短編2
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生まれた頃の記憶

夢かもしれませんが、私には生まれた頃の記憶があります。

病院のベットに寝ていて青い空を見ていました。

部屋には誰もおらず、音がありません。

唐突に窓の外からゆっくりと、火に包まれた落武者のような男の首が入ってきました。不思議と恐怖は感じません。

何かをブツブツ言いながら、天井くらいの高さで大きく円を描いてグルグルと回ります。

どのくらい時間がたったか分かりませんが、私の真上で止まり、ゆっくりと私の胸のなかに入っていきました。怒ったような顔だったとおもいます。

その後すぐ呼吸が苦しくなって記憶が途切れます。

この頃の様子を母に尋ねると、生後2日目に呼吸が出来なくなって生死の境をさ迷ったと聞かされました。

これから時間が経ち、私は中学生になりました。

ある時、理由もなく学校に行けなくなりました。

うつ病と診断され、どんな治療をしても良くなりませんでした。

藁をも掴む思いで、母親が拝み屋に相談しに行きました。私には内緒でした。

そうしたら女の霊と先祖に恨みがある落武者の霊が、私の邪魔をしているのだそうです。

それで、払ってもらった数日後に、私の症状が急激に回復し、学校に行けるようになりました。

それから私は大人になり、ふとラジオで聞いた家系図の話が気になり、自分の家系図を作ってみることにしました。

それで調査していたら、大正時代に20歳で線路へ飛び込み自殺をした女性と、戦国時代のある殿様の家臣で、合戦のときに人を殺めた人がいました。

女性の方については珍しい名前で、なぜか家のお墓にその人の名前だけありません。私生児だったらしく、出生届が出されたのは14歳の時でした。

母にこのことを話したら、拝み屋に払ってもらった時にその女性の名前を聞いたらしいのですが、先祖でそんな名前の人は知らなかったので、いまいち信用していませんでしたが、この戸籍に書かれていた女性の名前と同じだそうです。

それを聞いてゾッとしました。

やはりこのような因縁は、確かに存在するのです。

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