長編8
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家族の存在

近所の空き地で拾った日記と写真の事をそのままここに書きます。

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今日は8月9日。もう時間がない...

俺の名前は浜野ユウト22歳○○大学3年 写真部のサークルに入っている。平成7年生まれ○○県○○市○○町○○番地 

父・母・2人兄弟の長男で4人家族の実家暮らし・・だと思う。

 

弟は18歳の〇〇高校3年。

父は誰もが知っている大手企業〇〇に勤めてる、

母は週2回のパート勤めだ。

2日前から起こっている出来事を日記に書いておく。

   

 

【8月7日】 

この日は普段より30分早く起きた、まだ7時だってのにこの暑さだ。

服を着替え、リビングのある1階へ降りると目の前の光景に目を疑った。

そこには台所に立ち、朝食をつくる父の姿があった。 

いままで一度たりとも父が料理してるのを見たことがなかったからだ。   

「お、、おはよう」  

父「おう、もう出来るから待ってろな」  

「あれ?お母さんは?」  

父「なんだお前、、まだ寝てんのか? 顔でも洗ってこいよ」

ん? 出掛けるって言ってたかな・・?

弟があくびをしながら眠たそうに起きてきた。

  

「なー!お母さんってどこか出かけたんだっけ?」  

弟「は? 何言ってんの? ってか親父~!飯まだ~?」

 

父「もう出来るから待ってろよ」

  

キッチンに立つ父の姿にまったく動揺もせず、日常的な会話をしている・・  

その時はどこかに出かけてて、きっと俺が忘れてるだけだと思っていた。

朝食がテーブルに並んだ、ご飯、みそ汁、のり、焼き魚、納豆だ。 

普通に旨そうだった・・

   

ただ父が作ったという違和感が半端なかった。

  

家族全員の箸が入った箸入れに手を伸ばすと、なにか違和感を感じた・・・ 

母の箸がない。  

さっきの疑問も重なり、もう一度聞いてみた。

  

「お母さんの箸ないけど、持っていったの?」

  

父と弟が不思議そうな顔でこっちを見ている。

弟「・・さっきもなんか言ってたけど、どうしたの?熱でもあんじゃねーの?」 

父は黙って食事をしている。  

自分だけが知らない事にだんだんと腹が立ってきた俺は、強い口調で弟に言った。

『どうもしてねーし、具合も悪くねーんだよ、聞いてんだから質問に答えろよ!』

 

ガタンッ!!!

父が急に立ち上がった   

父「ユウト、ちょっとこっちに来なさい」

  

あのなユウト、、、、 

         

俺「何言ってんだよ!寝言言ってんはそっちだろ!それに昨日もお母さん家に居ただろ!」

 

俺は父の意味不明な話にぶちギレて部屋に戻った。

興奮した気持ちを落ち着かせ、頭の整理しようと父が言った事を思い返した。

 

『お前らには寂しい思いをさせてしまって申し訳ないと・・  

母親がいない寂しさをなんとかしてやりたい気持ちはと今も昔も同じだ。』

  

とても整理なんか出来ない内容だ。まず何の話か分からない。今も?昔も?・・・・

父と弟がおかしくなった。

それが俺の答えだった。  

長くなったがこれが事の始まりだった。そして今夜で終わると思う。

 

【8月8日】 

頭が痛い・・ 一睡もできなかった。 

昨夜部屋に戻った後、母に電話しようとスマホを手に取り唖然とした。

母の名前が無い..

連絡先を検索しても登録されてなく、LINEも消えていた。

家のどこを探しても母に関する物が出てこなかったんだ。

  

ぼーっとしながらリビングへ降りると、昨日と同様に父がキッチンに立っていた。  

俺は言葉も交わさずリビングのソファーに腰を下ろし、テレビに反射する父の姿を見ていた。  

(俺の父だよな・・)

何故そう思ったかは分からないが、そう思ってしまった。

  

この時の俺は、父と弟がおかしいのか、それとも自分がおかしいのか分からなくなっていた。

  

一睡もしてないのもあって、思考も低下してと思う。

今日は午後からサークルのイベントがあったが体を動かす気力もなく、休むことにした。 

このイベントの為に金を貯めてずっと欲しかったカメラを買ったんだが..

今はそれどころじゃなかった。

父は自分で作った朝食を食べ終えて仕事へ行く準備をしている。、、、

父「じゃあ行ってくるから、飯食わないなら冷蔵庫に入れておけよ」 

と言い残し玄関から出て行った

。  

テーブルを目を向けると、数種類のおかずと、空の茶碗が置かれていた。

なんとなく時計を見ると・・8時10分

   

あれ? あいつ何やってんだ。

まだ起きてこない弟を起こしに部屋のドアを叩いた・・  

俺「おーいっ! 起きてんのか? 学校だろ?遅刻すんぞ!」

 

・・・・返事が無い。  

弟が寝坊するのはよくある事だ。

でも俺はその変わりない日常に若干安心していた。

   

・・ガチャ 

あれ? 開いてる。

弟が部屋にいる時はほとんど鍵をかけてるのだが・・

    

え?、、、、、なに、、、、これ。

目を疑った・・

弟の部屋の中にあるはずのない物があった。

それは父のゴルフ用具、父が読みそうな本、ホコリが被った無数のダンボール箱。

 

そこに置いてある物は全て父の私物だった。

そして部屋というよりは物置に近い。

弟がいない疑問より、他の部屋がどうなってるのか気になった俺は小走りで他の部屋を見に行った。

   

俺の部屋と父の部屋は何も変わっていない。  

母は父と一緒の部屋だ。  今となっては分からんが・・

   

とにかく弟の部屋が無くなっていたんだ。     

しばらく家の中を徘徊し、物色した。

    

そして家に弟はいなかった。

 

でもおかしい..

昨日の夜は部屋にいたし、俺はずっと起きてたからもし出掛けたら気付くはずだ。

俺は何か嫌な予感がしてもう一度部屋を見て回った。

弟の私物が一切見つからない。 

ふと置かれた食事が目に入る・・

よく見ると食事は俺の分しかなかった。

箸入れの中にあるのは俺と父の箸。 

弟の箸はなかった・・・   

 

頭がおかしくなりそうだった。

昨日から色々考えて、悩んで、食時もせずに24時間は経っていただろう。

  

もう何も考えたくない、、、

開き直ったせいもあり、俺はベットに横になると同時に寝てしまっていた。

  

どのくらい寝たんだろう・・  

12時間くらい寝てたと思う。

外は真っ暗になっていた。 

一階で物音が聞こえてきた。

恐らく父が帰ってきてるのだろう。

    

俺はこの時、もしかしたら夢だったんじゃないかと少しばかり期待をしていたんだ。

だがそんな期待は虚しく、そこには一人で晩酌をしている父の姿があった。

こんなに深いため息を吐いたのはいつ以来だろう・・  

全然期待はしてなかったのに、ショックは数倍にもなって返ってきた。

  

しばし父の背中を見ながらその場に立っていると、父がこっちを振り向いた..

と同時に・・・

「なんなんだよ!!お母さんも、弟もどこ行ったんだよっ!わけわかんねーよ!」

こんなに声をあげたのは生まれて初めてかもしれない。

 

怒り   悲しみ 苦痛 孤独

色々な感情が一気に爆発してしまった。

  

父はこっちを見つめしばし沈黙があった。

「出掛けるぞ、着替えて支度しろ」 父はそれだけ言うと自分の身支度を始めた。

「俺の質問に答えろよ、ってかどこ行くんだよ」   

父「昨日からお前おかしぞ、病院に行ってみてもらおう」 

「ふざけんな!病院なんか行くかよ」 

近くにあった花瓶をなぎ倒し、自分の部屋に入り鍵を閉めた。   

ベットに横になり天井を見ながら表情も変えず涙を流した。  

誰のせい?  

俺のせい?  

俺の思い出って何? 

過去って何・・・・?

 

【8月9日】

また寝てしまった、現実逃避するには寝るしかなった。  

日が昇っている。 朝5時、、この時はもう夢だったらという感情はなくなっていた。

何もしないまま時間だけが過ぎて行く・・

体を起こす気力もない。  

役所に行って家族の事を調べようとも思っていたが、今は真実が怖くて行動に移せなかった。

多分これ以上自分の敵を作りたくなかったんだと思う。

喉の渇きに限界がきてようやく体を起こしたのは8時過ぎの事。 

一階に降りて何か飲もうと冷蔵庫の扉を開けた・・

  

あれ、何もない・・  

 

仕方なく近くの販売機に買いに行こうと財布を手に玄関に向かった。

  

ん? 玄関にいつも置いてある父の私物がない・・・

  

面白くないのに笑う..

おかしくなった証拠かもしれない。

でも俺は笑いが止まらなくなっていた。

   

そして父の部屋に父の私物もない。

この家にあるものは俺の私物しか残って居なかった。

そしてもう一つ気付いた事がある、母が居なくなって2日しか経っていないのに

母の記憶が薄れてきていた。

 

  

誰も信じてくれないだろうけど、、これが今まで起こった出来事だ。

だから記憶がある間に起った事を書き残しておこうと思ったんだ。

今はもう家族の記憶が殆ど無くなってきてるし…

悩んでも仕方ないよな。

それに多分俺も居なくなるから...

なんって言えばいいか分からないけど、そんな気がするんだよ。

ってのも、家族?で撮った写真が一枚だけ残ってたんだ。

何故かその写真だけは4人で撮った記憶もあったんだ。

まだ俺が幼い頃・・

俺はヒマワリが好きでね、初めて家族で行った旅行先に花畑があってね、

ヒマワリが沢山咲いてるって聞いてたから楽しみにしてたんだ。

でもちょっと遅かったらしくて、残念な事に枯れちゃってたんだよね。

この時ちょっと泣きそうでね、父に男なのにこんな事で泣くなって怒られたんだよね。

それでこの写真はそこで撮ったんだ。

でも昨日見つけた時、その写真には俺と父しか写ってなかったんだ。

絶対4人で撮ったはずなんだ… 絶対!

確かではないけど・・

多分…

恐らく…

そんで今写真見たら父の姿は無くて、写ってるのは俺1人なんだよね…

写ってる俺の体なんだけどね、消えかかってるんだ..

おれって存在してなかったのかな・・

母も父も弟も、、どこ行っちゃったのかな。

おれもここから消えたら会えるのかな・・

あれだけ寝たのにまた眠くなってきた。

とにかく誰かがこの日記を見つけて俺達? 家族?が存在してた事を調べてほしい。

・・知ってほしい。

ごめん、そろそろ書けなくなりそう、

手の感覚がなくなってきてる。 

でもなんか今すごくきぶんがいい  

体もかるいし 

あれ・・なんだ?  見たことある景色がみえる

あ~、   げんかくってやつか、、、

なんかすごくきれいだな・・  

  

ことば  じゃ わからないか 

かめら いちども  つかわなかったな

いちどくらい  

つかっておこう

なにか

しょうこ に なるか、、

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日記はここで終わっていた。

日記と一緒に落ちていた写真には

満開に咲く向日葵に囲まれた4人の家族が写っていた。

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