短編2
  • 表示切替
  • 使い方

嫉妬

彼はその小さな家で王子だった。

彼が泣けばすぐに母親が慰めにき、彼が欲しいと言ったオモチャは次の日の夜に父親が買って来た。

彼は家の中で自分の自由にならない物がない事を知っていた。

しかし、そんな彼の小さな王国にもある日を境に変化が訪れた。

それは、彼が幼稚園の帰り道に母親に連れられて行った病院から始まった。

「おめでたですね。妊娠3ヶ月です。」

医者は母親にそう告げた。

母親は大喜びし、側に立っていた看護婦は彼に向かってこう言った。

「あなたはお兄ちゃんになるのよ。弟のためにもしっかりしなきゃね。」

弟? お兄ちゃん? この人は何を言ってるんだろう?彼にはまだあまり理解出来ていなかった。

7ヶ月が過ぎ、彼の家に新しい命がやって来た。 相変わらず彼は王子の筈なのに、何かがおかしかった。 母親は彼が喉の渇きを訴えても弟のおしめを代える事を優先し、父親は前の日彼が欲しいと言ったゲームカセットのかわりに真新しいほ乳瓶を買って来た。

そしてある日、破綻はやって来た。 夜、彼は某戦隊モノの剣を振り回して遊んでいた。 彼は夢中になり過ぎ、母親がソファーで弟にお乳をやっている所で跳び回った。「危ないから止めなさい。」 彼は耳に入っておらず、敵と戦い続けた。「危ないから止めなさい!」 まだまだ敵は湧いてくる。 「危ないから止めなさいって言ってるでしょっ!!」彼はハッして、鬼の形相の母親を認めた。 彼は何故母親が自分にこんな顔をするのか理解出来ず、泣き出した。 母親は彼を慰めに来なかった。

彼はその日、ベッドの中で考えた。 何故僕が…。 あの弟のせいだ。 あの弟が来てから全ておかしくなった。 あいつさえいなければ…。そうだ!!

彼は思い付き、真夜中に親が寝ている寝室へ忍び込んだ。 そしてばれないように母親のパジャマの下、おっぱいに致死性の、しかしゆっくりと効く毒を塗った。(毒をどうやって手に入れたかはご想像にお任せします笑)こうすれば、明日母親が弟にお乳をあげた時に弟を殺せる! 彼は自分の賢さに満足してベッドに戻り、ぐっすりと寝た。

翌朝、彼は母親の悲鳴で目が覚めた。 彼は自分の計画が成功した事を悟り、ゆっくりとベッドを抜け出した。

そして、両親の寝室に行き愕然とした。

彼の父親が泡を吹いて死んでいた。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

Concrete
コメント怖い
00
  • コメント
  • 作者の作品
  • タグ