水底を歩く〈『話』シリーズ・外伝〉

長編13
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水底を歩く〈『話』シリーズ・外伝〉

彼は父親の影響もあり、幼いときから野球をしている。小学校入学と同時に少年野球クラブに入部し、一年中真っ黒に日焼けしていた。

その野球クラブでは、毎年夏休みに合宿が行われていた。野球、勉強、遊びをバランスよく配置した合宿で、野球と遊びに興じてばかりの子供たちの親からも評判のよい行事だった。

彼が小学六年生の時のこと。

夏合宿の開催場所は毎年異なり、その年は彼の住む町から二時間近くバスに揺られた田舎町にある、古びた合宿所だった。その町は野球クラブのコーチの地元で、施設内の草刈りをすることを条件に、宿泊費を無料にしてもらったのだという。

早朝に出発し、着いたその日は総出で草刈りと清掃。二日目と三日目は野球の練習と勉強、四日目は近所の小山へハイキングをして飯盒炊飯、五日目にもう一度施設内の清掃をして帰宅、という日程だった。

友達と一緒に行えば、草取りも練習も、勉強だってそこまで苦ではなかったが、この日程で楽しみなのはやはり四日目だった。

ハイキングの日。準備万端の彼らは、案内をしてくれるコーチを先頭に意気揚々と出発した。

登山道は、麓から川に沿って続いていた。

川は時折蛇行しながら、浅瀬と深みを繰り返していた。浅瀬では強い日差しを受けた水がサラサラと賑やかな音を立て、逆に深みでは水面の木の葉すら動かずシンと静まり返っていた。

「この川にはなぁ、昔から蛇の神様がいるって言い伝えがあるんだ。ふざけてると、一飲みにされちまうぞ」

川で泳ぎたい! と騒ぐ子供たちを、コーチはそう脅かして笑った。

山の中腹まで登ったところで、彼らは一休みすることにした。登山道の端に設けられた広場で水分補給をし、飴などを口にする。

しかしそこは、元気のありあまる小学生。休憩もそこそこに周辺をうろちょろし始めた。

そのうちの一人が叫んだ。

「見て見て! 池がある!」

彼もその場へ向かうと、確かにそこには小さな池があった。

深い緑色に見える池は、道中で見た川の深み以上に静まり返り、生き物の気配は感じられなかった。

「あぁ、これはナミ池だよ」

コーチがやってきてそう言った。

「ナミ池?」

「ここには、ちょっと怖い伝説があるんだが、聞きたいか?」

「聞く聞く!」

彼も含めた子供達は色めき立ち、コーチの話に耳を傾けた。

昔、この山の麓の村にナミという名の女性がいた。

ナミは働き者で気立ての良いごくごく普通の女性で、夫と二人仲睦まじく暮らしていた。

ところが、二人の間にはいつまでたっても子供ができなかった。それはナミのせいだと、優しかった夫は次第に冷たく当たるようになり、とうとうナミを捨てて他の女と一緒になってしまった。

嘆き悲しんだナミは、一人この池に身を投げた。

このあたり一帯の池や川には、巨大な蛇神が住んでいた。蛇神はナミを哀れに思い、自らの姿と池を彼女に譲り渡した。

ナミは新たな蛇神として、この池に住むことになったのだという。

「全然怖くなーい!」

「いやいや、怖いのはここからだよ」

その池は昔から、麓の村の田畑を潤していた。

ところがナミが身を投げてからというもの、田畑に入れた水がすぐに腐り、稲や作物を枯らすようになった。直前の水路までは澄んだ水がサラサラと流れているのに、田畑に入れた途端、水は濁り悪臭を放つようになってしまうのだ。

村人たちはナミの祟りだと恐れ、神職を呼んでお祓いをし、祠を建ててナミを祀った。

しかし効果はなく祟りは続いたため、仕方なく池から村へ続く水路をすべて潰し、水を引くことをやめたのだった。

「この池はナミ池と呼ばれるようになり、やがて近づく村人はいなくなった。ホラ、あそこに祠があるだろ? 今でも夜になると、顔だけ女の大きな蛇が現れるって噂だ」

コーチが指差す先には確かに、背の高い夏草に埋もれるようにして、傾きかけた石の祠があるのが見えた。

「蛇女だ、こえー!」

「どうせメイシンやろ?」

「コーチィ、祟りって本当にあるの?」

「池の深さってどれくらい?」

てんで好き勝手に話す子供達をいなしながら、「まぁ、その伝説ももうすぐ幕を閉じるんだがな」とコーチは言った。

「もうすぐ、ここにダムが建設される予定なんだ。道沿いのあの川は、小さいけど昔からすぐ氾濫する川でな。大雨のたびにあたり一帯水に浸かっちまうんだよ。それを防ぐためと、田植えの時期に効率的に水が使えるよう、ダムを作って備えるんだと」

それを聞いて、彼は気になったことがあった。

「池がなくなってダムになったら、蛇女の祟りはどうなるのかな? ダムの水が流れたら、川や畑が腐るんじゃない?」

彼のその言葉を、コーチは「心配性だなぁ」と笑った。

「ダムを作る時には絶対お祓いをするし、あの祠だってちょっと移動させるだけだよ。大丈夫、ダムみたいに大きなところに移ったら、ナミ池の祟りだって薄まって消えちまうさ」

そう言って、コーチは座り込んで話を聞いていた子供達を立たせ、「頂上まであと少しだ!」と励ましてハイキングを再開した。

彼もみんなと同じように歩き始めたが、ふと、視線を感じて振り向いた。

そこには、静かな緑色の池があるばかりだった。しかし、よくよく目を凝らすと、池の中央にかすかな波紋が何重にも広がり、小さな波を立てている。

それはまるで、つい今しがた何かが水中に没したようにも思われた。

・・・・・

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ハイキングは滞りなく終わり、その後の飯盒炊飯も花火大会も、合宿はすべて順調に進んでいた。

最終日の朝。

彼は、誰かに呼ばれた気がして目が覚めた。

体を起こして室内を見回すが、五人いる同室者たちはみな健やかな寝息を立てている。それもそのはず、時計を見ればまだ五時前だった。

いつもなら寝直すところだが、その日はなんだか妙に目が冴えていた。彼は、他の子供達を起こさないよう気をつけながら、ゆっくりと部屋の外へ出る。なぜか迷うことなく、合宿所の玄関を飛び出した。

太陽はまだ昇っておらず、外は夜明け前の薄青い霧に包まれていた。

水の中にいるみたいだ。

彼がそう思った時、また誰かが彼の名前を呼んだ。今度は気のせいなどではない。

声に導かれるように、彼は昨日登った小山を登り始めた。

川沿いの道は一層霧が濃く立ち込め、彼はその霧を掻くようにして進んだ。足を交互に動かしてはいたが、まるで船に乗っているようにスムーズに山道を登っていった。

そしてあっという間に、昨日のナミ池に辿り着いた。

池のほとりには、女が一人立っている。来い来いと、女は彼に手招きをした。

近寄ってみて彼は驚いた。池のほとりと思ったが、女は実は水面に立っていたのだ。

ツヤツヤとした黒い髪に白い肌、赤い唇。女は彼よりもずっと年上のようだったが、テレビで見る誰よりも綺麗で、彼はドキドキした。

女は、彼のことを頭のてっぺんから足の先まで舐めるように見つめたが、不思議と嫌な気持ちはしなかった。

「お前、年はいくつ?」

ふいに女が口を開いた。彼がドギマギしながら「十一歳です」と答えると、少し驚いたように目を見開いた。

「とても背が高いのね」

「牛乳、毎日飲んでるから」

「昨日、ここに来たでしょう。わたし、池の中から見ていたのよ」

「そうなの?」

それでは、昨日の視線の主は彼女だったのか。彼は冷静にそう思ったが、女は少し怪訝そうな顔をした。

「お前、わたしが怖くないの?」

彼はすぐさま首を横に振ってそれを否定したが、自分でも不思議なことだと内心首を傾げた。水の上に立ち、明らかに人間とは思えない美貌のこの女のことが、なぜ怖いと思えないのか彼にもわからなかった。

しかし女は、彼の返事に嬉しそうにニコリと微笑んだ。

「お前はいい子だね。とても賢いし、かわいらしい。おいで、いいものを見せてあげるわ」

女が差し出した手を、彼は躊躇することなく取った。導かれるままに水の中に入っていく。女の手はスベスベとして柔らかく、池の水も同じくらい気持ちがよかった。

池の水が口元に達しようとした時はさすがに少し怯えたが、女が「怖がらないで。わたしと手をつないでいる限りは大丈夫だから」というのを信じ、彼はギュッと目を瞑ってそのまま先へ進んだ。

「ほら、目を開けてごらんなさい」

女の声に、彼はゆっくりと瞼を開け、そして息を飲んだ。

そこは、まるで万華鏡のように美しい水中の世界だった。

虹色の長いヒレをたなびかせて泳ぐ魚の群れ。

旋回して水中に小さな渦を作るネズミのような動物。

宝石のようにキラキラと光る空気の泡。

足元では、赤や黄色の石ころたちがコロコロと転がっていく。

ふと影がさしたかと思えば、彼の二倍はありそうな大きな鯉のような魚が、鱗をきらめかせてゆっくりと頭上を通り過ぎていった。

「すごい…!」

彼は水中で息ができている不思議も忘れ、その光景に見入っていた。

「ほら、今からが一番綺麗なんだよ。見ておいで」

女が言うと同時に、彼らの頭上にサァッと光が射した。外の世界で太陽が昇ったのだ。

差し込んだ金色の光を受け、水中のものたちはいっそうキラキラと輝きを放った。彼は、声も出せずその光景に見入っていた。

やがてようやく興奮がおさまった頃、女が尋ねた。

「どう? ここは気に入った?」

「うん、すごく!」

その答えに女は満足げに頷き、「わたしもお前が気に入った」と笑った。

「お前と、ここで暮らせたらよいのだけれど」

「俺が? ここで⁈」

驚いた彼に、女は口惜しそうに言った。

「そうしたいのだけれど、ここはもうすぐ人間どもに潰されてしまうの。人間が作った大きいだけの汚らしい住処になってしまうけれど、大丈夫。すぐにわたしがここのように美しく作り変えるから。そうして、わたしとずっと一緒にいましょう。そうすればお前だって、いつでも好きな時に、この美しい景色が見られるわ」

いやいやいや、そういうことじゃなくて。

彼は慌てた。どうしてだか彼には、女の意図が手に取るようにわかったのだ。

「ここに住んだら、俺はもう家族と会えないし大好きな野球もできなくなるってことでしょ? それは困るよ」

そう言うと、女はキョトンとした顔をした。

「お前、ここのこともわたしのことも、好きだと言ったじゃないの」

「…それはそうだけど」

池のことはともかく女のことを好きだと言った覚えはなかったが、彼が彼女の美しさに惹かれ、一目惚れに近い感覚を抱いているのは確かだった。

「なら、なぜためらう必要があるの。大体、人間など愚かで汚らわしい生き物じゃない。それらの世界に身を置いて、何になるというの」

「あなたにはそうかもしれないけど… 俺にとってはそうじゃないんだよ。好きな食べ物だって野球だってゲームだって、友達だっているし、それに、俺がいなくなったら家族が心配する」

女は不機嫌そうに眉間にしわを寄せる。美しい顔は歪んでもなお美しいが、そのぶん迫力があった。

しかし彼は、不思議と怖いとは感じなかった。

水中ではとても暮らせないが、確かにこの女の人とは一緒にいたい。

そこで、彼は名案を思いついた。

「そうだ、あなたが俺と一緒に来たらいいんじゃない? それで時々、こんな風に水の中を見せてよ」

「わたしが? わたしに、水の外で暮らせと?」

「蛇なら、大丈夫でしょ。水がなくても」

女の眉間のシワが解け、驚いた表情になる。

「だってあなた、ナミさんでしょ?」

しかし彼がそう言った途端に、女は眦を吊り上げた。

「その名は好かぬ。呼ぶな」

「…ごめんなさい」

「しかし…」

女は今度は思案げな顔になり、ふむと細い指をあごに添える。

「考えたこともなかったけれど、いい案かもしれない。それに、お前のその賢さも気に入ったわ。手放したくない。人間の寿命など知れたものなのだし、お前が死ねば、共にここに帰ってくればよいのだわ」

独り言のようにそう呟いて、女は彼に向き直りニコリと笑った。

「いいわ。お前が死ぬまで我が身をお前に預けましょう。常に共にいて、お前を守り、願いがあれば叶えてあげる。そして、お前が死ねば、その身はわたしがもらう。いいわね」

「…俺のこと、食うってこと?」

彼がおずおずと尋ねると、女はおかしそうに笑った。

「食ったりはしないわ。死んだ後のお前の魂を、わたしがもらうということ。死んだ後なら、もう構わないでしょう?」

「うん。食われて死ぬんじゃないなら、いいや」

彼も女に笑顔を見せた。

死んだ後と言われてもさっぱりピンとこないが、要はこの先の人生はずっと彼女と一緒ということなのだろう。それなら全然構わないや、と彼は思った。

そして、先ほどの女の言葉を思い出した。この池が潰されるという話。それは、昨日コーチが話していたダムのことだろうか。

「この池、なくなっちゃうの?」

「そうね」

「住むところがなくなって、かわいそうだね」

彼がそう言うと、女は少しだけ表情に影を落として、池の中をぐるりと見渡す。

「まぁ、いいわ。そのうち戻るのだから」

そう、名残惜しさを隠すように言った。

「俺が来なかったら、新しいダムに行くつもりだったの?」

「仕方がないもの。腹いせに、麓の田畑を再び腐らせてやろうと思っていたけれど、まぁ、それはしばらくお預けでもいいわ」

事も無げに言う女に、彼は自分の提案が人々を救ったのだと誇らしく、同時に、こんな恐ろしい女とこれからずっと一緒だなんて大丈夫だろうかと、一抹の不安が胸をよぎった。

しかしそんな胸のざわめきも、彼に向き直ってニコリと微笑んだ女に霧散する。

「何だか、顔が疲れたわ。お前と話をして、わたしはずいぶん顔を動かしたのね。久しぶりだわ」

女はそう言って自分の頬を撫でている。

立てば何とか、座れば牡丹… 続きはなんだっただろうか。綺麗な女の人を表す言葉。彼はドキドキしながら、頭の中の引き出しを高速で開け閉めしてみた。

「さて。そうと決まれば、お前の住む世界に戻りましょう」

言うが早いか、女は足元からスルスルとほどけていった。彼が驚いていると、ほどけて糸のようになった女の体は、毛糸を編むように別の体へ変じていく。

あっという間に女の首から下は、黒曜石のように艶やかな蛇の体に変わっていた。

蛇の体に美女の顔。いかにも妖怪といった異様な姿で、女は赤い唇をニヤリと引き上げた。そして蛇そのものの動きで、まるでマフラーのように彼の首に巻きつく。重さも苦しさも感じなかったが、フンワリと何かがまとわりつくような感触が少しこそばゆかった。

「お前の世界では、こちらの姿の方が楽だわ。自分で動かずともよいし」

「でも、ちょっと怖いんだけど」

「それでいいのよ。その方が、変な虫が寄らぬもの」

女は唇を彼の耳元に寄せて、低い声で囁いた。

「お前はもう、わたしのものなのだからね。他の女に目移りするようなことがあってごらん。お前も相手の女も、恐ろしい目にあうと覚えておきなさい」

生温かい吐息が耳をくすぐり、彼は背筋をゾワリと震わせた。

女の声音と話の内容に恐怖を感じたのももちろんだが、へその下あたりがジワリと熱くなり、その熱が全身を駆け巡ったのだった。

その奇妙な感覚を振り払いたくて、彼は口を開いた。

「あの、あなたのこと、なんて呼べばいい? えっと、前の名前がイヤならさ」

「好きに呼べばいいわ。もうわたしは、お前のものになったのだから」

好きに呼べと言われても、女の人の名前なんてわからない。クラスメートの名前を使うのはなんだか悪いし、女を怒らせるような気がした。

頭を悩ませていると、ふと、頭の中の引き出しがカタリと音を立てて開いた。

立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花

「…じゃあ、ユリ、って呼んでいい?」

女は、ふぅん、と吟味するように小さく息を吐いて頷くと、

「気に入ったわ。やはりお前は、頭がよい」

彼の胸の内を見透かしたようにそう言った。

・・・・・

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その夏、三日間行方不明だった少年が山中の池で無事保護されたというニュースが、テレビや新聞を賑わせた。

猛暑の中を三日間行方知れずだったにも関わらず、少年に怪我や憔悴した様子が見られなかったこと、何度も捜索したはずの池のほとりにボーッと立っていたところを発見されたことなどから、誘拐か、いや現代の神隠しだなどと騒がれた。少年が行方不明になっていた間のことを「何も覚えていない」とした事も、それに拍車をかけた。

しかし、結局事件性はないと判断され、騒ぎも一時期のことだけで、秋が深まる頃にはその話題は世間から忘れられていった。

少年が見つかった池は危険視され、ダムの建設工事が早まったことで、翌年のはじめには水の底に没してしまった。

・・・・・

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「どうしたわけ? 急にそんな話して」

彼が話し終わるのを待って、向かいに座る友人が尋ねた。

顔が赤くなっているのは、目の前に転がる缶チューハイを飲み干してご機嫌だからだ。

「んー。こないだ地元に帰った時、なんとなく思い出してな。俺が子供の時、そんな事件があったなぁ、って。そいつは蛇女に攫われてただなんて、そんな噂が流れたんだよ」

「そいつのこと、知ってんの?」

「いやぁ… 学校、違ったからなぁ。ほんと、噂だけだよ。ウワサだけ」

そう言いながら、彼は猪口を煽った。

友人が缶チューハイ一本なのに対し、彼の前には半分以上減った五合瓶がある。にも関わらず、顔色はまったく変わっていない。いわゆる「うわばみ」だった。

「そいつさぁ」

友人が、長い前髪をかき上げた。隠れていた左目が露わになり、彼をまっすぐ見つめる。

「蛇女に好かれたっていう、そいつ。今まで彼女の一人も作れなかったのかな。かわいそうに」

どこか挑発的にそう言った。

右耳の上の方で、か細く空気の漏れるような音がし始める。こめかみの辺りにチロチロと冷たい何かが触れる。

彼の脳裏に、鎌首をもたげて威嚇をする蛇の姿が浮かんだ。

内心、ため息をつきながら言った。

「案外そうでもねぇんじゃねぇの? 蛇女っていうけどさ、実際はスッゲェそそる女かもしんねぇじゃん。他に何もいらないくらい、死んでも一緒にいたいと思うくらい」

途端に、こめかみの辺りにあった異変はピタリと止んだ。

友人は目を細め、何が楽しいのかニコニコと微笑んでいる。

「百点満点の答えだね」

「なんのことだ?」

とぼける彼の頬を、今度はあたたかく柔らかい何かが、優しく触れていった。

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