短編1
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添い寝

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去年の夏のお話。

ごく普通のワンルーム、いつもの部屋、いつものベッド、いつもの向き。

玄関を背にして寝ている私はふと金縛りにあったかのように動けなくなった。

エアコンの音だけだった室内に、玄関の扉を開くキィ、という音が響く。

心臓が跳ね上がる。

玄関から入ってきたそれの気配は、確かに部屋へと侵入してくる。

私は部屋の鍵を持っている唯一の人物である彼氏が来たのだと思い、自分の背中側に感じる気配に、彼氏の名を問いかけた。

返事はない。

やがて背中側に添い寝するように気配が動く。

必死に手を伸ばし、触れたその手は男の手ではない、細く華奢な手だった。

彼氏じゃない、そう気付いた瞬間耳元で、高めの掠れた声でこう囁かれた。

「一緒に寝よう…?」

その瞬間、体が動くようになった。

跳ね起きた私の心臓はまだなおバクバクと脈打っている。

不安を覚えた私は玄関まで行き、鍵がちゃんと掛かっているか確認して、ようやく胸を撫で下ろした。

疲れていた私が見た夢だったのか、幽霊だったのかは今でもわからない。

Concrete
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