気にしてるわけですよ。

Sさんも正直怖かった。

どうしてもバイクに乗ると違和感を感じてしまう。

誰かが後ろに乗ってるのがバイクの走りの重さではっきりとわかるんだ。

その日も内心で「勘弁してくれ~勘弁してくれ~」と念じながら必死の思いでコンビニまでやってきた。

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皆うつむいたままバツが悪そうにしてる。

Sさんが来るまではポツリポツリと会話もあったんでしょうが、Sさんが到着しちゃったら聞かないわけにはいかない。

「これからどうします?」ってね。

今日これから何をするかってのもそうですし、何よりもB君のことをどうするのか、誰かが口を開くのを待っている。

それがわかったもんだから、Sさん、自分からこう切り出した。

「実は俺もおかしな体験をしてるんだ。変な女の姿が見えるって言われてさ、バイクに乗ると後ろに誰か乗ってるみたいに重いんだよね」って。

 

皆の視線が集まる。

ふざけてると思われるかなとか、親分の威厳が台無しになりやしないかなとか、そんな考えが頭をよぎった。

そうしたら仲間の1人が「実は見ちゃいました」と言った。

んー?と思ってソイツの顔を見る。

その彼が「昨日、Bの家の前で解散になって、Sさんが走り出した時に、Sさんの後ろに女が乗ってるの見えちゃったんですよね」と言った。

そしたら別のやつが「それだけじゃない」と言った。

「Sさんの後ろに乗ってたその女、見えなくなるまでずっとこっちを睨んでたんですよ」

それだけ言って黙っちゃった。

Sさんの背筋がサーっと冷たくなった。

 

今も自分の後ろにいるのかもしれない。

さっきバイクに乗ってた時は確実に重たかった。

あの時からずっと、自分の後ろに女が張り付いてるかもしれないと思うとゾッとして「うぅっ」と声が漏れた。

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シーンと静まっている。

誰も喋らずに黙って下を向いてる。

「他におかしなもん見たやつはいるか?」

思い切って聞いてみた。

怖いですけどねえ、黙ってても始まらないし、親分のプライドみたいなもんもあったんでしょうね。

とにかくそう言った。

そしたら仲間の1人が「実は…」と話し始めた。

 

その彼が言うには、彼も最近、身の回りで変なことが起きるようになってたということらしいんです。

家に無言電話がかかってきたり、窓をガタガタガタガタ揺らす奴がいたり、ピンポーンとチャイムが鳴って玄関を開けても誰もいなかったり、そんなことが何度かあった。

てっきり仲間の誰かのイタズラだと思って無視してたんだけど、B君やSさんの様子を見てると、どうも自分にも何かが憑いてきてるかもしれないって、そう言うんです。

 

するとまた別の仲間が「実は俺も…」と言った。

そしてまた1人、もう1人と、次々に声が上がる。

皆が皆、何かしらのおかしな体験をしてるっていうんですよ。

「Sさぁん……」

仲間の声が震えてる。

Sさんもさっきから震えが止まらない。

「Sさん、言いたかないけど、これ本物ですよね。俺達、ヤバいことになってますよね」

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その時コンビニ店員の男性が声をかけてきた。

「あのー、ちょっと…」

皆一斉に振り向く。

「お連れさんがトイレに入ったまま出てこないんですけど、声かけてもらっていいですか?」って言うんだ。

 

その店員さんが言うには、Sさん達の中からフラーっと1人歩いてきて、トイレに入るのを見た。

それでいつまで経っても出て来ないんで、何度か声をかけたんだけど返事がないと。

Sさん、体の震えが大きくなるのがわかったそうですよ。

だってここには今日いる仲間が全員揃ってる。

誰もトイレに行ってやしないんだ。

 

「いいですかねえ、お願いしても」

店員さんは申し訳なさそうな顔で、だけどしっかりした口調で言ってくる。

「俺達の仲間は誰も入ってやしないよ。ここに全員いるんだから」

そう言えば良かったんだけど、Sさん、なんでか店員さんについて行くことにした。

確かめたいって思いがあったんだと思います。

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トイレについてドアを確かめる。

鍵はかかってる。

後ろからついて来た店員さんを振り返る。

「さっきからずっと入ったままなんですよ。こちらでも何度か声かけたんですがねえ」って言う。

Sさん、覚悟を決めてドアをノックした。

 

コンコン

返事がない。

 

コンコン、コンコン

やっぱり返事はない。

 

コンコン、コンコンコンコンコンコン!!

少し強めにノックした。

 

カチャッ……って音がして、鍵が開いた。

身構える。

一体誰が出て来るんだろうか。

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「…………」

いくら待ってもドアが開かない。

中から鍵を開けた誰かは、そのまま出てこないでずっと中にいるんだ。

後ろで店員さんがため息をついのがわかったんで、Sさん、思い切ってドアを開けてみた。

ギィ~って微かな軋みを立ててドアがゆっくりと内側に開く。

少しだけトイレの内側が見えた。

けど誰も見えない。

一気にグイッと押そうと力を込めた。

ふと、ドアが止まった。

何かに引っかかるみたいにして、それ以上内側へ開いていかないんだ。

グイッ、グイッと押すんですが、何かに引っかかってる。

まるで向こう側からドアを抑えてるみたいに、力が帰ってくるんです。

 

中にいるやつは、明らかにトイレのドアを抑えて開かないように踏ん張ってる。

こいつめと思った。

どう考えてもバカバカしいイタズラなわけですよ。

長いことトイレに閉じこもって、店員さんが声をかけても出てこない。

Sさんがしつこくドアを叩いたらやっと鍵だけは開けたけど、まだドアを抑えて中に入れないように邪魔してる。

「おい!お前ふざけてるのか?こっちはイライラしてるんだ。さっさと出てきて一発殴らせろ」

そう怒鳴ったそうです。

そしたらドアが思いきりバン!と閉まった。

ドアを挟んで押し合ってたSさんの手を弾き飛ばす勢いで閉まったんで、思わず後ずさった。

「なんだよ……」

思わず呟いた。

生意気なやつだなって、そう思ったそうですよ。

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中に誰かいるのはわかったんで、Sさん、俄然強気になっちゃった。

こっちは暴走族の総長で、店の外には仲間も控えてる。

ちょっとやそっとじゃ負けやしないんだ。

「おい!お前ふざけてるんだろ?いいから出てこいよ。こっちは大勢で、お前なんかすぐにやっつけられるんだ」って言っちゃった。

あんまりねえ、格好いいことじゃないですよね。

こっちには仲間が沢山いるんだぞー!ってのは、なんか数を頼みにしてるみたいなね。

それでも不安もあるもんだから、相手よりも優位に立ちたいって思いがあった。

そしたら不意にドアが開いた。

 

ギィ〜っ。

 

誰もいない。

 

その時が一番怖かったそうですよ。

後ろで店員さんが「ええ〜?」って間抜けな声をあげてる。

Sさん、もう居ても立っても居られなくなって店を飛び出した。

仲間のところに行って「行くぞ!」って怒鳴った。

バイクにまたがってブルーンとエンジンをかける。

やっぱりバイクが重い。

間違いなく後ろに誰かが乗っている。

ひぃ〜と思いながらもアクセルを吹かす。

仲間達はポカーンとした顔で見てる。

「おいおまえら行くぞ!バイク乗れ!」

「どこ行くの?」って仲間が言って、「Bの家に行くんだよ」って答えた。

Sさん、もう怖くて怖くて、早いところお寺か神社に行きたかった。

でもB君のことも放っておけないから、B君の家に行って、B君も連れて行こうと思った。

仲間達もようやくバイクの準備ができて、すぐさま出発した。

重い。

バイクが重い。

仲間達には見えてるんだろうか。

俺の後ろに誰かが乗ってるのを。

そう思うともう怖い。

「うぅっ」と呻きながら前だけを見てバイクを飛ばす。

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どうにかこうにかB君の家に到着して、呼び鈴を押す。

程なくドアが開いてB君が顔を出した。

Sさんのことを見てニコッと笑ったそうですよ。

「ああSさん、遅かったね。皆も一緒だろ?ちょっと狭いけど入ってよ。皆で一緒にお祈りしよう」って。

んん?と思った。

B君が何を言ってるのかわからない。

 

「……何言ってんだお前……」

ようやくそれだけ言ったそうですよ。

そしたらB君、「大丈夫だから。昨日一晩ずっとお祈りしてたから、もう大丈夫なんだ」って言った。

その瞬間、Sさん、思わず叫びそうになった。

ドアを半分ほど開けて顔を出したB君、その首のあたり、後ろから首を鷲掴みにしてる手が見えた。

ミイラみたいな、土気色の細い指がB君の首を後ろから掴んでたそうですよ。

それでB君の後ろ、薄暗い玄関の奥に、じーっとこっちを見てる顔が見えた。

男だったそうですよ。

 

そこまで見えて「ぎゃあああ!!!」って叫んで逃げ出した。

仲間達も何か見たのか見てないのか、とにかくSさんと一緒にバイクのところまで引き返してきた。

B君の部屋を見ると、まだB君はこっちを見て笑ってる。

もうダメだ。

B君も連れて行きたいけどもう限界。

というよりB君おかしくなっちゃってる。

もうダメだ。もうダメ。

ということで自分と仲間達だけでお寺に行くことにした。

心霊スポットを探してた時にお寺の情報も見つけてたんで、そこから一番近い所に行ってみようとなった。

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バイクに乗る。

相変わらず重い。

B君を見る。

まだこっちを見ながらニコニコしてる。

 

ふぅ〜っ………ふぅ〜っ………。

大きく深呼吸してバイクを発進させる。

仲間達もついてくる。

目当てのお寺はほとんど離れてない。

バイクなら20分も行けば到着する距離だ。

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お寺までは問題なく到着したそうなんですが、境内の隅にある駐車場に入って行った時に、いきなり横からドーンと押されてバイクごとひっくり返った。

それほどスピード出てないとはいえまだ走ってる状態だったからそのままガシャーンと転んでザザザザザッと転がった。

頭はパニックになっちゃって、何がなんだかわからない。

仲間達が大声を出しながら寄ってきて、ようやく転んだってのがわかった。

体は痛いし、バイクはあっちで倒れちゃってるし、もう滅茶苦茶だ。

 

「大丈夫か~!」って言いながらお寺の方から駆けてくる人がいて、ああ助かったと思った。

その人は黒い着物を着て、頭は綺麗に剃り上げて、どう見てもお坊さんだったからね。

助かった!そう思った。

それで体は痛いんだけど、とにかく今は話を聞いて欲しかったから、その人にその場で助けてくれって頼んだそうです。

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何やら尋常じゃない様子のSさんを見て、仲間達の様子もおかしかったんでしょうねえ、とにかく中へどうぞと言ってお寺の中へ通してくれた。

まだ明るい時間帯で、お寺の中は誰もいなかったそうですよ。

 

今までおきた出来事を一から説明するSさん、心霊スポットに行って探検をして、落書きをして回ったんだと。

話を聞いているお坊さんの顔がだんだん不機嫌になっていくのがわかった。

そりゃそうですよねえ、そんな話は誰だって嫌ですよ。

それで今目の前で何とかしてくれってんだから、不愉快なのは間違いない。

それでもSさん達が反省してるってのと、B君のことが心配だってので、お坊さんが一緒に来てくれることになった。

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それでそのお坊さん、仮にCさんとしますが、彼の運転する車にSさんが乗り込んで、仲間達はバイクでもってB君の家に向かった。

もう夕方になる頃で、あたりはうっすらと暗くなり始めていた。

B君の家について呼び鈴を鳴らす。

反応がない。

駐輪場を見るとB君のバイクがない。

「あれ~あいつどこ行ったんだ?」って仲間達と相談するんだけど検討もつかない。

Cさんにも判断つきませんからね、その日もいったんお寺に戻って、一晩お経をあげてみようかとなった。

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ところでこのCさんというお坊さんなんですが、彼は霊感とかそういうのは持ってないという人だった。

Sさん達の話を聞いても、なんとかしてあげられるかどうかわかりませんよと言っていたそうです。

それでもお経をあげて、亡くなった方の冥福を祈って、ご供養をする、そういうのは本職ですから、やれることはやりましょうという人だった。

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明日一日かけて心霊スポットをできる限り回って、Sさん達が怒らせた霊達にお詫びをしようとなった。

Cさんがお経をあげる中で、Sさん達は机に向かって書き物をしていた。

詫び状、といいますか、平たく言うと反省文ですよね、それを書いていた。

行った心霊スポットの数だけ、全部で20近くの反省文を一枚一枚丁寧に書いて封筒にしまって、最後にCさんがその封筒に署名する形でもって封をする。

B君を除いた全員で書いたその反省文を持って、心霊スポットを一軒一軒回るということだった。

その日はお寺に泊まって、翌朝早くから起きだして、まず一軒目の心霊スポットに向かった。

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立ち入り禁止のところにお坊さんが入っていくのもあんまり褒められたことじゃあないんですが、それでもCさん、構わず中に入って行って、一生懸命お経を唱えてくれた。

霊感なんてないと言ってはいたんですが、それでも現場であげるお経はやっぱり迫力があって、見ていてSさん達も震えたそうですよ。

それで反省文を置いて、全員で頭を下げてごめんなさいをして、Cさんが最後にまたお経をあげて、その場を後にする。

一日で全部回れるはずもなくて、Cさんの仕事の都合もありますからね、結局一週間ぐらいかけて全部の心霊スポットを回り終えたそうですよ。

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話はこれで終わりで、それきりSさん達の周りでおかしなことは起きていないんですが、問題のB君は結局、今に至るまで、行方がわからないそうなんです。

 

皆さんも心霊スポットに足を踏み入れるときには、最低限の礼儀と心構えでもって、失礼にあたらないように注意したほうがいいと思いますね。

普段は大人しい霊達も、怒ったら何をするかわかりませんから。

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心霊スポットを探してた時にお寺の情報も見つけてたんだったら、そちらのお坊さんが霊能力のある方なのかも調ておいたほうが良かったかも…
それでもCさんは頑張ってくれましたね。ありがたいことです。
でもB君ひとり可哀そう…

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@バジルくん
ギャーッ
ガクガク(((;゚Д゚)))ブルブル

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@バジルくん 様
初動を間違っちゃいましたね。
そのせいでB君が。。。

ところでバジルくん、あなたの後ろにさっきから何か見

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えっ!?何でだろう?
コメントをアップすると、途中で切れちゃう。(・・;)
これって。。。(( ;゚Д゚))ブルブル

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