長編11
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家の中の肝試し

もうそろそろ8月になる頃

TVの番組で自分の家の電気をすべて消して肝試しをする企画ものをやっていた

番組内では特に何もなく終わっていたが

案の定・・・長男の匠が「よぉし!!俺んちでもTVでやってたように全ての電気を消して肝試しをしようぜ!」と言い出した

「匠兄ちゃん・・・やめたほうがいいと思うよ」

「わたしも仁兄ちゃんの言う通り・・・やめようよ」

「おまえら、ビビってるんかい!!自分の家だぞ、どこの位置にどんなものかあるかはみんな知ってるじゃん

全ての部屋を巡回してリビングへ戻るというコースだぜ

もちろん懐中電灯だけ持ってな

一人だけ各部屋をまわるんだ

今夜0時にはじめようぜ!!」

「ええええ・・・嫌だよ・・・それでなくても我が家は怪奇現象がたまに起きてるじゃん

なにも肝試しをすることないと思うよ、匠兄ちゃん」と楓が文句を言った

「楓!!ビビってるんだろ?こんな小さな家だぞ、ものの30分で終わるじゃん

30分の肝試しだぞ

そりゃまぁ・・・確かに怪奇現象はたまに起きてるけどな・・・

それを吹き飛ばすために今夜決行だ!!」

仁や楓はやりたくないという顔だった

子供たちのやり取りを聞いていて夏の夜の余興と思えば楽しいと思ったけれど

匠をのぞいてはあんまし気が進まないという顔だな

なにかあったのかな?

何気なしに楓に聞いてみた

「うん・・・あのね・・パパ・・・3日前だったかな

私、夜中にトイレに行こうと起きて階段を下りて行ったんだけどね

用をすまして・・・

ほら・・・パパの書斎室あるでしょ、その部屋からね人の話し声が聞こえてきたの

てっきりパパがまだ書斎室にいると思ってた

でも・・・リビングへ行ったらパパがいるじゃん

私、びっくりしたよ」

「あぁ・・・そういうことか・・・葵がリビングへ入ってきたときにパパの顔を見てびっくりしてたもんね・・・そういうことだったか」

「うん・・・」

なるほどね

「俺もさぁ・・・1週間前だったかな・・・楓と同じでトイレへ用を出しに行くときに書斎室の横を通ったときに女の人の声が聞こえてきたんだよ

てっきりママとパパがしゃべってるのかと思ってたけど・・・

リビングに行ったらママとパパがいるじゃん

え!?と思ったよ

あれ・・・たしか午前1時頃だったかな

パパがママの手料理を食べながら楽しそうに話してたよね」

たしかに

残業で遅くなったんだ

S子が私の帰りを待っててくれた

うむ・・・書斎室かぁ・・・まぁ何かが出てきてもおかしくはない

資料や写真など・・・置いてあるからな

「だから何だよ?それでお前らビビってるんかい」

「いや・・・匠兄ちゃん・・・マジでやめたほうがいいよ

書斎室の怪奇現象の原因がわからない以上は肝試しはしないほうがいいと思う」

と仁は匠にどうにかして肝試しをやめるように説得していた

「私も仁兄ちゃんの言うとおりだと思う」と楓も仁と同じ意見だ

「あのさ・・・だからこそ肝試しじゃないかよ

出るってはっきりわかれば肝試しの意味があるんだよ

俺が一番で肝試しするからさ

そう心配するなよな」

仁はともかくとして楓が反対している以上なにかしらの気配というか霊感が働いてるとしか思えない

「楓、何か感じるの?」と私は聞いた

「うん・・書斎室からあんまし良くない霊気を感じるんだよ、パパ

一度お祓いをしたほうがいいと思う」

楓の言い分は100%信用している

私は霊感が0なのでいつもとおり書斎室で資料の整理などをしている

何も感じないのだ

しかし・・・一体原因は何だろう?

「よぉし!パパが承認するよ

まずは匠、おまえが一番で各部屋を回ればいいぞ」

「おう!!さすがパパだぜ、話がわかってる

俺が一番で行くからさ」

「えええ・・・パパ、大丈夫なの?・・・」

「楓・・・あんまし大丈夫じゃないさ、でも匠のあのノリノリだと強引に肝試しをするさ

まぁ・・・なんとかなるよ」と楓の耳元で小声で話をした

匠の性格はオヤジゆずりだ

まず人の忠告など聞きゃしない

一度痛い目にあったほうがいいかも

オヤジは仏間にいて新聞を読んでいた

「おい、オヤジよ・・・あそこの書斎室ってさ・・・俺が子供のころってどんな部屋だったけ?」

「お!あそこは元はな・・・確か・・・物置のような感じだったはずだ

使わなくなった電気製品や衣服などあそこへ置いていたはずだ

なんでそんなことを聞くんだよ?」とオヤジは聞いてきた

今さっきの匠たちのやりとりをオヤジに話をした

「肝試し?家の中でするのかよ・・・俺もよぉ・・・あんましお勧めはしないぞ

なにせ、我が家ははっきりといって化け物屋敷だぞ

楓ちゃんの言う通り原因がはっきりとわからない以上はやめたほうがいいぜ」と

オヤジにしては弱気な発言をしてきた

「匠はオヤジに似て人の言うことなんか聞く人間じゃないが

オヤジからも一語言ってくれ」

「おぅし!忠告だけはしてやるぜ」

オヤジはリビングへ向かった

「おい!匠!!なに、夜にこの家で肝試しをするんかい?

俺からも言っておくが「やめておけ」と言いたいぜ」

「じっちゃ!!やけに弱気じゃん

どうしたん?」

「いや・・・あのな・・怪奇現象の原因がわからない以上はやめておいたほうがいいぞ

・・・俺が言うってことは相当ヤバイとおもってくれてもいいぜ」

「じっちゃ!!・・・俺が一番で行くんだ!そんなもんは怖くはないさ

今日の夜中0時に肝試しをすることにしたよ」

「おいおい・・・(マジで俺の性格を受け継ぎやがってるぜ)

参ったな・・・・

何か起きても俺は知らんぞ!!」

おーーい、オヤジよ・・・役に立たんじゃないかよ

「えええーーー・・マジかよ・・・匠兄ちゃんが言い出したらだれも止めることができないじゃん」

と仁は少し涙顔になっていた

そこへS子と葵がやってきた

「おっちーー、何を騒いでいるんだぞ」

「ママ!!大変!!匠兄ちゃんが今夜家の中で肝ためしをするってさ」

「おっちーー!!!ダメなんだぞ!!ここは化け物屋敷なんだぞ!!」

「おい!S子、それは言いすぎだろ」と私は注意をした

「パパ、本当のことなんだぞ!私は反対なんだぞ」

「もう決めたよ、今夜決行!!、ママそう心配しなくてもいいさ」

「おっちーー!!ダメダメ!!書斎室のところに出るんだからさ」

「え!?・・・」と一同びっくり

「おっちーー、あのね・・・確かね、2週間前にパートから帰ってきて

家の洗濯物をしてたときになにか物音がしたんだぞ

てっきり葵ちゃんがなにかをいじくってるのかと思ってた

そしたらリビングから葵ちゃんが真っ青な顔をして私のところへ来たんだよ

「ママ!!となりの部屋から誰がいるんだぞ、怖いんだぞ」と言って私に抱きついてきたんだぞ」

「うん・・・あたち・・・たしかに人の声を聞いたんだぞ

家の中はあたちとママしかいないはず

ママは洗濯物をしていたから怖くてママのところへ行ったんだぞ」

家の者ほぼ全員が書斎室での怪奇現象にあってるのか

「まぁまぁ・・・だからこそ肝試しじゃん」と平気な顔で匠は言ってのけた

ダメだ・・・こりゃオヤジ以上に頑固者だ

「おい・・F・・・匠・・・まさに俺の性格じゃん・・・もうどうしようもないぞ

肝試しをさせてやれ」と私の耳元で囁いた

「オヤジ・・・よ・・・」

仁と楓のがっくりとした顔

葵も・・・乗り気ではない顔をしてた

まぁ・・・家の中なら何か起きてもすぐに対処できるだろう

夏休みの思い出の一つにいいかも・・・(これが後々・・・私ももっと強く言っておけばよかった)

夕食時、まさにお通夜状態だった

匠以外はだれもしゃべらずモクモクと食事をしていた

あの能天気S子でさえしゃべらなかった

「あんたたち・・・どうしたの?誰もしゃべらないじゃないの・・・

兄妹喧嘩でもしたのかい?」とおふくろが言い放った

「ばっちゃ・・・今夜に家の中で肝試しをするんだよ」

「家の中で肝試し?なにそれ?」

匠が詳細にお袋に話をした

「そっかい・・・まぁ・・・あんまし夜更かししてはダメだよ」

「平気だよ!!」と匠はあっけらかんに返事をした

いつもなら食事をした後に兄妹たちでリビングは大騒ぎになるのだが今日に限って静かだ

完全に肝試しをしたくない雰囲気だ

特に葵は完全にビビっていた

「匠・・・葵と楓は2人一緒でいいだろ?」と私は匠に提案をした

「パパ、それじゃ肝試しの意味がないよ

葵も一人でまわるんだよ」

「えええ・・・怖いんだぞ!!一人は怖いんだぞ!!!匠兄ちゃん!!楓姉ちゃんと一緒にいたいんだぞ」

「ダメーーー!!」

葵が泣き出した

「仕方ないな・・・妹たちは2人で一緒だ、それでいいだろ、葵?」

「うん・・・」

「うわぁ!!じゃあ俺は一人で回るのかよ」と仁はがっくりとなった

「当たり前だろ!男だろ!」と匠は仁に言い放った

なんか異様な雰囲気が漂っていた

匠だけがなぜかウキウキした顔になっていた

仁と楓と葵はソファでおとなしくTVを見ていた

「オヤジ・・・今夜は徹夜だぞ、いいな」と私はオヤジに言った

「もちろん・・・わかってるぜ」

いよいよ差し迫ってきた

午後11時

いつもなら各部屋に行くのだがだれも部屋に行かない

まぁ、リビングには私やS子、オヤジ、おふくろがいるからな

ここにいたほうが安心なんだろう

おふくろとS子は台所で片づけをし始めた

今日はさすがに葵は匠のところへ近寄らない

いつもなら遊んでほしくて匠のそばをウロチョロするのだが

「もうそろそろだな・・・ここのリビングも電気を消すよ」

「おい・・・それはやりすぎだろ、匠」と私は文句を言った

「ここだけ明かりがついてると雰囲気がなくなるんだよ、パパ」

おいおい・・・まっ暗だとなにもできやしない

「さぁて・・後5分で肝試しの時間だ」

と匠が言った瞬間にリビングの電気が消えた

全員びっくり

「じっちゃ!!まだ消すの早いよ」

「おい!匠、俺じゃないぞ」

「誰だよ、気が早いんだよな」

だれも電気を消してはいない

「電気を点けなきゃ」

匠が電気のスイッチの紐を引っ張った

「あれれ・・点かないよ・・・おかしいな

ブレーカーが落ちたのかな・・・俺が見てくるよ」と言いながら

懐中電灯を持って玄関にあるブレーカーのところへ行った

しばらくすると戻ってきた

「おかしいな・・・ブレーカーは落ちてないよ

なんで点かないんだよ」

一同、背筋に寒気が走った

台所で片づけをしていたおふくろとS子が文句を垂れてきた

「誰なの?電気を消したのは!!まだ後片付けしてる最中だよ、はやく電気を点けておくれ」

「ばっちゃ・・・ブレーカーを見てきたけどブレーカーは落ちてなかったよ

なぜか電気が点かないんだよ」

「え・・・」

「おっちーーー!!!」

「よぉし!!はじめるぜ」

「おい!やめておけ、匠!!」

「ちょうどいいじゃん、俺が各部屋を回ってくるさ、待っててくれ」

匠は懐中電灯を片手にリビングから出て行った

「おい・・・こりゃあかんぞ・・・もう1度紐をひっぱってみるか」とオヤジは紐を引っ張った

「ダメだな・・・どうするかな」

「仕方ないさ・・・スマホの明かりを使おう」

「だな・・F!早くスマホの明かりを点けろよ」

私はスマホの明かりをつけた

じんわりと周囲が明るくなった

「パパ・・・・」と小さな声がした

一同声をする方向を向いた

愕然となった

そこに立っていたのは匠だった

匠は今さっき出て行ったばかりだ

私はよく見えるようにスマホの明かりを向けた

「ぎゃあーーーー」

「ウェーーーーーー」

「兄ちゃん!!!!!」

一同パニックになった

そこに立っていたのは顔から血を出していた匠だった

もう完全にパニックになった

私はスマホを投げ捨ててしまった

リビングから全員出て玄関へ殺到した

一刻も早く外へ出たかった

鍵を開けて一斉に外へ飛び出した

夜中にパジャマの格好で道端にいる家族などほかの人が見たらびっくりするだろう

「なに!!!今の!!!匠兄ちゃんがいたよ、それも血が出てたし」

「おいおい・・・」

「もう嫌だ!!!匠兄ちゃんが肝試しをしようというから罰が当たったんだよ」と仁は泣き出した

「あたち・・・家に戻るのが怖いんだぞ」と葵も泣き出した

しばらく家の様子を見ていた

すると、玄関の扉が開いた

人影が見えた

「パパたち!!!どうしたんだよ、なんで逃げるんだよ」と声がした

一同じっくりと人影を見た

その人影は顔をゆっくりと上に向けた

街灯の明かりでその人影が見えた

もう誰もその場から動けなくなった

完全に「蛇に睨まれた蛙」状態だった

そこには顔から血を出した匠が立っていたのだ

それもうっすらと笑っていた

「パパたち、ひどいじゃないか・・・俺、一人置いて逃げるとは・・・」とうす気味悪い声を出しながら笑ってた

もう完全に一同・・・心臓が止まりそうになっていた

すると、玄関の扉が開いて人影が勢いよく飛び出してきた

「あれれ!!なんで外にいるんだよ、どうしたのさ」と元気な声がした

一同あっと我に返った

そこには匠が立っていた

もちろん顔から血を出してはいなかった

「ええええ!!!兄ちゃん・・・」

「匠・・・」

「匠兄ちゃんだよね?」と楓が質問をした

「おいおい、楓、ひどいな、俺だよ、匠だよ」

「兄ちゃんだ!!!」

一同ホッと一息をした

体から完全に気が抜けてしまった

S子とおふくろはヘナヘナと座り込んでしまった

葵は完全に大泣きをし始めた

近所迷惑になりそうだ

「もうそろそろ家に戻ろう」と私はそう言った

「だよな・・・戻ろう」

リビングへ戻った

リビングの明かりは元へ戻っていた

テーブルの下に私のスマホが落ちていた

夢ではない証拠だ

画面が割れていないか確かめてみた

割れていなかった

おふくろとS子は完全に気が抜けてソファで横になっていた

匠は唖然としていた

何か起きたのか皆目わかっていないようだ

「どうしたのさ・・・みんな・・・それよりも各部屋をまわってリビングへ戻ったら誰もいないじゃん・・・それも明かりを点けっぱなししてさ

外から声がしたから玄関を開けてみたらパパたちが立ったまま動かないし

俺が声を掛けたらみんな我に返ったような顔をしてるし・・・」

と匠は納得のいかない顔をしていた

私はさっきの出来事を巧みに話をした

「ええ・・・うそだろ・・・俺が立ってたって・・それも顔から血を流しでた?・・・

別に顔をぶつけた覚えはないけどさ・・・」

匠は話を聞いてびっくりはしていた

「そっかぁ・・・なんか俺、余計な事を言ったからこういう現象が起きたんだね

じっちゃや楓の忠告を素直に聞いてれば良かった・・・みんな、ごめん」と

匠は頭を下げた

もちろん・・全員・・・リビングで寝た

後日・・・匠が・・・野球の練習でもろに顔にボールがあたり顔から血を出して救急車で運ばれた

幸いにも軽症だったけど

急いで会社から病院へ行った

おでこのまわりに包帯が巻いてあった

もろにおでこにボールが当たったようだ

少し顔が青ざめていた

それを見た瞬間私はゾッとした

あの肝ためしの夜の血を流した匠とよく似ていたのだ

まさか・・・・現実的になるとは・・・

家に帰ってお見舞いに行った、お袋やオヤジ・仁・楓・葵も匠の顔を見て

ゾッとしたと夕食時の話題になった

やはり・・・家の中で肝試しなどするもんじゃないな

Concrete
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