短編2
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あぁ…

「何故だ??」

宙に浮かんでいる自分.

「ここは何処だ??」

辺りを見回す.

数回建てのビルより高い.

このまま何処へでも

行けそうな気さえする.

ふと気付く.

街の真ん中.

見覚えのある風景.

それより前の事を

思い出せない.

何やら騒がしい.

「あれは…」

青信号で

人の行き交う横断歩道.

その一部分に

人だかり.

その真ん中に

頭から血を流し、

倒れている自分.

その真上に浮かぶ俺.

道端には

横転している軽車輌.

「あぁ…そうか.」

思い出せた.

頭が痛い.

朝、いつもどおり俺は

会社に向かう途中だった.

今日に限って遅刻した.

時計を何度も見ながら.

小走りで…

焦っていたんだろう…

「なるほど…」

ようやく

理解出来た気がする.

信じ難いが…

死に直面した

と言う事実.

遠くから近付いて来る

サイレンの音.

どの道

助からないだろう自分の体を

救急車に乗せ.

またさっきの

うるさいサイレンを

鳴らしながら.

病院へ.

事故現場は

警察官やら何やらで

あふれている.

横転している

軽車輌の運転手を

助け出しているみたいだ.

それよりさっきから

誰か自分を呼んでいる.

振り向く先に…

お母さん…

お父さん…

十数年前.

まだ自分が

中学生くらいの時.

その日の

夜中に一本の電話.

母が

「お父さんかも」と.

笑顔で言う.

その日は仕事で

遅くなるって聞いていた.

受話器を取る母.

何か喋りあっている

母の顔から笑顔が消えた.

警察からだったらしい.

お父さん…

事故にあったって…

すぐ母と病院へ向かった.

―…

病院に着き

担当医と話す母.

戻って来た

母の口からは

お父さん死んだって…

母はその一言だけ言うと

その場で泣き崩れた.

それから程なく.

母は

父の後を追う様に他界.

大好きだった

両親を無くした自分.

布団の中で

夢であって欲しいと

願った毎日.

遺影の前で

「二人の分も生きるね.」と誓いを込めた毎日.

だがその誓いも

今日で絶たれた.

やっと…

二人の元に行けるんだね.

近付く俺に

母と父は…

貴方は生きなさい

お父さんと

お母さんの分も

生きてくれるんだろ??

あの時と何一つ

変わらない笑顔だ…

そうだよね.

「二人の分も

生きていくんだ」

自分にそう言い聞かせ

父と母に笑顔を返した.

いきなり

気が遠くなって行く.

お母さん…

お父さん…

「待って!!」

―…

…ここは…

気がついたら

病院のベッドの上だった.

何で…

「あぁ…そうか.」

お母さんとお父さんが

助けてくれたんだ….

生きているという

実感が湧いた.

ありがとう

その言葉を胸に

今日、また新たに

母と父に

感謝の気持ちを込めて

二人の分も生きて行く.

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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